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傷を負うのは俺だけでいい――お前の我儘に付き合ってやるよ  作者: 魔法使いの弟子スオウ
第一章 ギルド結成と初陣

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いつから三人だと思ってた?

「みなさん気をつけてください、囲まれてます」


 ルーナが声を落として身構えるように合図する。


「入り口近くまで引きつけて、少数撃破していきましょう」


「え? 小鬼でしょ?」


 ミリアが不思議そうにルーナの方を見てから、俺の袖を引っ張った。


「マックス、頼むわよ」


「へいへい」


 これじゃどっちがギルマスか分からないだろうけど、ウチはコレでいいんです!……などと考えながら小屋を出ていく。


「待ってください!」


 ルーナが止める声がするが、まあ見てもらう方が早いだろう。


 外へ出るとゴブリンが一斉に飛びかかってきた。俺は手に持った盾で、次々とゴブリンを弾き飛ばしていく。


「集めたぞー」


 ゴブリンを盾で殴りながら一箇所に集めた。


「しゃがみなさい!」


 ミリアの声に合わせてその場に伏せると、俺の上を巨大な火の玉が飛んでいった。火の玉はゴブリンの塊に触れると燃え上がり、ゴブリンたちを文字通り蒸発させてしまった。


「今のは……炎の上級魔法ですか?」


 ルーナが唖然とした顔でミリアに尋ねる。


「え? ファイアボールよ?」


「そんな! そんな威力のファイアボールなんてありませんよ!?」


 その気持ちわかるぜ……こいつの魔法は威力高過ぎて苦労したからな。


「そんなこと言われても、上級魔法なんて習ってないもの」


「しかし……」


 信じられないと言う顔のルーナの肩を叩いて、落ち着かせようとした。


「いや、マスターもですよ? あんな簡単にゴブリンを弾き飛ばすなんて!」


 え? そうなの?


「あ、あのっ……」


 膝を抱えていた女性が立ち上がり、こちらを見ている。


「助けていただき、ありがとうございました」


「いや、依頼をしに来たついでだから。気にしなくていいよ」


「でも……」


 まずはこの人を街まで連れて帰らないといけない。


「依頼も達成したし、戻ろうか」


「そうですね、では」


 ルーナがそう言うと、ゴブリンの耳を剥いで袋に詰め出した。


「アンタ、何してんの?」


「こうして体の一部を持って帰らないと依頼達成にならないのです」


「げー」


 ミリアが両手で喉を押さえながら、気持ち悪いと言うジェスチャーをする。


「それなら……仕方ないな」


 気持ち悪いけどルーナを手伝い、耳を剥いでいく。


「ほとんど炭だけど平気か?」


「まあ形は残ってますし、大丈夫ですよ」


 耳を袋に詰め、街道に出ると、向こうから冒険者のパーティーが歩いてくるのが見えた。人を嫌な気分にさせるような下卑た笑い声、柄の悪そうな歩き方。こいつらは……。


「マズイですね、カスナッツ一味です」


 見覚えのある背の高い男、カスナッツがいた。


「おいおい、生きてたのかよ」


「カスナッツさん、バレるとこですぜ」


 不穏な会話が飛び交う。


「ひっ……」


救い出した女性がカスナッツ一味を見て悲鳴を上げる。体が震えているのがわかる。


「……やれ。新入りの死体からは、いい小銭が出るんだよ。無駄死ににはならねぇ。俺の財布を肥やしてくれるんだからな!」


 カスナッツがそう言うと、男達が飛びかかって来る。最初の一撃を盾で防ぐが、体が思うように動かない。


「マスター、どうされました?」


「魔力消費の倦怠感がリライアンスで俺にきてるんだよ」


 ルーナと小声で話す。ミリアが「ファイアボール」一発でゴブリンを蒸発させた代償。それは本来、術者が気絶してもおかしくないほどの泥のような疲労感となって、いま俺の四肢を縛り付けていた。


 それでも何とか飛びかかって来た連中を退けると、カスナッツが剣を抜いた。重い一撃を盾で防ぐ。だが、カスナッツがニヤけて言った。


「お前ら、三人(まと)めて消し炭になれ!」


 背後でカスナッツ側のメイジが、巨大な火球を完成させていた。逃げ遅れた女性が悲鳴を上げる。だが、俺は笑った。


「いつから俺たちが、三人に見えてたんだ?」


「あ?」


 カスナッツの顔が歪み、振り返った。その時、詠唱を終えようとしていたメイジの喉笛を、虚空から現れたルーナの短剣が切り裂いていた。


「なに! いつの間に!」


 驚いて固まるカスナッツ。その隙を、俺が見逃すはずがない。倦怠感を気合でねじ伏せ、盾を捨ててカスナッツの後頭部に拳を振り下ろす。


「がっ……!」


 崩れ落ちたカスナッツを抱きかかえると、ルーナが残りの連中を瞬く間に縛り付けていた。


「そいつらは置いて行こう、こいつに証言させればいい」


 退屈そうにしていたミリアが口を開く。


「もういいわね? 行くわよ」


 俺たちは街に向かって歩き始めた。

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