王城、開門
「ハマン、君にはこの手紙をギルド本部に届けてもらいたい」
ハマンは黙って頷くと、ギルド本部に向かって走った。
「カシム、君はリアの側にいてほしい」
カシムが涙を拭いて頷いた。
「他のみんなは、俺と一緒にレグナート城へ向かう」
みんなが黙って頷く中、レオンが声を上げた。
「おいおいおい、仲間一人のために本気で国を滅ぼそうっていうのか?」
「そうだ。レオン、君とは出会ったばかりだからついてくる必要はないぞ」
俺がそう言うと、レオンは短く息を吐いた。
「いや、俺も連れて行ってくれ」
「いいのか?」
俺に頭を下げて、レオンが続けた。
「是非、あんたのギルドに入りたい。仲間一人のためにみんなが動いている。ルーナちゃん抜きでもあんたのために働きたいぜ」
「わかった、頼むよ」
顔を上げたレオンがルーナにウインクして見せたが、ルーナは目も合わせない。
「では、どのように攻めるおつもりですか?」
エギルが俺に尋ねた。
「真っ直ぐだ、城門を破って王の元までいく」
「普通なら無謀というところですが、わかりました。お供いたします」
全員が頷き、俺たちはギルドホームを後にした。
レグナート王のいる城へ向かって。
ギルド本部、本部長室。
重厚な室内で、椅子に座った威厳のある男が燻り巻に火をつけた。
突然、ドアがノックされる。
「エドマンド様、伝令が届きました」
「入れ」
入ってきた男から受け取った伝令に目を通し、エドマンドは呟いた。
「リライアンスか……」
「伝令にはなんと? 至急の用件と伺いましたが」
エドマンドは燻り巻の煙を吹き出し、眉を下げながら言った。
「リライアンスがレグナート城を攻めるらしい」
「なんと!?」
燻り巻の灰を灰皿に落とす。
「本部としてはどうしますか?」
「何もしない。王城から要請もないしな。それに、ヘルハウンドを討伐する連中だぞ?」
伝令を届けた男は言葉を失った。
「これは手を出すなという、やつらからの警告だ」
「そんな……」
「まあ、城が落ちるようなことはあるまい。リライアンスも……今日で終わりだな」
そう言って、エドマンドは燻り巻の火を消した。
王城のある首都レグナリスに着いた。
整備された石畳の上を進んでいく。
街の人々は、俺たちの物々しい雰囲気に、道の端へと静かに退いていく。
城門に着くと、門兵が声をかけてきた。
「止まれ! ここをどこだと思っているんだ」
「開けろ」
「何を……?」
門兵が聞き返す間も与えず、ザックが山穿で城門を破壊した。
「貴様ら!」
ザックは、剣を抜いた兵士を返しの一撃で薙ぎ倒した。
「止まれ!」
城門の上から弓を引いた兵士が顔を出した。
乾いた音が二つ。
弓を引いた兵士は反り返るように倒れた。
「狙撃も正確ね」
ソフィアがそう言うと、アスペンが力強く返した。
「ええ、外れる気がしません」
レオンが口笛でアスペンの腕を讃えた。
アスペンは小さく肩をすくめてみせた。
門扉が破壊された音に城内は騒然とした。
「行くか?」
「いや、待て」
ザックの問いかけに短く答える。
あっという間に城門の前に数百の兵士が揃った。
「貴様ら! 生きて帰れると思うなよ」
隊長らしき男が怒号を上げる。
「ミリア」
声をかけると、ミリアは指輪に集中した。
兵士たちが身構えた。
少しの間があり、兵士たちの真ん中に小さな種火が現れる。
種火が渦巻き始める。
――次の瞬間だった。
ミリアの怒りで燃え上がった炎の竜巻は、数百の兵士を塵へと変えた。
煙と焼けた肉の臭いが立ち込める。
誰一人、声を上げなかった。
次の瞬間、首に衝撃が走った。
死の恐怖を感じながらも、俺はどこか落ち着いていた。
アヴェンジスケールが燃えるように赤くなった。
ミリアの首を掻き切ったはずのアサシンが呆然としていた。
「さすが王城だな、アサシンも一流だ」
俺はそう言って、アヴェンジスケールでアサシンの首を刎ねた。
背後で怒号が上がる。
俺たちを追い詰めるように、城外から兵士が迫ってきた。
レオンの騎馬隊が、そこに横槍を入れた。
横槍で混乱する兵士たちの声がする。
「さあ、進むぞ」
俺たちは城内へと向かった。
城内へと続く大門の前で、屈強な兵士が待ち構えていた。
「俺はイーサン、傭兵隊の隊長だ」
「そうか、イーサン。何の用だ?」
「てめえら、俺の部下まで塵にしやがって」
怒りに震えるイーサンが剣を抜いた。
「マックス」
「ああ」
ザックに声をかけられ、俺たちはイーサンの横を素通りする。
「待て!」
振り向こうとしたイーサンの肩を、ザックが、がっしりと掴んだ。
振り返らない。
もう、その必要もない。
広い廊下に、俺たちの足音だけが響いていた。




