はじまりの王座
「さて、これからどうしますか?」
血塗られた王座の間、武器を納めた俺たちにエギルが改まって聞いた。
「どうするか……?」
……え?
どうするか?
計画通り、城を落として王を殺した。
この後のことなんて……。
「……それは、考えてなかったな」
「やはり、そうですか」
エギルは感心半分、呆れ半分といった顔で笑った。
「この場合どうなる?」
「そうですね、まずは周辺に領地を持つ貴族たちが攻めてくるでしょう」
ああ、やはりそうなるか。
「有力な貴族は、この機会に国の主導権を握ろうと画策するでしょうね」
「俺たちはどうするべきかな?」
「いずれかの勢力に保護を求めるか、あるいは国外に出るか……」
どちらにせよ、安心はできないか。
「なんで?」
ミリアの声に驚き振り返ると、淀みのない真っ直ぐな目で俺を見つめていた。
「いや、なんでって……」
また、こいつは……嫌な予感がする。
今すぐ逃げ出せと俺の怠惰な部分が叫んでいる。
「いい? 私たちは間違ったことをしていないの」
「ああ、間違っていない」
「悪いのはそこで死んでるやつらでしょ?」
「まあ、そうだな……」
こうなると、何を言っても聞きやしない。
「だったら逃げるのは変だわ!」
「しかし、このままでは貴族たちが軍で攻めてきますよ?」
エギル……何で少し楽しそうなんだ?
その目は、まるでミリアがどう答えるか最初から分かっているようだった。
「じゃあ、そいつらも悪い軍ってことね」
「悪い軍は倒してしまうと?」
「当然だわ!」
ミリアの言葉に微笑むエギル。
それを見ていたザックも吹き出した。
「ミリアよぉ、じゃあどうすんだ?」
「そうです、後ろ盾もない状況ですよ?」
ザックとルーナも楽しそうに参戦してきた。
「そんなの、私とマックスがいたら平気だわ」
それを聞いて、つい笑ってしまった。
「アンタたち、いい? こいつらは悪いやつらなのよ?」
「まあ、そうなんだけどな……」
「私たちは悪いやつらから、この街を救ってあげたの」
そんな発想しないだろ……普通。
「これからは私たちがこの街を守らないといけないわ」
「私たちがこの街を守護していく……と?」
「そうよ!」
ミリアの顔は真剣だった。
そして、自信に満ち溢れていた。
それを見て、みんなの胸にも火がついたのかもしれない。
「じゃあなにか? 俺たちでここに国でもつくんのか?」
ザックは冗談っぽく言ってるが、本気なのはわかっている。
「そうね、それがいいわ」
「では、国の代表はどなたが?」
ルーナも楽しそうに質問をしている。
「そんなの私に決まってるじゃない!」って言うんだろうな。
そう思ってミリアを見たら、きょとんとした顔をしていた。
「そんなの、マックスに決まってるじゃない」
その一言で、世界は一瞬静止した。
……何だって?
みんなの視線が俺に集まってくる。
「いい? 私たちは街の人を守ってあげられるけど、私たちを守れるのはマックスだけでしょ?」
「なるほど……」
ルーナが深く感心している。
「いや、待て。別に代表はお前でもいいんじゃないか?」
俺がそう言うと、ミリアがこちらを振り向く。
「何言ってるのよ、リライアンスのマスターはアンタじゃない」
眉を下げて、溜め息混じりにそう言った。
俺が国の代表だと?
これは何の冗談だ……。
「待て、俺に王様やれってことか?」
「そうよ」
ミリアの目は真っ直ぐで、拒否することを許してくれそうにない。
「いや、王様とかって呼ばれるのは……」
「今まで通り、マスターでよろしいのでは?」
エギルが口を挟んだ。
「この国を守る者、守護者が主権を握る国としましょう」
「王ではなく、守護者か。……まあ、その方が合っているかもな。」
……もう、どうにでもなれだ。
俺は無理矢理口角を引き上げ、やけくそ気味に頷いた。
「では、国の名前は?」
そう聞いたルーナの瞳が輝いている。
「そんなの決まってるじゃない」
ミリアが自信満々に軽く息を吸ってこう言った。
「リライアンスよ!」
鉄錆の臭いが充満するこの部屋と、みんなの笑顔があまりにもミスマッチだ。
まったく現実感がない。
——それでも。
ここから、すべてが始まる気がしていた。




