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第52話:鉄壁の要塞とドジっ子破壊神

インフラ、住居ときて、最後は「防衛」です。 平和なリゾート地にするためには、外敵を寄せ付けない圧倒的な「壁」が必要です。 担当するのは、タケル・ファミリーきってのドジっ子破壊神・ファソと、腹黒軍師ヴァイス。 そして、無邪気なサイコパスこと四男シドも加わり、建設現場は戦慄の実験場と化します。

建設四日目。  上下水道が通り、全ての家屋に屋根がかかった。  街としての機能はほぼ完成したと言っていい。だが、俺にはまだ懸念があった。


「飯も風呂も最高だ。だが、寝てる間に魔物に襲われるのは御免だぞ」


 ここは魔境の中だ。いつ強力な魔獣や、あるいは帝国軍が攻めてくるかわからない。  俺はヴァイスと、基礎工事担当の三女ファソを呼び出した。


「今日は街を囲む**『城壁』**を作る。絶対に破られない、鉄壁の守りだ」 「お任せください、主よ。既に設計図は頭の中に」 「はーい! 杭打ちなら任せてください~! 頑張りますぅ!」


 ヴァイスが不敵に笑い、ファソが巨乳を揺らしてガッツポーズをする。  この凸凹コンビに、俺の安眠がかかっている。


        ***


 作業開始。  ファソは、自身の背丈ほどある巨大な杭打ち機――**『魔導パイルバンカー』**を軽々と抱えて走っていた。  見た目はふんわりとしたおっとり美女だが、その筋力は(多分)オークロードをも凌駕する。


「えいっ、えいっ! ……よいしょっ!」


 ズドン! ズドン!  彼女がトリガーを引くたびに、直径一メートルはある巨木の杭が、まるで爪楊枝のように地面に突き刺さっていく。  正確無比な基礎打ちだ。……転ばなければ。


「あ、あれっ? 靴紐が……ひゃあああ!?」


 何もない平地で、彼女の足がもつれた。  ドタン!  派手に転んだ拍子に、抱えていたパイルバンカーの銃口が地面を向く。  そして運悪く、指がトリガーにかかっていた。


 ――ズガガガガガガガッ!!


 最大出力で暴発した杭の連打が、地面を抉り、粉砕し、一直線に走り抜けた。  土煙が晴れた後には、壁の基礎どころか、深さ一〇メートル、幅五メートルはある巨大な**「クレバス(断層)」**が刻まれていた。


「あわわ……やってしまいましたぁ……」


 涙目のファソ。  現場監督のガレイス卿が、顔面蒼白で駆け寄ってくる。


「お、おい……南側の地盤が崩壊したぞ! これでは壁が作れん! 埋め戻すのに何日かかると思ってるんだ!」 「ううぅ……ごめんなさいぃ~! すぐに埋めますぅ~!」


 ファソが泣きながら土を集めようとした、その時。


「……いや、待て。そのままでいい」


 軍師ヴァイスが、冷徹な声で制止した。  彼は断層の縁に立ち、底知れぬ闇を覗き込みながら、口元を三日月のように歪めた。


「予測不可能な地割れ……これぞ天然の要害だ。わざわざ掘る手間が省けた」 「ぐ、軍師殿? まさかこれをそのまま使う気か?」 「ええ。ここに『誘導路』を作り、敵をこの谷底へ落とす。名付けて**『キルゾーン(殲滅地帯)』**です」


 ヴァイスの目が怪しく光る。  そこへ、可愛らしい声が加わった。


「ねぇねぇヴァイス、それなら底に僕の『見えない糸』を張っていい?」


 四男のシドだ。  天使のような笑顔で、恐ろしい提案をしてくる。


「落ちてきた敵が、自重でバラバラになるようにさ。お掃除の手間も省けるでしょ?♡」 「採用だ。さらに壁には『スリット(銃眼)』を設け、そこからタケル様の『毒煙』を流し込んで視界を奪おう」


 悪魔合体した軍師とショタが、ファソが開けた大穴を中心に、えげつない罠、スパイク、迷路を構築していく。  そのあまりに手際の良い殺戮設計を見て、ガレイス卿は戦慄した。


(こいつら……帝国の拷問部隊よりタチが悪いぞ……)


        ***


 夕方。  街を一周する、高さ一〇メートルを超える**「ミスリル合金と巨木の複合城壁」が完成した。  特に、敵国であるオーレリア王国に面した南側は、ファソのドジによって生まれた「地獄の断層」**により、軍隊だろうがドラゴンだろうが正面突破不可能な要塞と化していた。


 俺は完成した壁の上に立ち、眼下に広がるその凶悪な堀を見下ろした。


「……なんか、俺の想定より殺意が高くないか?」 「主の安眠を妨げる輩には、死をもって償わせる。それが我々の慈悲です」


 ヴァイスが涼しい顔で答える。  まあ、頼もしいからいいか。


 俺は、壁の隅で小さくなっているファソの元へ歩み寄った。


「あ、あの……タケル様……いっぱい壊しちゃってごめんなさい……」


 彼女は自分の失敗を気に病んで、うつむいている。  俺は苦笑して、彼女の頭をポンポンと撫でた。


「謝るな。結果オーライだ。お前のおかげで最強の守りができたんだからな」 「ほ、本当ですか……?」 「ああ。MVPはお前だ」


 俺が言うと、ファソはぱぁっと顔を輝かせ、それからボッと顔を真っ赤にして頭から湯気を出した。


「はぅ……! はいっ! よ、よかったですぅ!」


こうして、衣・食・住、そして防衛。  全てのピースが埋まった。


 夕日に照らされたその街は、もはや避難所ではない。  美しく、豊かで、そして強固な独立国家。  俺たちの『首都』の誕生だ。


 俺は振り返り、集まった仲間たち――シルヴィ、子供たち、ヴァイス、クラウディア、そして各種族の代表たちを見渡した。  さあ、最後の仕上げだ。  この国を運営するための「役割」を、正式に与えよう。

ファソのドジは、時に戦略兵器をも凌駕します。 転んで断層を作るヒロイン……ある意味最強かもしれません。 そしてドン引きするガレイス卿。帝国の拷問部隊を知る彼が言うのだから相当です。

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