第5話 初めまして、アネリルスさん
1日明けて―――
あたしらはまだ暗い洞窟の中を歩いていた。景色は変わり映えしないし、太陽が無いから今が昼か夜かも分からない。唯一変化するのはモンスターが現れた時だけだ。まぁ、あたしの出番は無いんだけどね。だって、2人が全部倒してくれるから。
「グルガァァァァ!!!」
「どけ。”炎弾時雨”!」
「ガガァァァァァ!!」
「邪魔っすよ。”双剣舞踊斬”!」
フォルとルーンが、モンスター相手に無双してる。何でこうなったかっつうと、あたしに任せきりの状況が2人としては腑に落ちなかったみたいで、「自分達にも戦わせてほしい」ってせがまれちゃってさ。その気持ちを無碍にするわけにもいかないし、2人の力も気になったから任せてみたら……一方的な殲滅劇が始まっちゃったわけですよ。
「グルァァァァ!!」
「トカゲ風情が吠えるな! ”獄炎波動”!」
「ガ、ア………!!」
今倒されたのは赫竜。フォルの話じゃ上位の竜種で、この迷宮で最強のモンスターなんだって。レベルは8000あるし、しかも炎に高い耐性を持ってたみたいだ。なのにフォルってば、それを一瞬で、しかも炎の攻撃で倒してんの。ルーンが倒してる奴らもレベル7000近い奴ばっかだし、やっぱ結構強いじゃんこの2人。
「む? 雑魚でも少しは役に立つじゃないか。久しぶりにレベルが上がったぞ」
「俺っちもっす! レベル8800になったっす!」
「おれは9200か。やはり上がり幅では負けてるな」
モンスターの襲来が治まった所でステータスを確認して、2人が思い思いの言葉を口にする。レベルが上がる程、レベルアップに必要な経験値が増えるのはゲームと同じみたいで、より強い敵を倒してたはずのフォルの方が、レベルの上がり幅が小さかった。
「あんな高レベルのモンスターを倒して200しかレベルアップしないなんて……レベル9999になるのって、結構大変なんだね」
「そうだとも! 本来レベル1から一気にレベル9999になるなんて、そんなことは絶対にありえねぇんだよ! なのにそれを可能にしちまうとは、本当にギフトの力ってのは計り知れねぇな」
「なんせ、理を逸脱した力っすからね。それぞれ力に強弱はあっても、どれも侮れない力を持ってるっすよ。ましてや一華さんみたいにギフトが2つもあれば、相乗効果で戦闘能力はさらに爆上がりするっす。だから一華さんも、相手がギフト持ちの時は、レベルで勝ってても油断しちゃダメっすからね?」
「ギフトがあろうが無かろうが、油断はしないよ」
一瞬でも油断するようなことがあったら、光希にこっぴどく怒られちゃうからね。
「………光希」
「友人が心配か?」
「当然でしょ? ただでさえ光希達が送られたのは、モンスターがわんさかいる世界なんだよ? おまけにクラヴィアのこともあるし、心配でたまんないよ」
「確かに。クラヴィアが絡んでいるとなると、油断はできねぇな。平気で約束を反故にするような奴だし」
それはあたし自身、身をもって知ってる。アイツは光希と「役目を終えたら皆を元の世界に返す」って約束したはずなのに、あたしをこんな所に追放した。アイツは最初から、約束なんて守る気は無かったんだ。
「昔はそんな奴じゃ無かったんすけどね……」
「え? 何か言った?」
「いや、何でもないっす。それよりも、ほら! ようやく見えて来たっす。あれが、アネリルス様のいる部屋っす!」
何か、はぐらかされた気がするなぁ。まぁ良いや。それよりも今は、目の前の大きな扉だ。
高さは15mくらい。見るからに重厚な金属製の扉だ。扉だけでも凄い威圧感がある。でも、扉以上に威圧感があるのは、扉の奥から感じるこの気配だ。『気配察知』を使わなくても分かる、濃密な強者の気配。これは……ヤバい。魔神最強ってのも頷ける。
「この奥に、アネリルスさんが……」
「あぁ、早速入ろうぜ」
「あ、ちょっと待って!」
「どうしたっすか?」
「その……この格好のまま会うのは、不味くない?」
