表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傷を負うのは俺だけでいい――お前の我儘に付き合ってやるよ  作者: 魔法使いの弟子スオウ
第二章 戻れない道

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/54

新国家、夜明け前に

「マスター、こちらです」


 ルーナに導かれ、俺たちは城の奥深く――宝物庫へ足を踏み入れた。


 今、ザックたちが城に残った兵士を大広間に集めている。

 集まった兵士に国家樹立の宣言をしろと、まあそういうことだ。


 少しでも国の代表に見えるように、鎧を着替えることになった。


「いいのがあるといいですね」


 なぜかソフィアさんも嬉しそうについてきた。


 宝物庫に並ぶ鎧は、どれもこれも金と宝石をこれでもかと貼り付けた悪趣味な代物で、正直着る気にはなれなかった。


 飾られた鎧の間を歩いていると――

 一つだけ、異質な鎧があった。

 金でも宝石でもない。

 静かに白銀の光を放つその鎧に、思わず足が止まる。


「これは……」


 思わず見惚れていた。

 白銀に輝く鎧の胸と背中には、翼を思わせる意匠が刻まれていた。


「あら、ガラハムの鎧じゃない! こんなところにあったのね」


「ガラハム?」


 俺が聞き返すとルーナが俺の手を強く握った。


「これにしましょう!」


 おお……目が本気だな。

 どうやら選択の余地はなさそうだ。


「いいけど……ガラハムって?」


「伝説といわれた名工です」


 なるほど……いい物だというのは見ただけでわかる。


「それはガラハムとミュラーが作った鎧なのよ」


 ソフィアが嬉しそうに言った。


「ミュラーが? 何か魔法がかかってるのか?」


 確かに、アヴェンジスケールが少し震えているように感じる。


「それは……」


 それは?


「わかんない」


 ソフィアが舌を出しておどけて見せた。


 白銀の鎧を身に纏い、ルーナが選んだマントを羽織る。

 大広間に入ると、兵士や文官たちのざわめきが広がった。


 壇上に立つと、レオンが静かに近づいてきた。


「……全部で五百五十八名だ」


「思ったより多いな」


 そう言うと、レオンは肩をすくめて下がった。


「――リライアンスのリーダー、マクスウェル・リライアンスだ」


 俺が名乗ると兵士たちは黙った。


 睨むもの、不安を抱えるもの。

 壇上から多様な反応が見える。


「これより、この地は我らリライアンスが統治する。レグナート王国は本日でなくなった」


 その一言で絶望や悲痛な声が、一部の兵士たちから漏れる。


「この国は――リライアンス守護主権国として生まれ変わる。今後もこの国のために働ける者だけがここに残れ! この場を去っても責めはしない」


 ふるいにかけるつもりで言ったが、出て行ったのは百名にも満たなかった。


「……よく残ってくれた」


「これからはリライアンス守護主権国の一員として――この国をともに守ろう」


 そう言うと、兵士たちが応える。


「隊長級の兵を集めてほしい。一度話をしておきたい」


「かしこまりました」


 そう言ってルーナが兵士の元へ進む。


「エギルは財務やその他を確認するために文官を集めてくれ、まずはみんなの生活の安定から取り掛かるんだ」


「はい、マスター」


 そう答えて、エギルは文官たちを集め始める。


「私は何をすればいい?」


「ミリアは、俺の隣にいてくれ」


 ミリアが勝手に動くと、何をするかわからないからな……。


「おい、顔が赤いぞ? なんかあったのか?」


「うるさいわね! 何でもないわよ」


 ザックとミリアがやり合ってるな……。


「そうだ、ザックに頼みたいんだが」


「あ? 何だ?」


「サントバールに戻って、ギルドホーム内のものを運んでくれないか? 向こうに残ってるメンバーと一緒に」


 俺がそう言うと、ザックは後ろを向いて歩き始める。

 片手をあげて、振り返りもせずに歩いていった。


「マスター、レグナートで指揮官をしていたという四名をお連れしました」


 ルーナに連れられてきた四人は、わずかに間を置いてから名乗り始めた。


「レグナリス守護隊のジェラルドです」


 背の高い、ブロンドの短髪がよく似合っている。緊張しているが、なかなかハンサムだな。


「サントバール守護隊のガイ」


 かなり体格の良い男だ。

 鋭い目が、俺を値踏みするように細められている。

 ……武で語るタイプか。


「東地区討伐隊ルーサーでございます」


 物腰は柔らかいが、目の奥に光が宿っている。

 ……腹の底が読みにくい男だ。


「西地区討伐隊のクリスです」


 女性の指揮官か。

 長い髪を纏めて、目立たなくしているが美人だな。


「四人ともよく来てくれた。率直に答えてほしい、なぜ残った?」


 俺の質問に四人は顔を見合わせた。


「それは……国がなくなったと言われても民はここにいますので」


 ジェラルドがそう答えた。


「まあ、他に行くところもない……です」


 なるほど、ガイは正直に答えたな。


「それに、リライアンスの戦力は統治者として相応しいと存じます」


 ルーサーが讃える。

 この男は、少し注意しておいた方がいいかもな。


「私は、レグナート王の非道な行いを止められなかった。今回の事で新しい道を得ました」


 クリスは、迷いのない目で真っ直ぐ俺を見据えていた。

 こういう目には弱いな。


「わかった、歓迎する。四人には軍部でしっかり働いてほしい」


「ハッ!」


 四人は胸に手を当て、同時に深く頭を垂れた。


「ルーナ」


 音もなく、空気が揺らぐ。

 隠者ハイディングで姿を消していたルーナが現れた。


「四人のことを調べておいてくれ」


「はい、マスター」


 そう答えてルーナは姿を消した。


「さて、これから忙しくなるぞ。ミリア、今のうちに休んでおこう」


「そうね、私たちの部屋はどこかしら?」


「その辺でいいんじゃないか?」


 休めそうな場所を探していると、ソフィアが慌てて追ってきた。


「どこでもいいわけないでしょ? あなたはこの国のマスターなのよ。自覚、ちゃんと持ちなさい。」


「いや、しかし」


「こっち来て」


 俺とミリアはソフィアに引っ張られて、レグナート王の寝室に連れてこられた。


 甘ったるい香の匂いがする。レグナートが好んだのだろうか?


 ついさっきまで別の男がこの国を支配していた――

 そんな気配が、まだ部屋に残っている気がした。


 しかし、内装が悪趣味で全然落ち着かない……。


「休むならこの部屋を使うこと!」


 そう言ってソフィアは部屋を出て行った。


「これは、もっと落ち着ける内装にしたいな」


「そうね、まあ少し休みましょう」


 そう言ってミリアはベッドで眠ってしまった。


 しばらく、ミリアの寝顔を眺めていた。

 ……さすがに、少し無理をしすぎたか。


 気づくと俺も、

 抗えない眠気に引きずり込まれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