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傷を負うのは俺だけでいい――お前の我儘に付き合ってやるよ  作者: 魔法使いの弟子スオウ
第二章 戻れない道

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凱旋パレード

 軍議の後、ロウル領へ向かう予定を相談するため、エギルを呼び止めた。


「エギル、次の予定なんだが……」


 隣でまだ不服そうな顔をしているミリアが、その様子を見ている。


「マスター、次の予定を覚えていらっしゃいますか?」


「ああ、サントバールに寄ってからロウル領だろ?」


 エギルは目を閉じて、静かに首を横に振った。


「次の予定は、パレードですよ」


 おお……そういえば、それが最善だと言っていたかもしれない。


「パレード!」


 振り向くと、ミリアが目を輝かせて立っていた。


「ええ、ミリアさんにはマスターの隣に座っていただきますね」


「そんな準備もしてたのか?」


 エギルは深く頷くと、俺たちを城の裏へと連れて行った。


「これは……」


「はい、パレード用に用意した特製の馬車です」


 ほろのない、豪華な作りの馬車が並んでいた。


「これは……少し恥ずかしいな」


「いえいえ、これも重要なお役目ですよ」


 頭を掻いていると、ミリアが目の前に乗り出してきた。


「そうよ! みんなのためよ。素敵じゃない!」


 そう言って笑った。


 まじか……守護者って大変だな。


◇ ◇ ◇


「ベネディクト、ベネディクトはいるか?」


 父上が呼んでいる声が聞こえた。

 用件については、ある程度察しがついていた。


「はい、父上。ここにおります」


「ベネディクト、大変なことになったぞ」


 ロウル領の前領主だった父は、私に領地を譲ってからも、こうして助言をしてくれる。


「サントバールが動きましたか?」


「うむ、エドマンドのやつめ、リライアンスに寝返りおったわ」


 エドマンドがリライアンスについたか……これはなかなかの展開だ。


「リライアンスとは、それ程のものなのでしょうか」


「あのエドマンドがつくのだ。相当だと考えていい」


 そこについては父と同意見だった。


 エドマンドとは時々交流があったが、いつも頼りにしていた。

 父とも意見が合い、ロウルまで顔を出しに来ることも多かった。

 何より、サントバールを本当に大切にしている男だ。


 そのエドマンドがついたとなると……。


「身の振り方も考えないといけませんね」


「うむ、ウィングゲートから遣いは来たか?」


「いえ、それはまだ」


 父上は黙って頷いた。


 サントバールがついたのだ。ウィングゲートは早めに手を打ってくるだろう。

 今回は何を要求されるのか、不安は募る一方だった。


◇ ◇ ◇


 ガラハムとミュラーが作った白銀の鎧に着替え、ほろのない豪華な馬車に乗せられた。


 なかなかいい椅子だ。座り心地は悪くない。


 ドレスを着せられたミリアが乗り込んできて、隣に座る。


 いや、これじゃあ婚約パレードみたいじゃないか……。


 そんなことを考えていると、ミリアが話しかけてきた。


「その鎧、名前あるの?」


「いや? 名前とかはついてなかったよ」


 名前? 鎧に名前か。確かにいい品だしな。


「へえ、じゃあ守護者の鎧って呼びましょうよ」


「おお、いい名前だな」


 そんな話をしていると、パレードの最前列にいる鼓笛部隊が音を鳴らしながら街へと出ていった。

 順番に騎馬隊や馬車が出ていく。


 エギルやザックも馬車に乗せられていて、思わず笑ってしまった。


 俺たちの馬車はクリスが馬で先導する。

 左右にガイとルーサーがつき、後ろからレオンが馬で並んだ。


 城門をくぐり街に出た時、俺は目を疑った。


 街の人々が街頭に立ち、俺たちに手を振っている。


 不思議そうな顔をしていると、クリスが下がってきた。


「皆、新しい統治者の登場に喜んでいます。レグナート五世は……お世辞にも良い統治者とは言えませんでしたから」


 そう言って、少し寂しそうな笑顔を見せた。


「皆に手を振ってあげてください。喜んでくれますよ」


 そう言い残すと、先導に戻っていく。


「クリス様ー!」


 街頭から声援が上がると、クリスが笑顔で応えた。


「クリス、さすがに慣れてるわね」


 隣でミリアが感心していると――


「魔女様ー!」


「ミリア様ー!」


 ミリアは声援に目を大きく開いて驚いていたが、やがてクリスの言葉を思い出したのか、手を振りはじめた。


 ミリアに手を振られて喜ぶ人々を見て、嬉しくなる。

 まあ、こいつは黙っていれば美人だもんな。


 ミリアの横顔をぼーっと見ていると、街頭から声が聞こえてきた。


「守護者様ー!」


「守護者マクスウェル様ー!」


 少し驚いて、ついきょろきょろしてしまった俺を見て、ミリアが笑う。


 先導しているクリスが振り向いて、俺に頷いて見せたので、街の人々に向かって手を振り返した。


 街を一周して、パレードは城へと戻っていく。


 城門で前が混雑した時、街頭に立っていた人々の噂話が聞こえてきた。


「ミリア様、おキレイね。守護者様ともお似合いだわ」


「やっぱりお二人はご結婚されてるのかしら」


 ああ、女性はその手の話が好きだよな。


 ちらっとミリアに目をやったが、その話は聞こえていなかったらしく、子供たちに手を振ることに夢中になっていた。


 そうだな……ミリアにその気があれば……。


 少しだけそんなことを考えたけど、ミリアの無邪気な笑顔を見ていたら、なんだか顔が熱くなった気がして、考えるのをやめた。


 城に戻って馬車を降りる時、いつもの癖でミリアに手を差し出した。


 ギュッと握り返してきたミリアを馬車から降ろし、歩き始めた時、ミリアが袖を引っ張った。


「マックス、その……」


「ん? どうしたんだ?」


 振り返ると、ミリアは少し唇を尖らせ、どこか思い詰めたような顔をしていた。


「ちょっと気になることがあって……」


「うん、何だ?」


 こいつがこんな表情をするのも珍しいな……。


「私たち、ちゃんとパートナーに見えるかしら?」


 そうか……パートナーに見えるか……?


 パートナー!?


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