今のあたしは制服姿だ。それは別に良い。問題は、この制服が血と汗で汚れてることだ。昨日からモンスターを倒しながら進んで来た結果、制服はモンスターの返り血でドロドロ。しかも汗を掻きまくったせいで、汗臭さまで追加されてる。とても初めての人に会うのに相応しい格好とは言えない。
「ソイツは心配無用だぜ、一華殿。ちょっと失礼して、"除去"」
フォルが魔法を発動すると、体が光に覆われて、アタシはシャワーを浴びる時のような快感を覚えた。光が収まると、あたしの全身がお風呂上がりみたいにさっぱりして、制服も新品みたいに綺麗になってた。どうやらあたしの全身から、汚れが根こそぎ落とされたみたいだ。
「へぇ、こんな便利な魔法もあるんだ」
「モンスターと戦った直後にアネリルス様と会わなきゃならない時もあるからな。即座に汚れを落とせるようにしたいと思って、俺が開発したのさ」
「オリジナル魔法ってこと? やるじゃん!」
「お、おう。ありがとな。んじゃ改めて、アネリルス様のお部屋へ入るぞ」
フォルが前に進み出て、扉を2回叩く。
「―――誰?」
扉の向こうから女の人の声が聞こえてきて、フォルがそれに答える。
「フォルです。ルーンと共に、只今帰還致しました」
「やっぱり、勘違いじゃ無かったか。てっきり死んだと思ってたのに」
いきなり失礼だなこの人。2人共ピンピンしてるっつーの。
……1度飲み込んだけど。
「実はちょっとしたアクシデントで、別の空間に飛ばされてまして」
「あぁ、だから気配が消えたのか。んで、そのお嬢さんは?」
あっちも気配で探ってきたか。しかも、あたしが女だってことも分かってるみたいだ。あたしは声を掛けられるまで、相手が男か女かも分からなかったのに。
「は、初めまして。戦場一華です。アネリルスさんにお尋ねしたいことがあって、ここまで参りました」
「アタシに? ふぅん……」
き、興味無さそう……。大丈夫かな?
「まぁ、扉の前で立ち話も難でしょう。とりあえず入って」
重厚な扉が、「ズズズッ!」と大きな音を立てながら開いていく。
「さぁどうぞ」
「お、お邪魔します!」
あたしは少し緊張しつつも、フォル達の後について部屋に入る。部屋は滅茶苦茶広くて、東京ドームと同じくらいの広さがあった。その大部屋を突っ切るように、扉から部屋の一番奥まで真っ赤な絨毯が敷かれていて、その両サイドで鎧を身に着けた兵士達が隊列を組んでいた。兵士達は、頭に黒い角が2本生えていて、背中にはコウモリのような黒い翼が2枚生えてる。感覚からして、全員レベル2000には至ってそうだ。
部屋の一番奥には二段に分かれた高台みたいなのがあって、中の段にはこれまた悪魔っぽい見た目の女性が2人いる。気配からして、2人の強さはルーンと互角か少し上回ってるくらいだ。なかなかの強者なのは間違いない。そして上の段には玉座みたいなものがあって、そこに燃えるような赤い髪をした軍服の美少女が、肩肘をついて鎮座してた。この圧倒的な気配、間違いない。あの人がアネリルスさんだ。
「ついて来てくれ」
あたしはフォル達に続いて、絨毯の上を歩いてアネリルスさんの元へと向かう。歩き始めた途端、この部屋の全員から視線が集まっているのを感じた。懐疑的な視線や好奇の視線。とにかく色んな視線がアタシに向けられてる。居心地が悪くてしょうがない。
でもそれ以上に、緊張感が半端じゃない。だって、下手すりゃここにいる全員を敵に回すことになるんだよ? アネリルスさんはもちろん、中段にいる2人も強いし、隊列の中にも油断ならない猛者が最低100人はいる。怒らせたりしたら、とんでもなく厄介なことになるね。
そんな緊張感の中、あたしは前へ、前へと進んで、かなり歩いた所でようやく高台の麓まで辿り着いた。そして高台に備え付けられた階段を上って、中段まで来た所で2人に止められる。
「ここから先はアネリルス様の領域だ」
「俺っち達はここまでっす」
そう言ってフォル達は、同じ段にいた悪魔達の隣に移動する。それを確認すると、アネリルスさんがゆっくりと立ち上がって、その場にいた全員が跪いた。
(ヤベっ、あたしもか!)
