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第15話 二柱の契り

「んん………」


戦いから2日経って、改人くんは漸く目を覚ました。1000年も扱き使われた筈なのに、2日で目覚めるなんて元気だね。


「おはよう、改人くん」

「おはよう、一華さん………」


寝ぼけ眼を擦りながら、改人くんは体を起こす。


「良く眠れた? どっか悪い所とか無い?」

「うん………久しぶりに、ぐっすり眠れた。憑りつかれている間碌に眠れなかったから、今はすっごく気分が良い」

「そっか」


2日前、あたしは仲間達と一緒にユガエルと戦って、その流れで改人くんを助けた。ユガエルは消滅させたけど、長い事操られた影響か改人くんは中々目を覚まさなかった。だからこの2日間、あたし達は交代しながら改人くんの傍に居続けた。そんで、丁度あたしが看病してた時に、改人くんが目覚めたって訳。


「一華さん。助けてくれて、本当にありがとう。この恩は一生忘れないよ」

「良いって、良いって。当然の事をしたまでだよ!」

「その当然の事を本当に出来た人は、一華さんだけだよ。凄いよ一華さんは!」

「そ、そうかなぁ?」

「うん! 本当に凄い! よっ! ”一()様”、日本一!」

「もう! そんなに褒めても何も出ないよぉ~!!」


その後しばらく褒め殺しにされて、顔が茹で上がったみたいに熱くなった。流石に恥ずかしかったよ……(-_-;)

でも、あそこで見捨ててたら、こんな風に改人くんが笑う事も出来なかったって考えると、頑張って良かったって思う。助ける事が出来て良かった。本当に良かった……!


「あ、ところでさ。君が寝ている間に服を改造させてもらったんだけど、どうかな?」

「え? ……あ、本当だ! 服が変わってる!」


元々改人くんは、クラヴィアみたいなローマの人を彷彿させる服を着てたんだけど、ボロボロになっちゃってたから ”厄災兵器(カラミティ・アームズ)” に改造したんだ。今の改人くんは、アネリルスと同じ大将用(男性用)の軍服を着てて、幼い見た目とアンマッチな状態になってる。

………普通の服にしないのかって? 出来たらそうしてるよ。アネリルスが予備の服を持ってたのは良かったけど、全部軍服でさ。流石に軍服は嫌がると思って、あたしが『厄災変化』で普通の服にしようとしても、悲しいかな、あたしの発想力が乏しすぎて良い感じの服のデザインにならなくて、結局軍服を着せるしかなかったんだよ………。


「その、ごめんね改人くん。もしイヤなら、後で他の服を―――」

「かっこいい! これ、本当に着てて良いの?」

「え? う、うん。他に服も無いし」

「ほんと!? ありがとう!」

「き、気に入ってもらえたなら、何より………」


まぁ、よくよく考えてみると、軍服を着た少年ってのも割とギャップがあって、正直結構良いかも。

………あ、変な意味じゃないからね? 断じて違うからね!?


「っ! そうだ! そう言えば他の人達は? あの人達にも、お礼を言わなくちゃ!」

「あ~それがね。丁度今、席を外してるんだよ」

「何しに行ってるの?」

迷宮核(ダンジョンコア)を探してる。でも、なっかなか見つかんないんだよね………」


あたしらは交代で看病しながら、迷宮核(ダンジョンコア)の捜索も行ってた。それこそが、この監獄から脱出する唯一の手掛かりだからね。ところがこれが見つからないんだ。フォルから聞いた話じゃ、間違いなくこの最下層に迷宮核(ダンジョンコア)があるはずなのに……。


「その迷宮核(ダンジョンコア)って、もしかしてこれ?」

「っ!!!?」


いきなり改人くんの胸のあたりから、赤い水晶のような球が出てきた。


「ち、ちょっと見せて!」


あたしは早速、赤い水晶を『鑑定眼』で見てみた。





・ 『終末地獄(アビス)迷宮核(ダンジョンコア)

迷宮(ダンジョン)ランク:神域(ゴッデス)

迷宮皇:境田改人

迷宮王:不在

階層守護者:アネリルス・etc…




何か色々情報が載ってるけど、間違いない。本物の迷宮核(ダンジョンコア)だ!


「改人くん、どうやってこれを?」

「ここに来た時にユガエルが見つけて、それからずっと僕の体に仕舞ってたんだ」

「体に仕舞った? どういう事?」

「文字通りだよ。ユガエルにこの水晶を押し当てられたと思ったら、水晶が僕の中に入っちゃったんだ」


そういえばこの水晶、いきなり改人くんの体から出てきてた。ってことは改人くんの言葉通り、水晶は改人くんの体に収納されてたって事か。道理で見つからない筈だ………。


「っていうか、そんな物入れてて大丈夫だったの?」

「全然平気だよ! それより一華さん、これ欲しいの?」

「うん。それが無いと、ここから出られないからね」

「………じゃあさ、僕のお願いを1つ聞いてもらっても良い?」

「お願い?」

「僕の……お姉ちゃんになって欲しいんだ!」

「………へ?」


き、聞き間違いかな? 今、「お姉ちゃんになってほしい」って言われた気がするんだけど? まだ告白された事も無いのに。


「一華さんの一番近くで、一華さんを支えたいんだ! お願い! 僕を弟にして!」


聞き間違いじゃ無かった、けど………ほぼプロポーズじゃん!


