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傷を負うのは俺だけでいい――お前の我儘に付き合ってやるよ  作者: 魔法使いの弟子スオウ
第一章 ギルド結成と初陣

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秘密の共有者

 暗闇が白んでいき、目を覚ました事を自覚した。体勢を変えようとすると、肩に痛みが走り、声が漏れそうになる。


「マスター、目が覚めましたか?」


 声の主の方を振り返ると、ルーナが立っていた。


「ここは……?」


「サントバールのギルド本部近くの宿です」


「宿……屋?」


「そうです、あなたはギルド作成後に倒れてしまったのでここに運びました」


「そうか……迷惑かけた……」


「とんでもない! しかし、その……」


「ん? どうした?」


「傷を拝見しました……その傷で今まで起きてた方が不思議ですよ」


 鎧を脱がされ、包帯が交換してあった。


「ルーナがしてくれたのか?」


「はい」


「そうか、ありがとう」


 礼を言うと、ルーナの顔が少し柔らかくなった。


「ミリアは?」


「厄介な風邪をひかれているので、うつるといけないと説明して部屋に戻ってもらいました」


 それを聞いて、力が抜ける。


「ミリアさんには、気付かれないようにされてますよね? どうして?」


「あいつが知ったら、落ち込むだろ?」


 ルーナは少し悩んだようだが、意を決したように俺の目を真っ直ぐ見た。


「あなたは何者ですか? マスター」


「だから……」


「あなたの傷は深かった、なのに鎧は壊れていない。傷の状態もまるで生身で魔物の爪を受けたように酷かった」


 なるほど、気付かれたか。


「鎧を脱いで戦うような馬鹿には見えませんし、どういう事でしょうか?」


 俺は息を吐き出して、ルーナに信頼の代償(リライアンス)をかけた。


「自分の手を思いっきりつねってみて」


 ルーナは言われた通り、手をつねった。


「これは? 感覚はあるのに痛みがない……」


「ルーナ……そろそろ痛い……」


 差し出した俺の手が赤くなっているのを見てルーナは言葉を失った。


 ルーナが目を見開いて俺の手を見ている。

 信じられないという気持ちと不安が伝わってくるようだ。まあ、そうだろうな。


「これは一体……」


「俺のユニークスキル、信頼の代償(リライアンス)だ」


信頼の代償(リライアンス)……」


 そう呟くとさらに顔を強張らせて続けた。


「まさか、その傷は」


「そうだ、俺が肩代わりしなければミリアはどうなっていたかわからない」


「そんな! あなたはミリアさんの代わりに死ぬつもりですか!?」


 さらに続けようとするルーナの言葉を手で遮る。


「まだ死ぬつもりは無いよ、あいつは伝説のウォーロックになるんだから」


 うつむくルーナが赤くなった俺の手を取って何かを確かめるように強く握った。


「ミリアさんが大切だから……、ですか?」


「まあ、それも……ある」


「それも?」


 言葉を探すように話す、ルーナ(この子)に嘘はつけない。


「これは俺の意思なんだ、あいつが伝説のウォーロックになる姿を見たい」


 ルーナは深く息を吐き出すと、俺の赤くなった手をそっと自分の額に当てた。


「……狂っています。ですが、その狂気ごと、私はあなたにお仕えしましょう」


「おい、だから仕えるとかは……」


「いいえ、これは私の意志です。あなたの『信頼リライアンス』が尽き果てるその時まで、私があなたの影となり、盾となりましょう」


 そう言われると返す言葉が見当たらない。


 ルーナは一度、自分の胸元をきつく握りしめた。それから、決意を秘めた目で微笑む。


「私の秘密も教えないとフェアじゃないですね」


 秘密?

 確かにこれから仲間になるんだ、聞いておかないとな。


「私のことを見ててください」


 そう言った後、ルーナは笑顔を見せて忽然こつぜんと姿を消した。今目の前にいたはずなのに……。


「どこにいった?」


 姿が見えないどころでは無い、音も存在すら感じない。


 手を伸ばすと、何もないはずの空間で、吸い付くような柔らかいものに触れた。


「あの、そこは……」


 鈴を転がすような声と同時に、目の前にルーナの姿がふわりと浮かび上がる。

 あろう事か、俺の右腕は彼女の胸を正面から捉えていた。


「うわっ! す、すまん」


「いえ、わざとじゃないのはわかってますから……」


 頬を真っ赤に染めて俯く彼女に、俺の鼓動が速くなる。この距離で見ると、彼女は驚くほど可憐だった。


「こ、これが私のユニークスキル。隠者ハイディングです」


 必死で平静を装うルーナ。いや、かわいいな。


「ちょっと待て、これはすごいスキルじゃないか?」


「ええ、悪用されると大変な事になります。ですから、マスターのような方に仕えるのが私にとって意味を成すのです」


 いや、プレッシャーがすごいな……。


「……とにかく、二人だけの秘密だ。いいな?」


「はい、マスター。命に代えても」


 そんな誓いと、少しの熱を孕んだ空気。

 それをぶち破ったのは、遠慮のないドアの開閉音だった。


「ちょっと! いつまで寝てるのよマックス! お昼になっちゃう……って、あれ?」


 飛び込んできたミリアが、固まった。


 俺が寝ているベッドのすぐ隣。顔を真っ赤にして俯くルーナと、手を泳がせている俺。


「……アンタたち、何してたの?」


 ミリアの背後に、彼女の超火力を象徴するような陽炎が立ち上っている気がした。いや、怖い。怖いよ。

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