自分もやった方が良いと思って、あたしは周りの人達を真似して片膝を着く。コツ、コツ、と上から足音が近付いてくる。冷や汗が止まらない。はっきり言って怖い。でも、光希達を助ける為にも、ここで退く訳にはいかない!
「……アタシの威圧を受けて倒れないだけでも大したものなのに、まさか怯みすらしないなんてね。やるじゃん」
「あ、ありがとうございま―――」
「ま、アタシ程じゃないけどね」
……認めた上でマウント取ってきやがった。
えっ、そういうキャラなの? そういうマウント取りがちのウザい系キャラなのこの人?
「フォル、ルーン。まずはここに至るまでのことを教えて」
「「はっ!」」
フォル達は、あたしが迷宮に飛ばされてから、ここに来るまでのことを話し始めた。あたしがフォルとルーンを返り討ちにしたこと。その時にレベルをカンストさせたこと。そしてフォルとルーンに導かれて、あたしがここまで来たこと。ギフトの詳細を除いて、それ以外の全てを包み隠さず話した。
「まさか、アンタ達を2人纏めて倒せる人間がいるとはね」
「油断や焦りがあったとは言え、まさかレベル1の人間を相手に、あれほどまでの完敗を喫するとは思いませんでした」
「レベル9999になった今となっちゃ、四天王が束になった所で手も足も出ないっすよ」
「「………」」
同じ段に居た女子2人の気配が、僅かに揺れた。多分この2人も四天王で、「4人でもあたし1人に勝てない」って言われてプライドが傷ついたんだと思う。
「ビアンカ、レビィ。殺気を向けるのは止めておけ。目的の障害になると判断したら、この人容赦しねぇぞ?」
「叩き潰せば良いだろ。こんな小娘、私が軽く捻ってやる」
「温い……生け捕りして、拷問、掛ける。人間、醜くて、脆弱。我ら、妖魔族の足蹴、及ばない。それ、分からせる。そして殺す」
いや殺意マシマシとか止めてくれません?
「それが無理だって言ってるんすよ。俺っち言ったっすよね? この人、レベル9999なんすよ? おまけにギフト持ちで胆力もあるし、バトルセンスも半端じゃないっす。レビィはともかく、力押ししか能が無いビアンカじゃ絶対に無理っす」
「はっ! 関係無いね。レベル差があろうがギフトがあろうが、所詮は人間だ。私達が負けるはずがない」
「その通り。どうせ、お前ら、油断した。お前ら、弱い。それだけ」
「んだと、この野郎!」
「喧嘩売ってるんすか?」
ち、ちょっと? 何かあたしの強さ議論で、殺し合いが始まりそうなんですけど!? あたしはただ、アネリルスさんに "怪物" について教えてもらいたいだけなのに、何でこんな展開になんのさ!?
「あ、あの~、喧嘩は止めて―――」
「黙れ人間。誰が喋ることを許可した?」
「お前の言葉、いらない。お前、ここで死ぬ。私達、お前、殺す。これ、決定事項」
そ、そこまで拒絶しなくても……
「……ほんとは、足りない」
「あ? 何がだよ?」
「コイツ、殺すだけ、足りない。知り合い、家族、友人、皆殺す」
「「っ!!?」」
――――――――――は?
