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傷を負うのは俺だけでいい――お前の我儘に付き合ってやるよ  作者: 魔法使いの弟子スオウ
第二章 戻れない道

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次なる一手

「それにしても、あっさりだったな」


 エドマンドがあまりにもあっさりとリライアンスについたことに、俺は少し疑問を感じていた。


「ええ、まずはクリスさんの功績ですね」


「私ですか?」


 驚いたクリスに、エギルがにっこり笑ってみせる。


「マスターに対する失礼な発言に、レグナートの有力者だったあなたが怒りを露わにした。これはエドマンドにとって想定外だったでしょう」


「守護者が板についたなど、誰でも怒ります」


 クリスがプリプリと怒ってみせる。いや、かわいいな。


「そう、その発言を訂正させたのは大きかった」


 なるほど、話の主導権を握れなくなったということか。


「そしてマスターが、運営を委ねる姿勢を明確に示された。これも大きかった」


「まあ、大したことは言ってないけど……」


 エギルが俺の言葉を制するように、笑顔のまま首を横に振った。


「そういうところですよ。ただ、今回の話は始まる前から結果は見えていました」


 何だ? どういうことだ?


「ログ・サントです」


 ログ・サントか、グロックやミーナ、ニーナに出会った林業の町だったな。


「サントバールは木材のほとんどを、ベルナップ領に属するログ・サントに頼っていますから」


 なるほど……こちらからの条件をのんででも守りたいものがあったということか。


「これで、サントバールとベルナップ領、リライアが我々の統治下となりました」


 エギルが軽く咳払いをして、会議は次の段階に入った。


「うん、ルーサーは引き続きクゥイントン領の監視を行ってくれ」


「はっ」


 ルーサーは要注意人物だが、ルーナからの報告では怪しい動きはなかった。

 もしかしたら、単に慎重なだけの男なのかもしれない……。


「統治下の範囲が広がったことで、北のウィングゲートが動くでしょう」


「ウィングゲートですか……大きな領ですね」


 エギルの予想に、ルーナが思わず口を挟んだ。


「ええ、しかし単独で動くとは考えにくいです。多分、両隣と一緒にこちらを攻める作戦を協議している頃でしょう」


 なるほどな……なら次に打つ手は……。


「サントバール北のロウル領ですね」


「小領地だな」


 エギルが小さく頷いた。


「サントバールに攻め入るなら、必ず通る要地ですから」


「よし、ルーナは先行して調査を頼む」


「はっ」


 そう答えると、ルーナは守護者の間を出て行った。


「エドマンドに遣いを出せ。ロウル領へ一緒に来てもらう」


「はい、マスター」


 エギルは短く答えると、遣いを手配しに出て行った。


「グロック、ちょっと来てくれ」


「はい!」


 駆け寄ってきたグロックの肩に手を置く。


「グロックにはサントバール駐在を任せたい」


「はい、精一杯やります」


 一緒に行ってもらうメンバーを考えていると――


「マスター、お願いがあります」


 グロックがいつになく真剣な目でこちらを見ている。


「なんだ?」


「ニーナを……連れて行ってもよろしいですか?」


 ん? ニーナ?


 ニーナを見ると、少し頬を赤らめて俯いていた。


「へえ、グロック……やるな」


「いえ、その……何と言いますか」


 俺は嬉しかった。

 ここまで大変な目に遭ってきたグロックとニーナが、幸せになりたいと思えていることに。


「もちろん、いいさ」


 グロックに笑いかけると、目を輝かせた。


「ありがとうございます」


 深く頭を下げるグロックの隣に、ニーナが歩み寄った。


「私からも、ありがとうございます」


「うん、良い知らせがあったら教えてくれよ?」


 顔を上げた二人は真っ赤になっていた。


 グロックが顔を近づけて来て、耳元で囁いた。


「マスターも、ミリアさんと結婚されないんですか?」


「バカ……俺たちはそういうんじゃ」


 思わずミリアを見ると、きょとんとした顔で首を傾げた。


「何よ? マックス」


「いや……何でもない」


 その様子を見て、グロックとニーナが顔を見合わせて笑った。


「い、以上で軍議は終了だ。解散してくれ」


 それぞれが自分の仕事に戻っていく。

 出口のところでルーナがこちらを見ていたようだったが、何だろう?


「マックス! 何だったの?」


「いや……何でもないよ」


 不服そうなミリアを見ながら、これまで通りやっていけるのか、少し不安になっていた。

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