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傷を負うのは俺だけでいい――お前の我儘に付き合ってやるよ  作者: 魔法使いの弟子スオウ
第二章 戻れない道

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戦場のパートナー

「パートナー……って?」


 急に何を言い出すんだ、パートナーって……。


 いや、確かに、パレードの時、そんな風に見ていた人もいたし。

 結婚しているのか? なんて話もされていた。


 だから俺だって、少しだけそんな気分になったというか――


 いや、前言撤回!


 ミリアだぞ、相手は。


 こいつがそんなことで悩んだりするはずがない。

 危ない危ない。

 一人で空回りして、墓穴を掘るところだった。


 ……いや、しかし?


 そんな目で見られたら、俺だって――


「マックス? マックス!」


「なんだ?」


 顔を上げると、呆れたような顔をしたミリアが腕を組んでこちらを見ていた。


「何よ、急に黙っちゃって。人が相談しに来てるのに」


「お、おう悪いな。ちょっと考え事してた」


 ミリアが大袈裟に、深いため息をついてみせた。


「で、パートナーだったか? それはどういう意味で……」


「意味?」


 ミリアが眉をしかめて、怪訝そうな顔でこちらを見る。


「あ、ああ。意味というか……ほら。なんでそう思ったのかな? って」


 いや、なんで俺がしどろもどろになってるんだ?


「何でって……」


 ミリアは斜め上に視線を向けて、少し考え込む。


 俺はその様子を、黙って見ていた。


◇ ◇ ◇


 ロウルへの定期便に乗り込んだ。

 ほろの中で、少し時間ができた。


 いつもなら、周りに溶け込むために会話を始める時間にしているけれど……。


 今日は珍しく、貸し切り状態だった。


 時間ができると、余計なことを考えてしまう。


 グロックとニーナに、結婚の話をされた時。

 マスターは真っ赤になって弁解していたけれど、頬が緩んでいるように見えた。


 諜報ばかりしていると、自分が知りたくないものも目に入るようになるなあ……。


 マスターはきっと、ミリアさんを大切に思っている。

 それは、幼馴染とか、戦友という意味じゃなくて。


 顔を見ていれば……わかります。


「お姉さん、この先の村に寄るから」


「あ、はい」


 誰かが乗ってくるんだ……。

 それなら、余計なことを考えずに済みますね。


 馬車が止まり、人が乗ってきた。

 どうやら家族連れのようだ。


 小さな女の子が乗ってきたので、この子と話でもして過ごそうか。


「お姉さん、隣いい?」


「いいですよ。お話ししましょうか」


 席を少しずらすと、隣に女の子が座った。


 出かける前、定期便を待っている間。

 私は、パレードを遠目に少し眺めていた。


「お姉さんのお名前は?」


「ルーナといいます」


 マスターとミリアさん。

 お二人並んで馬車に乗っている姿が、とてもお似合いで……。


 誰もそこには近づけないような、そんな雰囲気があった。


「ねえ、ルーナさんもロウルに行くの?」


「そうですよ。お仕事なんです」


 そう、マスターからいただいた大切な仕事。


「お仕事なの? すごいね」


「えへへ、そうでしょう?」


 マスターが、私を頼りにしてくれている。

 頑張らないと……。


「ルーナさん?」


「……なんでしょう?」


 マスターの期待に応えないと……。


「なんで泣いてるの?」


「……あれ?」


 頬に触れると、指先が濡れていた。


 マスター……。


◇ ◇ ◇


「何でって……わからないの?」


「ああ、パレードの話か?」


 探るように話すと、ミリアがまた眉間に皺を寄せた。


「まあ、そうね。それもあるわ」


「みんな喜んでたじゃないか」


 そう答えると、その言葉を反芻するように、ミリアがぶつぶつと呟き始めた。


 そして急に、頬を染めて視線を落とし、もじもじし始めた。


 もしかして……こいつも?


「あ、あんたはどうなのよ? 嬉しかったの?」


 俺が嬉しかったかって?


 そうだな……確かに。


「確かに、みんな喜んでたもんな。俺とお前が揃わないと、今までの戦いは乗り越えられなかったかもしれないし……」


 ミリアが上目遣いで、じっと話を聞いている。


 その顔は反則だろ……。


「まあ、戦場のパートナーってことを、みんなに知らせて安心してもらうって意味でも重要だったと思うよ」


「それだけ?」


 いつになく真剣な目のミリアに、今日は誤魔化しが効かない気がした。


「まあ、俺だって男だし……ミリアの横にいられるのは、嬉しい気持ちもあるさ」


「嬉しい……の?」


「俺もそういうの得意じゃないから、何て言っていいのかわからないけど……うん」


 また視線を落として、ミリアが考え込む。


 これは……言うべきなのか?


 しかし、関係が悪化する可能性も……あるだろ?


 言い訳のような言葉ばかりが、頭に浮かんでいた。


 急にミリアが顔を上げた。


「それって! どういう――」


「おい、二人とも探したぞ?」


 急に声をかけられ、二人して振り向くと、ザックが立っていた。


「パレードが終わったから、晩餐会をやるってよ」


「あ、ああ」


「主役が来ねぇんじゃ、始められないってエギルが探してたぞ?」


「そうか……悪いな」


「いや? ミリア……なんだ? 熱でもあんのか?」


 ミリアを見ると、真っ赤になって俯いていた。


「大丈夫よ、もう行くわ」


 歩き始めたミリアが、ふと足を止めて振り返った。


「マックス、今はそれでいいわ」


 そう言って微笑むミリアは、夕焼けに映えて美しかった。


 どん、と後ろから肩を叩かれた。


「お前、もっとしっかりやれよ?」


 半ば呆れたような声で、ザックが冷やかす。


「うるせえ……」


 悪態をついてみたけど、頬のあたりはムズムズしたままだった。

 

 ――戦場のパートナー。

 その言葉の意味が、少しだけ変わった気がした。

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