「ちょっ、バカお前―――」
「コイツ、目の前、引きずり出して、命乞い、させて、無様に、殺したい。そして、死体、コイツに、食わせたい。でも我ら、この監獄、出られない。ざんね、っ!!!!!!!?」
『ッゥ!!!!!!!!』
言葉の意味を理解したあたしは、思わず本気で殺気を放ってしまった。フォルとルーン、それにビアンカ、レビィと呼ばれた2人が、真っ青になって尻餅を着く。高台の下にいる人達も、あたしの殺気に怯えたり、中には気を失って倒れてる人もいた。関係無い人を巻き込むのは良くない。だから殺気を止めなきゃって思うけど、止められない。あまりの怒りに、理性が吹っ飛んでしまったからだ。
「―――誰を殺すって? レビィさん」
「ヒィッ!!?」
「光希を、あたしの親友を、あたしの目の前で殺すって? "でーもん" だか何だか知らないけど、あたしの親友を手に掛けるとか、ふざけないでくれる?」
「あ、あれ、冗談! 本気、違う!」
「冗談で済むと思ってんの?」
「ご、ごめんなさい! ごめんなさい! もう、命、狙いません! お前、いや、あなた、認めます! だから、許し―――」
「謝るくらいなら、最初からそんなふざけたこと抜かすなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「………ッ!!! …………ッ………!!」
あたしは、出来るだけレビィ1人に対象を絞りつつ、感情任せに殺気を放った。あたしの本気の殺気を受けたレビィは、白目を剥いて、泡を吹いて倒れてしまった。
やっちゃった。まさかお話に来た相手の部下を、殺気で気絶させちゃうなんて……流石に短気が過ぎる。でも、後悔なんてしない。光希に危害を加えようとする奴を、野放しにするなんてありえないもんね!
「う、嘘だろ!? レビィ様が!?」
「殺気だけで昏倒するなんて………!」
「いったいどんな化け物なんだ、あのガキは!?」
下にいる兵士達から色んな声が上がるけど、ほとんど耳に入らない。今はそんなことより、確認しておかないといけないことがある。
「ビアンカさん」
「は、はい!!!!」
「あなたはどう?」
「ど、どうって、何が?」
「光希に手を出すつもりなのかって聞いてんの」
「そ、そそそ、そんな訳ないだろ!?」
「……本当に?」
「こ、こんなの見せられて、そんなこと言えるはずが―――」
「ストップ、ストーーップ!! そこまで!!」
アネリルスさんの声が、部屋全体に木霊する。そしてこの部屋にいる全員の視線が、アネリルスさんに集まった。不思議なことにその声を聴いた瞬間、アタシの中で渦巻いていた烈火の如き怒りがスッと退いて、冷静な思考を取り戻すことができた。
「医療班。レビィを医務室に」
『畏まりました!』
白衣、或いはナース服を着た堕天使と妖魔族が現れて、レビィを担架に乗せるとそのまま飛んで行った。それを確認したアネリルスさんは、あたしの方に向き直って話しかけてきた。
「まったく、派手にやったね」
「……すいません。あなたの部下を手を上げてしまって……」
「あぁ、気にしないで。今のは完全に、レビィの自業自得なんだから。というかアタシの方こそ、部下の非礼を詫びさせて欲しい。ほら、ビアンカも!」
「す、すみませんでした……」
アネリルスさんとビアンカが、揃って頭を下げてくる。さっきまでの傲慢な態度と違って、ビックリするくらい誠実な対応だ。ここまで真摯に謝ってもらったんだから、これ以上怒るのは野暮だね。
「こちらこそ、改めてレビィさんのこと、ごめんなさい」
「さっきも言ったけど、完全にあの子の自業自得だから、気にしないで」
「そう言って貰えると助かります」
「それで、アンタがわざわざアタシの所へ来た理由だけど……例の "怪物" について聞きたいんじゃない?」
「っ! どうしてそれを?」
「アンタの前にも、"怪物" のことを聞きに来た人間が、何人かいたんだよ。皆 "怪物" にやられちゃったけど……」
「…………」
それはつまり、未だ誰一人として "怪物" に勝ててないってことだ。
