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待ってる……

 ジュードが落ち着いたので、クリストファーは結婚の許可を得に家に帰ることになった。


 よく晴れた朝だった。ホテルのレストランの、教会のように高い所まである窓から暖かい朝日が差していた。

 連れ立って朝ご飯を食べた。バターを塗ったトースト、オムレツ、サラダ、果物とミルクとコーヒーがジュード。

 トーストに目玉焼き、ベーコン、ソーセージ、ベイクドビーンズと焼いたトマトとマッシュルーム、紅茶がクリストファー。

 港町は色んな国の朝ご飯の用意がある。ジュードはクリストファーの筋肉は朝ご飯で作られるんじゃないかと言って笑った。僕も鍛えないとなぁ……。


「君のそんな笑顔がしばらく見れないのが残念だ。できるだけ早く帰ってくるよ。ホテルの部屋は二月いっぱいまで借りてるから使って」

 そのまま、また、矢継ぎ早に、

「心配だから、できるだけここにいて。側にいたら守ってあげられるのに。ほんとすぐ帰ってく……る……」

 その早口の口上に、ジュードがコロコロ笑ったので、話は途中で終わった。

「君の笑顔が好きだ」


 食事が終わって一度部屋に戻って身支度をした。二人とも一緒に部屋を出るはずだった。

「待っていて……」

 クリストファーが出口でジュードにキスをした。

 ジュードは返事にならず、長いキスになった。

「行こう」

 荷物を持ち、先に部屋を出て行こうとしたクリストファーの背中に縋りついて、ジュードが声を出さずに泣き出した。その涙を拭うのに、クリストファーはハンカチを渡した。


「泣かないで。笑ってよ」

 不恰好な笑顔で見送った。


 家にいた時は、小さな子供の頃でもどんな目に遭っても泣くことはなかった。愛されて僕は弱くなったのかな、とジュードは思った。

 一人でいるのが怖くなったらどうしよう。

「無い」時より、少しでも「ある」方が、無くすのが怖いものだなと思った。



 職場のレストランへ行くと、もういつもの忙しさで気は紛れた。

「アビゲイルを迎えに行ってくるから、ナサナエルをお願い」

 夕方の営業前にジュードは赤ん坊を託された。かれこれ四ヶ月近い赤ん坊、ナサナエルは標準よりやや大きく、順調に育っていた。

 ただ、今日は虫の居所が悪いらしく、ずっとむずかっていた。ロザリーも二人目とはいえ、流石に疲れていた。

「きゃあ……」

 ナサナエルはジュードに抱かれると、ご機嫌な声を出した。

「えー、もう信じられない」

 ロザリーが不満げな声を出す。

「ロザリーが疲れてるから、ナサナエルもなんか不安だったのかも知れないですね、きっと。ゆっくり、アビゲイルと散歩してきてください」


 ジュードはスリングでナサナエルを片抱きして、子供部屋の片付けをした。ロザリーより、手の大きなジュードの方が安定感があるのか、ナサナエルはすぐ眠ってしまった。このくらい育ってくると、抱っこしていても心配なくていいな。生まれたては落としそうで、ベビーベッドから抱き上げられなかったもの。子育ての勉強というか、練習になってありがたいな。

 自分の子供を想像してみたが、気恥ずかしくなってやめた。それでも、愛されなかった自分が子供を愛せるのかという不安は無くなった。自分と愛する人の子供なら、きっと愛せる。そんな自信が湧いていた。「愛」は「愛」を産むんだな。


 しばらくして帰ってきたアビゲイルとロザリーは、二人ともどこかで砂糖菓子を食べてきたらしく、頬にキラキラのカケラを付けていた。

 少しお昼寝してご機嫌なナサナエル。

 アビゲイルとロザリーはイタズラっぽく、

「ジュード、ありがとう、大好き」

 ジュードがアビゲイルから頬にキスされた。少し甘い香りがした。

 

 


 

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