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傷を負うのは俺だけでいい――お前の我儘に付き合ってやるよ  作者: 魔法使いの弟子スオウ
第二章 戻れない道

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買い物と邂逅

「会いたくない……?」


 エギルから出た予想外の言葉に思わず呟いた。


「ええ……少々変わった者でして」


「それって……ミリアより変わってるのか?」


 頭に衝撃が走る。ミリアに後ろから殴られた。


「ミリアさんのような美しい方ではないのです」


「その言いかただと、女性なのか?」


「はい……」


 思い出すだけでも疲れるのか、エギルは俯いた。


「しかしよ、その女しか心当たりはないんだろ?」


 ザックの言葉にエギルはしばらく黙ってしまった。


「いえ、私の個人的な感情で組織作りを停滞させるわけにはいきません」


 そう言って顔を上げたエギルは軽く溜息をついて、


「連絡してみます……」


 諦めたような表情でそう言った。

 いや、無理させてごめんね。


 エギルはしばらく連絡のために姿を現さなかった。


 その間にギルドホームの改築が終わり、俺たちは宿を引き払って住居を移すことにした。


 ギルドホームに着いて、まず入り口の佇まいに驚いた。

 倉庫の入り口から、まるで館の入り口のように変化していた。


「私が最初に入るわよ!」


 俺から鍵を奪って一番乗りしたミリアが甲高い声で叫ぶ。


「きゃあ! 何これ!」


 中に入った俺は驚いた。簡素だが、館といって差し支えない内装になっていた。


「こんなに広かったのか……」


 奥には個室が並び、二十人は住める造りになっていた。


「マスターの部屋はこちらですね」


 ルーナが一番奥に広く作られた部屋を見つけてそう言った。


「私はここね! マックスの隣!」


 やけに嬉しそうだな。喜んでるんだからいいか。


「風呂も使えるようになってるな、どうなってやがる? 湯がでるぞ?」


 ザックもなんだか嬉しそうだ。


「魔法道具らしいですよ、改築業者の方が仰ってました」


 この早さで、この完成度か。

 あの料金にも頷ける、完璧じゃないか。


 その後、俺たちは市場に出向いた。

 個室の家具は好みもあるし、給金で揃えてもらうとして、最低限のベッドとか食卓などを揃えないといけない。


「マックス! この食器で揃えられそうよ!」


「マスター、こちらの椅子などよろしいかと」


 なんだかんだ、はしゃぐ女性陣の言いなりに買い物を続けていた。


「ま、マスター!」


「はい!?」


 ヒナさんが大きなテーブルの前で俺を呼び止めた。


「このテーブルなら、みんなでお食事できますね。素敵です」


 値段を見ると、そこそこ痛かったが……。

 ヒナさんの珍しい自己主張に応えてあげたかったので購入した。


 明日から、依頼こなさないとな……。


「帰る前に、少しお茶でもしていこう」


「さんせーい!」


 ミリアが元気に賛同する。

 最近、しんどい思いばかりさせてるからな。


 店に入り、席に着くと後ろの席から話し声が聞こえてきた。


「オイラ、疑問に思ってることがあるんだ」


「……何だ?」


 あれ、この声……?


「アイザックの兄貴は、ギルドで一番強いと思うんだ」


「それがどうした?」


 アイザックとキャッシュ? 仲良くお茶してんのかよ。


「マックス! 何にす……?」


 ミリアの口を押さえて、親指で後ろの席を指した。


「もう、何よ?」


ミリアも少し声を落とした。


「マスターと、アイザックの兄貴が戦ったらどうなるんだ?」


「キャッシュ?」


 全員が後ろの席に座っている二人に気づいた。

 アイザックがなんて答えるんだろう? と耳をすませていると。


「まあ、まともにやったらマックスが勝つだろうな?」


「そうなのか? オイラはアイザックの兄貴が勝つと思うぞ!」


「そうだな……」


 アイザックが一息入れた後、


「後ろの席でコソコソ聞いてるような奴には負けたくねえな」


バレてるー! アイザックの含み笑いが聞こえる。


「な、何だ気づいてたのか」


「お前らが入ってきた時からな」


 なんだか恥ずかしくて、目を合わせられない。


「キャッシュと仲良くなったんだな?」


「あ? こいつが修行してくれってうるさいから付き合ってやってるだけだよ」


 そう言った後、アイザックはキャッシュの方を見て、


「まあ、戦力は多いに越したことはないからな」


 と言った。コイツもギルドのことを考えてくれているんだな。


 その後、お茶と甘味を楽しんでから店を後にした。


 アイザックたちと別れて、ギルドホームに戻った。


 食料品を買いに行っていたカシムたちは、先に帰ってきていて出迎えにきた。


「お疲れ様です、エギルさんが戻られてます……」


「何かあったのか?」


「はい、魔法道具師のお知り合いを連れて来られたのですが……」


 ミリアの指輪を外せるかもしれない知人か。


「わかった、会おう」


 カシムがまだ何か言いたげだったが、エギルが待つ食堂に向かった。


「エギル、よく戻ってきてくれた」


 ドアを開けると迷惑そうな顔のエギルが、美しいエルフの女性に抱きつかれていた。


「な……!?」


 何なんだ? この状況は……。

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