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傷を負うのは俺だけでいい――お前の我儘に付き合ってやるよ  作者: 魔法使いの弟子スオウ
第二章 戻れない道

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山穿

「なるほど、あなたが剣ですね」


 その言葉に室内は沈黙した。


「ああ? 俺が剣だって? どういう意味だ」


 ザックの質問にアストリッドが微笑む。


「お話に出てきた剣士……?」


 ミリアが呟くとアストリッドが頷く。


「そうです、この方は剣士アーデル……いえ、役割といえばよろしいのでしょうか」


「おいおい、勝手に役割をつけるなよ」


 ザックが皮肉そうに笑う。


「それに俺は剣を振れないぜ? 剣を振っても折れちまうからな」


 そう言ったザックをアストリッドがじっと見つめる。


 俺のリライアンスを見抜いた時のように。


「なるほど、オーガのユニークスキルですか」


 ザックの肩が一瞬跳ねたように見えた。


「わかるのか?」


「ええ、アーデルの豪腕ストロングよりも強い力のスキルですね。並大抵の剣では折れてしまいます」


 ザックが大きく溜め息をついた。


「何だか知らねえが、俺はアーデルじゃねえぞ?」


「ええ、あなた方にはあなた方の道というものがあるでしょう」


 それを聞いてザックがフッと笑う。


「それによ? 剣っつったって、振れる剣がねえのに」


「そうですね。剣というより拳でしょうか」


 アストリッドはどこか楽しそうだ。


「あれをお持ちしなさい」


 アストリッドが言うとニトが立ち上がり表に出た。

 外で数人に手伝うよう指示している声が聞こえる。


 しばらくするとエルフ数人が台車に乗せて両手剣を引っ張ってきた。


「これは?」


「昔の戦争で大暴れした大男が振ったと呼ばれる大剣です。名を山穿やぜんと言います」


山穿やぜん……?」


 ザックの背丈ほどもある巨大な大剣は、黒い刀身を鈍く光らせていた。


「その大男は戦場で千人を斬り、魔法師団に囲まれて集中砲火を浴び、絶命したと言われてます」


「ほう、いい男っぷりじゃねえか」


 感心するザックをよそに、ルーナが口を開いた。


「触ってもよろしいですか?」


 そう言ってルーナが山穿やぜんに近づく。


「どうぞ、振れればあなたが持ってもよろしいですよ」


 ルーナが両手で剣を持とうとする。


「これは……なんて重さ」


 持ち上げることもできないといった様子で、両手を上げた。


「どれ……」


 ザックが大剣に手をかけると、台車が壊れそうなほど軋む音を立てた。


 ザックが片手で持ち上げて刀身を眺める。


「確かに……重いな」


 エルフたちが騒ぎはじめた。


「なんと! オーガの力はこれほどなのですか」


 アストリッドも驚いたようだ。


 ザックが「持ってみろ」と俺に渡してきた。

 受け取った瞬間、腕の筋が千切れそうになる。


「片手じゃ落としそうだな」


 俺がそう言うとアストリッドは溜め息をついて、


「マックス、あなたも人間離れしてますね」


 そう言って笑った。


「しかし、よくここまでユニークスキルが集まったものです」


 アストリッドが半ば呆れたように笑う。


 俺たちは顔を見合わせた。

 アストリッドが続ける。


「あなたは隠者ハイディングね」


 アストリッドがルーナを見てそう言うと、ルーナが頭を下げた。


「あら、あなたは辛かったでしょう? 聖女セインテス


 ヒナに向けられたアストリッドの慈愛が溢れる瞳を見て、ヒナは涙ぐむ。

 確かに……すまなかったな。


「エギルとソフィアのは、まだ内緒にした方が面白いかしら?」


 イタズラっぽく笑うアストリッドの顔を見て、みんながつられて笑ってしまった。


「私は? 私は何かないの?」


 おねだりをする子供のように、ミリアがアストリッドに尋ねた。


「そうね、あなたの場合、存在そのものがユニークスキルみたいなものだから……」


 「な……!?」


 ルーナが思わず声を上げた。


 アストリッドは少し考えてから、


「ミュラーを魔力に愛された者、メイガスと呼んだように、あなたにも呼び名を与えましょう」


 そう言って、ミリアと顔を見合わせて、イタズラを考えついた子供のように笑った。


「魔法を見せてもらえるかしら?」


 アストリッドがそう言ったので、みんなで移動することになった。


 そうして俺たちは、里の奥へと足を向けた。

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