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約束をしよう

 一緒にいたい


 ジュードの肩を支えながら部屋に入ると、クリストファーは言った。

「これからのことを話すよ」

 それは二人の希望や慰めになるはずだ。

 ソファに腰を下ろし、隣に座ったクリストファーの肩に頭をもたれてジュードは頷いた。


「僕は家業の工業製品を売りに展示会に参加するためにあちこちを回ってる」

「うん……」

「何種類かある売り物の製品は大型のものもある。それで船で来たんだ。人だけなら本国まで航空機で一日もかからない」

 クリストファーは互いのプロミスリングをした手を重ねた。

「来週、次の展示会がある。準備は作業員に任せて、僕は会期の一週間だけ現地に行く」

「うん……来週から一週間いないんだね。そのあとは? 戻ってこない?」


「まさか。むしろ、ずっと君を連れて行きたいよ」

 クリストファーは強く手を握った。

「僕は一人息子で、商会を継がなくちゃならない。そろそろ結婚をって言われていたから、君と巡り会えてとても幸運だった」

「でも、僕は……」

「展示会が終わってから、一度家に戻って家族と話してくる。君はΩだし、僕たちは同性だけど誰も反対はしないと思う。それから、君の家に正式に結婚の申し込みに行くよ。早い方がいいだろうから、二月中には行けると思う」


 ジュードは重なった手をひっくり返して、指を絡めてぎゅっと握った。

 ポロポロ両目から涙が溢れた。

「怖い……」

 僕の望みが叶ったことは一度もないんだ。


「大丈夫。上手くいくよ。君のいない未来なんて、僕には考えられない」

 クリストファーはジュードを抱き寄せて、ソファに抱えたまま横になった。

「僕がいる。ずっと一緒に幸せになろう」

 ジュードはクリストファーの胸元で両腕で抱かれていた。安心して、暖まって、その涙が落ち着くまでずっと。


 翌日からジュードの仕事先のレストランは営業だった。ジュードがホテルを出る時には、クリストファーは部屋で仕事をしていた。そのまま、数日、来客を受けたり、出かけたり。ジュードのレストランの営業終わりには迎えに来て、一緒にホテルに戻っていた。

 ロザリーには指輪のことも、恋人になったことも話した。

「よかったわね、おめでとう。でも、仕事には来てね。あなたが居ないと、レストラン回らないから」

 そう言われて、ジュードは笑った。


 クリストファーが出かけてしまった。一週間。ジュードは夜道が不安なので、またレストランの空き部屋に泊まった。日中の休憩にはアパートに行くこともできたのだが、ホテルの部屋を使う事がほとんどだった。コンシェルジュがクリストファーからの連絡を伝えてくれる日があったから。アパートには電話がないので、郵便以外の連絡方法がなかった。


 明日帰るよと電話があった日の翌日にクリストファーはレストランに迎えに来た。ちょうどレストランはその次の日が定休日。そこへロザリーの発情期(ヒート)が来て、そのままもう三日休むことになった。

「ごめん、きっと、移るかも」

 ロザリーが言った通り、翌日の昼にはジュードにも発情期(ヒート)が来た。


 もう迷わなかった。


「……側にいてくれないかな?」

「……とても光栄だけど、無理してない?」

 ジュードは首を振って言った。

「君といたい」


 二人は三日間、ホテルで過ごした。


 互いの距離はこれまでよりもずっと近く、言葉にならない想いを確かめ合った。


 クリストファーはジュードの照れた笑顔や、触れた指先に伝わる想いを忘れられないと思った。

 ジュードはクリストファーの優しい声や、寄り添う仕草のひとつひとつを心に刻んだ。

 二人は沢山重ねた「愛してる」の言葉全てを記憶に留めたかった。


 落ち着いてから、ジュードはΩの教科書にあった、薬も飲んだ。クリストファーも二人の未来のために慎重に気を配ってくれていたから。

 



 


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