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傷を負うのは俺だけでいい――お前の我儘に付き合ってやるよ  作者: 魔法使いの弟子スオウ
第二章 戻れない道

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三ヶ月の誓い

 買い物の翌日は依頼も受けず、一日休みにした。

 みんなそれぞれ、休日を満喫してくれるといいが……。


 ギルドホームの広場で、木剣の打ち合う音が響いている。


「キャッシュ! 反応が遅い」


 ザックは変わらず、戦闘訓練を始めたみたいだな。

 できれば、もう少し離れた場所でやってほしい。


「マックス!」


 ドアの向こうからミリアの声が聞こえた。

 ノックもなく、ドアが豪快に開いた。


「そろそろ起きなさいよ、休日だからってだらしないわよ?」


「もう少し寝かせてくれよ」


 ミリアが大きな溜め息をついた。


「お茶にするから、来なさい」


 ……わかったよ。

 休日だと思うと、急に体が重くなるな。


 食堂に行くとテーブルにお茶が用意されていた。


「おはよう」


「マスター、昼過ぎです」


 ルーナとヒナ、ミーナとニーナが座っていた。


「他のみんなは?」


「アスペンはソフィアさんに連れられて、外に行きました」


 アスペンがソフィアに?


「珍しい組み合わせだな」


「何でもスナイパーに見てもらいたいものがあるとか」


 へえ……。新しい弓とかかな?


「ハマンは森に採集に行きました」


 ハマンらしいな……休日も採集か。


「カシム、キャッシュ、グロックは広場でアイザックさんに稽古をつけてもらってます」


 さっきから響いているあれか。


「リアは?」


「買い物に行ってますよ。明日からの食料を買いに」


 ドアが開いてエギルが入ってくる。


「おお、お茶ですか。いいですね」


「アンタも飲みなさいよ」


 ミリアが嬉しそうにエギルを椅子に座らせた。


「ねえ、ナイカリキンってどんな国?」


 ミリアが目を輝かせてエギルに尋ねる。


「ナイカリキン王国は、ナイカリキン一世が統一した国家です。昔はこの辺りもナイカリキンの統治下でしたね。西の帝国と何度もこの地でぶつかり、最終的には敗れて、今の規模になったというわけです」


「へぇー。何でこの辺りは帝国じゃないの?」


 さては、バアさんの話ちゃんと聞いてなかったな?


「この辺りは戦火で酷い有様でしたので……復興に時間とお金がかかり過ぎて魅力がなかったのでしょう。地方の有力者だったレグナート一世が復興させ、統治国家として独立したのです」


 そうそう、何度もバアさんに聞かされた話なのに……。


「ふーん」と、ミリアは初めて聞いたかのように感心している。


「じゃあ、帝国もナイカリキンもこの国を狙ってるのかしら?」


 ミリアの質問に、エギルは少し考えた顔をした。


「帝国に関してはないと言えるでしょう。レグナートにはこの辺りを復興してもらいましたし、交易でも利益を得ていますから……。ただ、今代のナイカリキン王は傲慢な方ですので……あまり面白くは思っていないでしょうね」


「そんなとこ、通れるのか?」


 俺が聞くとエギルは微笑んだ。


「通行税を払えば問題ありません。ナイカリキンの貴重な財源になっていますからね」


 ドアが開き、アイザックたちが入ってきた。


「お、お茶してんのか? 俺らにもくれよ」


「ダメよ! 先にお風呂入ってきなさい」


 ミリアが冷めた目で見ている。

 確かに、部屋中に汗の臭いが充満していた。


「喉乾いてんだよ」


「ダメ! 入ってきたら冷やしたお茶出してあげるから」


「仕方ねえな」


 そう言ってアイザックたちは風呂場に向かった。


「冷やしたお茶ですか?」


 エギルが興味深そうに聞いた。


「そうよ! このお茶をここに入れて魔力を流すと……ほら、冷やしたお茶の出来上がり」


「ソフィアの魔法道具ですか……」


「便利なのよ」と言ってミリアがニッコリ笑った。


 お前は、ずっとそうやって笑っていろよ……。


 その夜、食事が終わってから全員を食堂に集めた。


「俺たちは明日からエルフの里に向かう。これは、ギルドの今後を担う大切な任務だと思ってほしい」


 みんなが静かに頷く。


「メンバーは俺、ミリア、ザック、ルーナ、ヒナ、エギル、そしてソフィアだ」


 名を呼ばれたメンバーに一瞬、緊張が走った。


「残ってもらうメンバーにはギルドの運営と、拡大のために資金作りを行ってほしい」


 残りのメンバーが顔を見合わせている。


「留守中のマスター代理をカシムにお願いしたい。カシム、いいか?」


「はい! もちろんです」


 カシムがいい返事をしてくれて、ほっとした。


「みんなはカシムを支えて、ギルドを守ると同時に研鑽を積んでほしい」


「はい!」


 カシムのおかげで、空気が温まっていた。


「三ヶ月、リライアンスを任せたぞ。最後に――無理はするな」


 一瞬、間が空いてから、みんなが頷いた。


「全員無事で、またここで飯を食おう」


 そう言うと、みんなはそれに応えるように歓声を上げた。

 その笑顔を包む、食堂の灯りが風もなく揺れた。


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