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傷を負うのは俺だけでいい――お前の我儘に付き合ってやるよ  作者: 魔法使いの弟子スオウ
第一章 ギルド結成と初陣

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伝説のバアさんと、折れた杖

「さあ、説明してもらおうじゃない!」


 ルーナと二人で椅子に座らされていた。

 その前でミリアが腕組みをして立っている。


「説明も何も、スキルの確認をしていただけだ。なあ? ルーナ」


 ミリアが厳しい目つきでルーナを睨む。


「はい……」


 いや、声小っさ!もっと堂々としてくれないと!


「怪しいわね……」


 ほらな、こっち睨んでるし。


「まさか、アンタ!」


「な、何だよ?」


「ルーナにその、い、いかがわしい事とかしたっ、してたんじゃないでしょうね!?」


 動揺を隠す気がないのか?まあ、少し心当たりはあるけど……。


「し、してないよ?」


 しまった、動揺が移ってしまった。

 ミリアがルーナを見据える。


「いえっ、そんな! 少し胸を触られたぐらいで……」


 いや、言っちゃってるよ? 隠せよ!


「マークースーウェールー!」


 乾いた音とともに俺の頬に赤い紅葉が浮かんだ。


「ミリアさん違うんです、スキルを試してた時に事故で、事故なんです!」


 ルーナが必死に弁解する。


「んんん、わかったわよ。まあ、コイツにそんな度胸ないもんね!」


 フンッと鼻を鳴らして、ミリアが背中を向ける。


「風邪はもうよさそうね、ご飯食べて依頼を探しに行くわよ」


 そう言ってミリアが出て行った。


「マスター、申し訳ありません……」


「いや、リライアンスがバレなくてホッとしたよ」


 そう言うとルーナも少し安心した様子だった。


 俺たちは早々と飯を済ませて、ギルド本部に向かった。

 ギルド前で柄の悪そうな集団とすれ違う。


「あいつもう死んだかな?」


「まあ、大丈夫だろ。バレたりはしない」


 不穏な会話が耳に残る。


「カスナッツ一味ですね」


「知ってるのか?」


「ええ、悪名だけは聞く小物ギルドといったところでしょうか」


 悪名ねえ、あんまり聞きたくない話だな。


「あのギルドは新入りがよく死ぬんです」


「穏やかじゃないな」


 振り返るとさっきの会話から想像もできない、陽気な表情でカスナッツ一味は去っていった。


「真ん中の背の高いのは?」


「さすがです、あれがギルマスのカスナッツです」


 あの目つき、一目見ただけで体が強張り肩の傷が疼いた。


 ギルド本部に入ると、受付の隣にある掲示板に向かった。


「どれも大した額じゃないわね」


 そりゃそうだろ、大した額の依頼がゴロゴロしてるなんて治安が悪すぎる。


「あ! この依頼いいじゃない! 破格よ!」

 ミリアが嬉しそうに指をさした依頼は確かに破格の依頼料だった。


「あー、なになに? バンニップ討伐?」


「死にます」


 即答したルーナが首を振っている。


「そんなにやばいのか?」


「竜の類です……」


 うへ、それは死ねる。


「大丈夫よ! やりましょう!」


 コイツだけは乗り気だな……。


「ミリア、最初の依頼だし必ず成功出来るものがいいんだ」


「え? 勝てるでしょ?」


 どこから来るんだ?その自信は、俺にも少し分けてくれよ。


「これなんかどうだ?」


 俺が選んだのは薬草採集。うん、最初はやはりこう言うのがいいだろ。


「いやよ、草刈りなんか」


 草刈り……。誰かが集めないと薬草だって無くなっちゃうんだぞ?


