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第14話:黒瘴の森の遠足と、進化する兄弟

ご訪問ありがとうございます。 いつも応援ありがとうございます。


少しでも楽しんでいただけたら幸いです。


第1部完結まで描き上げておりますのでよろしくお願いします。

翌朝。 俺は「強化戦闘服」に身を包み、腰に「ミスリルの剣」と「鳳凰の柄」を差して、拠点の前に立った。


「よし、全員揃ってるな」 目の前には、銀色の巨体を持つシルヴィと、7匹のチビたちが整列している。 チビたちは初めての遠出に興奮しているのか、カサカサと足を動かして落ち着きがない。まるで遠足前の小学生だ。


「今日は西(上流)への偵察だ。深入りはしないが、何があるか分からない。油断するなよ」 俺はタバコに火をつけ、深く吸い込んだ。 「(頼むぞ、《煙霧変調》)」 吐き出した紫煙を、俺たちの周囲に漂わせる。 イメージは『結界』と『浄化』。 俺たちを中心に、直径10メートルほどの「動く空気清浄エリア」を作り出す。


「出発!」 俺たちは川沿いを上流に向かって歩き出した。


森の中は、拠点周辺とは空気が違っていた。 淀んだ黒い霧(瘴気)が立ち込め、植物は捻じれ、ドス黒く変色している。 俺の煙が触れた端から、黒い霧がシュワシュワと消滅し、枯れた下草が本来の緑色を取り戻していく。


「(消費が激しいな…)」 濃い瘴気を浄化し続けるため、煙はすぐに薄まってしまう。 俺は吸い終わったタバコを捨てると(すぐに土に還る)、間髪入れずに次の一本を取り出し、火をつけた。 「(スパァー……ふぅ)」 歩く、吸う、吐く。歩く、吸う、吐く。 俺が歩いた跡には、瘴気の晴れた「獣道」ができあがっていく。まさに歩くパワースポットだ。


30分ほど歩いた頃だろうか。 「グルルルル……」 茂みの奥から、低い唸り声が聞こえた。 現れたのは、全身の毛が針金のように逆立った、巨大な**赤熊レッド・グリズリー**だ。大きさはダンプカー並み。この森に来て最初に遭遇した狼より遥かに強そうだ。 目は瘴気で真っ赤に染まっている。


「(ちょうどいい実験台だ)」 俺は前に出た。 熊が咆哮と共に、丸太のような腕を振り下ろしてくる。 「(遅い)」 Lv.18の動体視力には、スローモーションに見える。 俺は回避と同時に、腰の**「ミスリルの剣」**を抜き放ち、熊の脇腹を薙いだ。


ザシュッ! 「ギャアッ!?」 硬い剛毛と分厚い脂肪を、豆腐のように切り裂く。 「(切れ味抜群だな。だが、これだけじゃ倒しきれないか)」 熊は痛みでさらに狂暴化し、暴れまわる。


「なら、こっちだ」 俺は剣を納め、逆の腰にある筒――**『鳳凰の柄』**を抜いた。 スイッチオン。 ブォン!! 青白い炎の刃が、1メートルほどの長さで噴出する。


「喰らえ!」 俺はライトセーバーを横薙ぎに振るった。 熊が防御しようと腕を出すが、意味がない。 ジュッ!! 嫌な音と共に、熊の太い腕が、骨ごと溶断されて宙を舞った。


「グオオオオオオッ!!?」 「(威力過剰オーバーキルだこれ…!)」 俺は慌ててスイッチを切った。


「みんな、トドメだ! 経験値を稼げ!」 俺の号令に、待機していた7匹のチビたちが一斉に飛びかかった。 「キシャアッ!」 ドレとレミが糸で熊の足を封じ、ミファとファソが背中に飛び乗る。 ソラ、ラシ、シドが剥き出しになった傷口に、銀色に輝く鋭い牙を突き立てて肉を食い破る。 完璧な連携だ。 数秒後、巨熊はドサリと倒れ、動かなくなった。


その瞬間。 カッ!! 7匹のチビたちの体が、眩い銀色の光に包まれた。


「お?」 光は徐々に大きくなり、やがて収束していく。 現れたのは、さっきまでの「子犬サイズ」ではない。 「大型犬」から「ポニー」ほどもある、立派な大きさの蜘蛛たちだった。 体表の銀色はより硬質な輝きを増し、脚も太く逞しくなっている。


(ピロリン♪) 《眷属:アージェント・スパイダー(幼体)が、アージェント・スパイダー(成体)に進化しました》


「(おお、でかくなった! 進化か!)」 「主様! 力が! 溢れます!」 「やったー! おっきくなった!」 「見て見て! 強そうでしょ!」 幼いながらも、はっきりとした「声」が辺りに響く。


と、その時。 「シャアアアッ!!」 進化した際の魔力放出につられたのか、森の奥から次々と魔物が現れた。 大蛇、巨大カマキリ、瘴気に侵された黒狼の群れ。 「(うわ、囲まれたか?)」


俺が構えようとすると、シルヴィがスッと前に出た。 「タケル様、ここは私にお任せを。子供たちの成長を見て、私も体が疼きます」


シルヴィは優雅に脚を上げると、先端から目に見えないほどの速さで銀糸を放った。 ヒュンッ! 空を切る音と共に、飛びかかってきた黒狼の首がポロリと落ちた。 「(え?)」 さらに、シルヴィが踊るように回転すると、周囲に銀色の斬撃が嵐のように巻き起こった。 大蛇は輪切りにされ、カマキリは鎌ごと両断される。 糸じゃない。あれは**「見えない鋼鉄のワイヤー」**だ。


「(母ちゃん、強すぎだろ…)」 俺が呆気に取られている間に、シルヴィは半数を瞬殺。 残った敵を、進化した7匹(成体)が蹂躙していく。 ポニーサイズになった彼らは、狼を力ずくでねじ伏せ、大蛇をチームワークで引きちぎる。


「(……俺、いらなくないか?)」 俺は一服しながら、眷属たちの無双劇を眺めていた。


戦闘終了。 あたりには魔物の死骸の山(=宝の山)が築かれていた。 俺は慌てて駆け寄り、煙で浄化してアイテムボックスに放り込んでいく。 「(素材ゲットだぜ。…おっと、その前に)」


(ピロリン♪) ファンファーレが頭に響く。


《経験値獲得により、レベルが上がりました》 《ヤマグチ・タケル:Lv.18 → Lv.21》 《シルヴィ:Lv.15 → Lv.18》 《眷属(7体):Lv.1(成体) → Lv.5》 《永劫の道具エターナル・ギアの熟練度が規定値に達しました》 《『無限補充のアッシュモーク』が Lv.3 → Lv.4 にレベルアップしました》


「(よしよし、全員レベルアップだ。タバコも道中の浄化で経験値を稼げたみたいだな)」 俺のレベルも上がり、さらに身体が軽くなった気がする。 シルヴィや子供たちも、艶やかな輝きを増しているようだ。


「みんな、よくやった! 最高の初陣だ!」 俺が褒めると、シルヴィは嬉しそうに体を揺らし、デカくなった7匹たちは俺に擦り寄ってきた(ちょっと重い)。


装備のテストも、チビたちの進化も、シルヴィの実力確認も完了した。 戦力は十分すぎるほどだ。 「(これなら、もう少し奥まで行っても大丈夫そうだな)」


俺たちは意気揚々と、さらに上流――盾が流れてきた方角へと足を進めた。 この先に待ち受ける「出会い」など知る由もなく。


(第14話 完)

お読みいただきありがとうございました。


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