表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/35

暗闇に囚われて

 両親が帰ってしまうと、僕には屋敷の奥の部屋が与えられた。三階の突き当たり西側の部屋だった。つまり、外には出られない。

部屋の中にベッドルームと小さなリビング、バスルーム。子供時代に与えられていた部屋より大きかったが、庭にすら出られない。

メイドが交代で二人。通いで早朝から夕方までの一人と、泊まり込みで夕方から夜までの一人。要は監視だ。


 メイドたちはまだ若く、手際の悪さもあって自分の仕事で精一杯だった。泊まり込みのメイドの方は日中は学校に行っているらしい。メイドルームは隣にあった。壁にメイドを呼ぶ為に、呼び鈴が鳴らせる紐が付いていた。鳴らした事はないけれど。


 数日経った夜、ジェームズ・サファードが現れた。

「君と仲良くするつもりはないから。私たちの結婚後に君が発情期(ヒート)になったら来る。それまでゆっくりしてくれ」

「君たちの邪魔をするつもりはないんだ。僕を放り出してくれてもいい」

「両家で話は決まっている。もう止められない。αの子供も必要だ」

「エリザベスはそれでいいの?」


「嫌に決まってるだろう!! 私だって嫌だ。元々言い出したのはマイヤー家なんだからな」

「あ……、ごめんなさい、何も知らなくて」

「呑気なものだな。Ωなんて、どうせ頭の中は夜の相手の事だけなんだろう!」


 ジェームズはそこまで言ってしまってから、自分の下品な物言いに腹を立てて、

「くそ! 全く!」

 と言って出ていった。


 いよいよ、一人きりだった。


 朝から晩まで誰とも話すこともない。昼のメイドも夜のメイドも若くて、恥ずかしいのか、Ωが嫌なのか何か声をかけても一言二言答えるだけだ。

 何もない、窓も開かない部屋でゆっくりするとか、無理だ。まるで監獄みたいだな。


 何もしていないと、クリストファーのことが頭から離れなくなる。なんで死んじゃったの? 迎えに来て……。


 新年のパーティで踊った歌をぽつりぽつり歌い出す。幸せは一瞬で通り過ぎる。幸せな時には無くすのを怖れて泣いているんじゃなく、幸せを満喫しよう。次があれば。


 身体がだるい。息をしているのも、外の光も全部が辛い。


 丸一日食事を取らなくなって、暗い部屋で寝たまま動けなくなった。知らないうちに涙が流れ出して、止まらない。死んじゃうかな? 死んだらクリストファーに会えるかな? もう、この世に居たくない……。


 二日目に、医者が呼ばれた。


「う〜ん、熱はない。目も開かないの? 全身だるい? あ〜そりゃ、そうだよね。ここに来てどれくらい?」

 最後の質問はメイドにしていた。ジュードは一言も答えなかった。医者の声さえうるさい。

「よし、わかった。彼のことは、ミスター・サファードに言えばいいの? ミスター・ジェームズに?」

 ジェームズが呼ばれて、ジュードの部屋に来た。権威に怯まない先生で、ジェームズに怒り出した。

「こんなところに閉じ込められたら、誰だって具合が悪くなるでしょう!? あなた方は、一人の人間を殺す気ですか? 気鬱で死んじゃう人だっているんですよ。自分がされたらどう思うか考えないんですか? Ωは第二性なだけで、奴隷じゃないんですからね! 現代にこんなことがあるなんて、人権蹂躙だ。許しがたい!」


 ジェームズはエリザベスとのことで、のこのこやって来たジュードに腹を立てていたので、ジュードの気持ちに思い至っていなかった。言われて、やっと気が付いたのだった。

「あ……、そう……ですよね。そう……、改善します。彼は治りますか?」


「ちゃんと人並みに対応したら、治るんじゃないですか? 元々、元気だったんでしょう? 彼はどういう立場なの?」

「……僕の……愛……恋人……」

 子供を産ませるだけの愛人とは、さすがに言えないようだった。父のミスター・サファードならきっとそう言ったかも。ジュードを買ったも同然なんだから。

「どんなに好きな恋人でも、もうちょっと自由にさせなさい。嫌われちゃうよ。あれ? そういえば、結婚式の招待状をいただいていたけど、彼ではないよね?確か」

 そこまで言われて、誤魔化しきれなくなったジェームズがやっと本当のことを言った。


 「いくら、ミスター・サファードでも、それは許しがたい。」

 

 


 

 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