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小さい時の話

 物心ついた時には、もう何も期待していなかった。


 母はジュードを避けていた。兄達は最初わざと足をかけたり、背中を押したりしてきた。小さい頃は泣いたりもしたが、泣いた所で誰も助けてくれないと分かると、ただただ耐える様になった。殴っても蹴っても、虚な目で泣く事も殴り返す事もないジュードに、兄達は手を出すことは無くなった。もっと面白い事は沢山あるから。ただ、廊下ですれ違う時には、

「役立たず」

「能無し」

 と声をかけたが、そんな事、ジュードにはもうなんともなかった。


 学校に行く様になると、体面を気にして、髪や服装をそこそこ整えてもらえる様になった。ボサボサの頭は切り揃えられ、一通りの制服や学用品も与えられた。裕福な家の子として、車で送り迎えもされた。先生も他の生徒も、家で放置されているとは気付く事はなかった。


 ジュード自身は友達付き合いの中で、他の家の子が家族に愛されているのを見る事があった。兄達も母に愛されている。何故僕は嫌われているんだろう? 灰色の髪や目が家族の中で異質だからか?立派な能力を授けられなかったからか? 普通の家の子は、能力が授けられていなくても、家族に愛されないという事はない。生まれた家が悪かったのか? そんな全部が自分のせいでは無い。今自分でできる事はない。いつか、僕を愛してくれる人が現れたらいいな。今すぐ現れてくれたらいいのに。砂漠の中で水を求めるように、その願いは渇望と呼べる物になった。同時に、期待する事が怖かった。どんなに求めても、与えられたことなど無いのだから。

 

 幸い、ジュードは成績優秀だった。家がつまらないので、学校に行くことが好きだった。勉強も出来たので、友人も先生も褒めてくれる。勉強して資格を取って、早く自立したい。

 ジュニアハイスクールとハイスクールは寮制の学校に入った。六月からの長い夏休みも、年末年始のあるクリスマス休暇も留学生らと寮で過ごした。時折、友人が家や別荘に招いてくれる事があった。それはとても羨ましくて、楽しい時だった。どの家族もジュードを歓迎して、自分の子供と同じ様に接してくれた。厳密に言えば、もちろんそんな事はない。ジュードに対して、他所の子という隔たりも遠慮も存在した。それでも、家にいるよりずっと愛の存在を感じられた。引き換えて、自分のことを思うと辛くなるのだけれど。いつかそんな家庭を持ちたいと思うのだった。


  学校は単位を取れば飛び級もできて、早く卒業できる。一年早く卒業して、法律事務所で働きながら、大学に通って法務の資格を取ることに決まった。もうこれで、卒業しても家に帰らなくて済む。法律事務所でお給料も出るし、事務所の寮もある。資格を取るまでは大変かも知れないけど、誰にも何にも言われない未来が待ってる。


 学校の寮はジュニアハイスクールの間は四人部屋だった。ハイスクールは二人部屋。ジュードはローガンという一つ年上の同級生と一緒の部屋で二つあるうちの一つの寮、南寮の監督生をしていた。成績優秀な事ももちろんだが、休みにも寮にいるので寮監には大変重宝されていた。来週には卒業式という五月の終わりの晩、ローガンは寮監の先生の部屋のドアを叩いていた。

「Mr.コール、コール先生! お願いします!」

 唸る様な返事と共に、生物の先生で寮監のコール先生がパジャマ姿で頭にはトサカのような寝癖をつけてドアまで出てきた。

「ローガン君か。監督生はどうした?」

 生徒達に何かあれば、ジュードが来るはずだった。

「それが……ジュードの様子がおかしいんです」


 コール先生を連れたローガンがジュードのいる部屋に戻ると、部屋には重い花の様な香りが充満していた。


 ジュードに発情期(ヒート)が来ていた。


 

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