「ま、まぁ、あたしで良ければ?」

「っ!!! ありがとう! よろしくね、お姉ちゃん!!」

「うわぁ!?」


いきなり飛びついて来た改人くんに、不意を突かれたあたしはいとも簡単に押し倒された。


―――拝啓。父さん、母さん、そして光希。

お元気ですか?

戦場一華。16歳。

兄弟姉妹いない歴=年齢。

彼氏いない歴=年齢。

そんなあたしですが、異世界で出会った男の子から弟に立候補(プロポーズ)されて、姉弟になりました。

………何この展開。



*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*



あたしが ”念話(コール)” で迷宮核(ダンジョンコア)が見つかった事を伝えると、少しして皆が戻って来た。


「あ、改人くんが起きてる!」

「目を覚ましたのか」

「もう! 心配させてくれちゃって」

「無事、何より」

「良かったっすね一華さん!」


皆も改人く―――改人が目を覚ましたのを喜んでくれた。


「皆さん。この度は本当に、ありがとうございました。改めまして、僕は境田改人。この恩は、いつか必ず返します」

「そう畏まんないでよ。アタシらはただ一華を手伝っただけなんだから」

「それでも、皆さんが僕の為に力を貸してくれた事に変わりはありません。本当に、ありがとうございました」


そう言って、改人は頭を下げた。皆も満更でもないのか、頬が少し緩んでいた。


「ところで、何でそんなイチャコラしてるっすか?」

「違うから。断じて違うから。あたし、10歳の男の子に手を出すような趣味持ってないから」


とは言ったものの、説得力は無い。今の改人はあたしに抱き着いて、思い切り頬ずりしてきてる。傍から見たら、バカップルにしか見えないよね。


「やだな~、僕は一応1010歳だよ? 手を出しても問題な―――」

「君はちょっと黙ってて、話が拗れる。それと、いい加減離れなさい」

「む~、お姉ちゃん(・・・・・)のいけず~!」


引き剥がそうとしても、凄い力で抱きつかれてて全然引き剥がせない。………改人って、こんな奴だったかなぁ?


「お姉ちゃん? お姉ちゃんってどういう事?」

「ア、アネリルス、これには事情が……!」

「何を ”浮気現場を見られた夫” みたいな反応してんの? 別にそんないかがわしい事してるわけじゃないでしょ?」

「そりゃもちろん!」

「それで、何でいきなり姉弟になった訳?」

「改人くんに『お姉ちゃんになってほしい』ってせがまれて、それで、つい勢いで………」

「姉になったと」

「うん……」


話を一通り聞いたアネリルスは、真剣な表情であたしに問いかけて来た。


「ねぇ一華。誰かの姉になるって事は、覚悟が必要だよ? お父さんもお母さんもいない以上、アンタが改人くんを養わないといけない。何より、彼の行動の責任は、アンタにも発生するからね? それを分かった上で、姉を続ける覚悟はある?」

「もちろん。勢いとはいえ、1度姉になるって言ったんだから、この子の事はあたしが責任持って面倒見る。この子が何か間違いを犯したら、その時はあたしも一緒にその責を負う!」

「……改人くんが危険な目に遭うかもしれない事は考慮してる? この先アンタが歩むのは、茨の道だ。危険に飛び込んで、それが改人くんに飛び火するかもしれない。それを分かってるの?」

「知ってる。でも、そんな事はさせない。絶対に!」

「……本気なんだね?」


アネリルスが睨むようにあたしを見ながら聞いてくる。あたしはただ黙って頷いた。その時だった。


「ぼ、僕だって! お姉ちゃんに守られてばかりじゃないよ!」


不意に、改人が立ち上がって大声を上げた。


「そもそも、僕が一華お姉ちゃんの弟になったのは、恩返しがしたかったから。守って貰って、足を引っ張ったりしたら意味が無い。僕だって戦うよ!」

「改人………」


確かに、今の改人の力は凄い物だ。その力を借りられたら心強い。





・境田改人

種族:天神

レベル:X

権能:【境界】

   【歪曲改変(ディストーション)

美徳(ヴァルチュ):【勇気(ブレイブ)

    【忍耐(パティエンス)




ちゃっかり【歪曲改変(ディストーション)】を権能に進化させてるし、ユガエルの支配に耐えたのと、ユガエルと戦い続けた功績で、【忍耐(パティエンス)】と【勇気(ブレイブ)】まで獲得してる。レベルもXだし、ポテンシャルは充分だ。でも―――


「改人、良く聞いて。確かにあんたは強い。けど、力が強いのと、戦えるのとは違う。あたしに協力するって事は、今度こそあんたの手で人を殺さなきゃいけなくなるんだよ? あんた、その覚悟があるの?」