「せめて討伐がいいわね」


「これなど、いかがでしょうか?」


 ルーナが指をさした依頼書には「ゴブリン退治」と書いてあった。


「ああ、ゴブリンか。確かに難易度的にはちょうどいいかもな」


「下劣な魔物ですから、助かる人も多いかと」


「ねえねえ」


 ミリアが不思議そうな顔で俺の袖を引っ張った。


「ゴブリンって何よ?」


「ああ、小鬼の事だよ」


「何よ、ならそう言いなさいよ」


 小鬼なんて呼び方はうちの田舎ぐらいしかしないんだよと、心の中でツッコミをいれていると。


「な……」


 ルーナの目が俺たち二人を行き来している。


「お二人はウィズビアレイスの出身だったんですか!?」


「そうなんだよ、田舎過ぎてビックリしたか?」


「あそこはメイガス・ミュラーの出身地ですよね?」


 メイガス・ミュラー?ミュラーってまさか……。


「ミュラーはうちのおばあちゃんだけど?」


 ミリアがそう答えるとルーナが固まった。


「お二人は伝説のウォーロックをご存知ですか?」


「おばあちゃんが時々話してくれたわ!」


「そう、それでコイツが伝説のウォーロックに憧れちゃって……」


 今に至ると言うわけだ。


「メイガス・ミュラーは、伝説のウォーロックその人ですよ!?」


「え?」


 ルーナの言葉に、俺とミリアの時間は止まった。


 ミリアのバアさんが伝説のウォーロック?

 確かに魔法は使えたが……伝説?


「何言ってんのよ、そんなわけないでしょ?」


 ミリアが笑いながらルーナの肩を叩いている。


「ミリアさん……、ミュラー様の家に虹色に光る杖はありませんか?」


「え、何で知ってるのよ? おばあちゃんが亡くなった時に一緒に埋めてあげたわよ」


「間違いありません……、メイガス・ミュラーその人です」


 ルーナの様子にだんだんと、俺もミリアも血の気が引くようだった。


「その杖……有名なのか?」


「はい、この国の人間で知らない人はいないほどです……」


「た、高いの?」


「国宝級かと……」


 国宝級? いや、全然想像できないけど?

 待て、あの杖確か……。


「折ったわ……」


「へ?」


 ルーナが思わず間抜けな声を出す。


「棺桶に入らないから、マックスに言って折ってもらったのよ」


「ええぇぇーーー!」


 ギルド本部の広場にルーナの絶叫が響き渡った。


 受付にゴブリン退治の依頼書を出すと、下劣な魔物なので気をつけるように助言された。


 小鬼、ゴブリンか。ゴブリンは人間を捕まえるとおもちゃの様に扱い、殺すという。

 なのでゴブリンを見つけるとすぐにギルドに依頼が来るらしい。


「忘れましょう……お二人に聞いた事は墓まで持っていきます。そう、無かったことにしてしまいましょう。」


 余程のショックを受けたのか、道中ルーナはずっとこんな調子でブツブツ言っていた。


 依頼書に書かれていた場所に近づいた時、ルーナが急に俺の腕を凝視した。


「どうした?」


「あ、あの……どうやって杖を折ったんですか?」


「そりゃあ、素手で」


「え……?」


 ルーナの表情がまた固まってしまった。

 いや、国宝級とか聞いてこっちもショック受けてるからね? ちょっと固かったけど、国宝級とかなら折れないようにしてほしい……。


「もう杖の事はいいでしょ? どうせおばあちゃんにしか使えなかったんだから」


 ミリアにとって大事なのは自分が使えたかどうかだけのようだ。


「いました……」


 ルーナの顔つきが変わった、視線の先を見ると小さくゴブリンが見える。


「隠れましょう」


 そう言われて、近くの小屋に入ろうとしたが鍵がかかった様に開かない。


「ここもゴブリンが徘徊してるはずです、鍵ではなくドアが壊れているんでしょう」


 なるほど、俺は力を入れてドアを押した。

 勢いよくドアが開く。


 暗い室内で目を凝らすと、女性が膝を抱えて震えているのが見えた。


「助けに来てくれたんですか……?」


「いや、ゴブリン退治に来たんだ」


 そう言うと女性は泣きながらすがり付く。


「仲間に置いて行かれたんです、私が回復できなくなったからって」


「何と言うことを……」


 ルーナが怒りで唇を噛んでいる。


「この小屋に逃げ込んだら、偶然鍵がかけられる構造になってて……。あれ、鍵は?」


「いや、少し力を入れたら開いたよ?」


「え……そ、そうですか」


 ドアの方をチラチラ見ながら、女性は続けた。


「お願いします、街まで連れ帰ってくれませんか?」


「もちろんよ! 私が来たからもう安心しなさい!」


 ミリアが腕を組んで威張ってる、楽しそうだな?


「ありがとうございます!」


 まあ、喜んでいるからいいか……。


「みなさん、どうやら囲まれたようです……」


 窓の外から粘り気のある声が聞こえてくる。


「ギギッ。ギヒヒ……」


 窓の外を見ると、逃げ道を塞ぐように近づくゴブリンの姿が見えた。

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