……アネリルスさんでさえも。
「アンタも最下層に行って、迷宮核を手に入れたいって口でしょ?」
「そうです。その為にも、あなたの持っている "怪物" の情報を教えて欲しいんです」
「あ~、それは無理」
「……え?」
真っ向からの拒絶に、あたしは一瞬反応が遅れた。
「ど、どうしてですか!?」
「アタシの知ってることを教えた所で、アンタじゃアイツに勝てないよ。勝てないと分かってる奴に情報を与えた所で、何の意味もありゃしない。そういう無駄な行為、アタシ好きじゃないの。だからアイツについて話す気は無いし、なんなら最下層への扉も開くつもりは無い。そーゆーわけだからさ、悪いけど諦めてくれる?」
「諦める? ……アタシに、親友の命を諦めろと?」
「アンタの目的がそれなら、そーなるかな。だって、戦ったところで勝てやしないんだよ? しかも負けたら、即刻人生終了。ならそんな危ないことしないで、スッパリ諦めちゃった方が楽じゃない? ここでの暮らしも、慣れればそんなに悪くないよ? そうだ! アンタ強いし、アタシの部下にしてあげるよ。それも厚待遇で! 守護モンスターや上階の連中とのいざこざはあるけど、面倒くさいこと全部忘れて、気ままに暮らせるよ。どう?」
「………」
光希を見捨てろって? そんなこと、出来る筈が無い。ついさっき光希のことであれだけ怒ったばかりなのに、こんな提案をしてくるなんてあたしのこと嘗めてるのかと、そう思った。でも、どうもそうじゃないみたいだ。確かに内容はふざけてるし、言動も軽い。けど、目だけは大真面目だった。まるで、何かを訴えかけてるみたいに。
―――ま、いずれにしても諦めるつもりは毛頭無いけどね。
「アネリルスさん。あなた、あたしじゃ "怪物" に絶対勝てないと、そう思ってるんですよね?」
「うん、そーだよ。アタシでも無理なのに、アンタじゃアイツに勝てる訳が無い」
「だったら、あたしがあなたに勝ったら、少しは見直してくれますか?」
『っ!!!!?』
部屋全体がざわめき出す。フォルとルーンなんて、顔を真っ青にしてアタシに視線を向けてる。
『あんた何考えてんだ!? 今すぐ取り消せ!!』
『いくら一華さんでも無茶っすよ!!』
2人の目線がそう訴えてくる。でも、もう決めたことだ。2人には悪いけど、止まるつもりは無い。
「へぇ、面白いこと言うじゃん? アンタ、このアタシに勝つつもり?」
「言っときますけど、真面目です。ついでに言えば正気です。あなたはあたしに協力してくれない。それは、あたしが弱いから。”怪物” に対し、万に1つも勝ち目が無いから。だったらあたし、あなたを倒します! あなたに勝って、万に1つは可能性があると証明します!」
「…………」
しばらくの間、部屋が静寂に包まれた。
―――静寂を破ったのは、アネリルスさんだった。
「……今まで色んな奴等を見て来たけど、アタシを魔神最強と知った上で、決闘したいなんて言い出す奴は初めてだよ」
「受けていただけますか?」
「もちろん。ここで逃げたら魔神の名折れ。アタシのプライドを掛けて、全力で相手をしてあげる! その代わり、死んでも後悔しないでね」
「元より死ぬ気はありません。絶対勝ちますから」
「言うじゃん。ボッコボコにしてあげるよ!」
アネリルスさんからもの凄い威圧が放たれる。扉の前で感じてたのとは比べ物にならない、凄まじい重みを伴った本気の威圧。分かってはいたけど、扉の前で感じた威圧は、全然本気じゃなかったんだ。でも、こんなんで退いたりしない。あたしは負けじと威圧を放ってやった。威圧同士がぶつかった途端、そこを中心に空間が軋んで部屋が揺れ、天井からパラパラと粉が降り始めた。
「……ここじゃ皆を巻き込むね」
「ですね。どこか良い場所あります?」
「決闘場があるよ。着いて来て」
「分かりました」
「そうだ、アンタ達。観戦するのは別に良いけど、命の補償はできないからね!」
『はっ!!』
こうしてあたしは、アネリルスさんに認めてもらうべく、彼女と決闘することになった。