「もちろん」

「それが無いなら――――え? 即答?」

「お姉ちゃん。今僕が一番怖がってる事って、何だと思う?」

「そりゃあ、またユガエルみたいな奴に憑りつかれて、無理矢理戦わされる事じゃないの?」

「もうそんなのちっとも怖くない。もしまたそうなっても、僕にはお姉ちゃんがいるから。本当に怖いのは、お姉ちゃんがいなくなっちゃう事だよ」

「え、あたし?」


意外な答えだ。


「何となくだけど、お姉ちゃんは放っておくと、どこか遠くに行っちゃいそうな気がする。僕を助けてくれた人が、こんなに優しい人が消えちゃうなんて、そんなの嫌だよ。耐えられないよ………!」

「ちょ、何をそんな、縁起でもない」

「いや、言いたい事は分かるぞ」


おっと? 何でフォルが助け船を出して来るのかな?


「俺達は元々とある神にお仕えしていた。俺の全身全霊を捧げるに申し分ない、素晴らしい方だった。だがな、その神は世界を守る為に、己の命を犠牲にされてしまわれた」

「っ!?」

「今でも思う。どうしてあの時、俺がお傍にいられなかったのか。俺があの場にいたら、少しは未来が変わったんじゃ無いかと。悔やんでも悔やみきれない………!」

「俺っちもっす! あの時のあの人の顔、これから死にに行く奴の顔だったっす! あの人が死のうとしてる事は分かってたのに! 何で、何であの時止められなかったんだ………!! 畜生!!」


ルーンが大粒の涙を流しながら、床に蹲った。ルーンだけじゃない。他の四天王のメンバーも泣き崩れて、アネリルスまですすり泣いている。


《主らのせいではない。あの方が亡くなったのは、我々の落ち度だ》

《一番近くにいたのに、私達はあの人を止めきれなかった。本当は足を引っ張ってでも止めるべきだったのに………!》


ケラウノスとグングニルまで暗くなっている。特にケラウノスなんて、いつもの横柄な態度が鳴りを潜めて、本気で落ち込んでるみたいだ。


………フォルの言いたい事が、なんとなく分かった。

多分ここにいる皆は、同じ神に仕えてたんだ。でもその人が亡くなって、それを止められなかった事を今でも悔やんでる。そして――――あたしもその人と同じように、皆に悔いを残して死ぬ可能性が高いと、皆はそう思ってる。改人はそれを、本能的に察して恐れてるんだ。トラウマを上回る程に。


「一華殿は、あの方と似ている部分がある」

「だからこそ、いつか死んじまうんじゃないかって思っちまうっす。改人君もそうなんすよね?」

「………うん。だからこそ、僕はお姉ちゃんと一緒に戦いたい。お姉ちゃんが、僕が殺して来た人達みたいに、無惨に殺されるのなんて見たくないんだ! お姉ちゃんは絶対に死なせない! 止めたって無駄だよ。無理矢理にでもついて行くからね!!」


どうやら本気みたいだ。本当は、脱出したらどこかに拠点でも構えて、そこに改人を住まわせておくつもりだったんだけど………それは無理そうだね。


「はぁ………分かった。確かにあたしも、あんたが一緒なら心強い。共闘を許してあげるよ。ただし、少しでも覚悟が揺らいだと判断したら、即留守番だからね」


もちろん、姉弟の縁は切らない。留守番させてる間も、手紙のやり取りと仕送りは必ず続ける。あくまで戦線から遠ざけるって話だ。覚悟が揺らいだ奴ってのは、どれだけ力を持ってても、とことん弱くなるからね。大事な弟を、そんな状態で戦場に送るような真似は出来ない。


「お姉ちゃん………! 約束だよ? 抜け駆けは許さないからね!」

「そっちこそ、あたしを守るって言いきったんだから、守られてばかりになんないでよね?」

「もちろん!」


あたしは改人と指切りをした。


「話は纏まったね」

「うん、待たせてごめんねアネリルス」

「全然。それよりも、迷宮核(ダンジョンコア)はどこに?」

「ここです」


再び、改人が胸の中から赤い水晶を取り出す。アネリルスはそれについてはスルーして、迷宮核(ダンジョンコア)をまじまじと見つめた。


「これが迷宮核(ダンジョンコア)………! これで外へ出られる!」

「ここまで長かったけど、ようやく光希を探しに行けるよ! それじゃあ早速―――」

「ちょっと待って! その前に、一緒に連れ出してほしい奴らがいるんだ。おーい皆! アタシの言った事、嘘じゃなかったでしょ? さっさと出てこーーーーい!!」


アネリルスが誰もいない虚空に向かって叫ぶと、幾多もの魔法陣が作られて、何千何万もの妖魔族(デーモン)や堕天使が姿を現した。どいつもコイツもレベルが高い。しかも良く見ると魔神も混ざってる。端から見ると世界の終末にも見えそうな、恐ろしい光景だ。


「えっと、アネリルス? この人達は?」

「アタシの………仲間かな? それはともかく、コイツらも一緒に連れてってほしいんだ!」


そう言って、アネリルスは笑みを浮かべた。

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