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第12話 「なんだ雑魚じゃん」と、思ったら……?

遂に ”怪物” との直接対決に突入した訳だけど、ハッキリ言って大した事ない。だって今のあたし達は、権能のお陰でアイツの攻撃が効かないんだもの。


「我を生き地獄に送るなど片腹痛いわ! まずは取り巻きの有象無象、貴様らから駆除してやる!」


そう言うと、ユガエルは近くにいたレビィに襲い掛かる。腐ってもレベルX。その速度は半端じゃない。レビィのレベルは9000あるらしいけど、それでも多分目で追うのも難しいと思う。

―――ま、だから何だって話なんだけど。


「学ばない奴。お前、本当に、”怪物”?」


レビィは避ける素振りも見せないで、交差させた腕で真正面からユガエルの拳を受け止めた。レビィの立ってた場所が窪んでクレーターが出来たけど、”厄災兵器(カラミティ・アームズ)” の身体強化の補助もあって、レビィは無傷だった。


「バカな!? 貴様、我の拳を受けて、何故平然としていられるんだ!?」

「お前、敵。情報、渡さない。それより、お返し!」

「っ!!」


今度はレビィの攻撃。手にした杖の先端をユガエルに向けると、白いエネルギーの球が出来て、そこから極低温の波動が打ち出された。


「”凍結波動(フリーズバースト)”」

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


レビィには、ギフト【氷獄世界】がある。アネリルスから魂の欠片を貰って覚醒したみたいで、これを使うと当たり一面を一瞬で氷漬けに出来るんだって。で、その力を一点に集中させたのが、さっきの ”凍結波動(フリーズバースト)”。レベルXと言えど、諸に食らえばただじゃ済まない。

そんな、凍てつく白い波動を諸に食らって、ユガエルは体のあちこちを氷漬けにされて吹っ飛ぶ。それに合わせるようにビアンカが飛び出して、ユガエルの真上まで飛ぶ。


「”暴風鉄拳(ストーム・スマッシュ)”!」


ビアンカの右手に暴風が纏わりつく。そしてビアンカはその暴風を纏った拳を、ユガエルの顔に全力で叩き付けた。


攻撃発動地点にソニックブームが発生して、ユガエルはそのまま音速で真下に落下。着地の衝撃でまた地面にクレーターが出来た。


「かはっ……!」

「おいおいどうした? 我々を雑魚だの虫けらだのと、散々イビっていたくせにこの程度か?」

「な、嘗めるなよ!? ”生の否定(ライフ・キャンセラー)”!!」


ユガエルの右手から波動が発生して、ビアンカに襲い掛かる。『生きる』事を否定する力を、波動にして発する最終奥義。まさかいきなり使ってくるなんて、相当焦ってるみたい。もちろん、効かないけどね。


「今何かしたか?」

「な、そんなバカな!? 不死鳥(フェニックス)すら復活も許さずに殺せるのに!」

「生憎、私達は不死鳥(フェニックス)じゃない。はぁ!」

「ぐぎゃぁぁぁぁ!!!」


ビアンカはユガエルの戸惑いも軽くあしらって、今度はユガエルのお腹に拳を叩き込む。涙目になりながら悲鳴を上げるユガエルは、見た目が子供なのもあって見てて悲惨だった。


「まだまだ行くぞ! この怪物め!」


ビアンカはユガエルに馬乗りになって、そのままタコ殴りにしようとする。


「”場所の否定プレイス・キャンセラー”! ”怪我の否定(ペイン・キャンセラー)”! 」


けど、流石にユガエルもやられっぱなしじゃない。自分が『そこに居る』事を否定してビアンカから離れた場所に転移すると、今度は自分の『怪我』を否定して傷を治した。いや、治したと言うより、怪我なんか最初から無かった事にした感じだね。次いでに体力も、『消費した』事自体を無かった事にして、完全復活を果たしたみたい。


……あれ、って事はこれ、振り出しに戻った? うーわ、ダッル。ってことはさ、下手にダメージ与えてもそれ全部無かった事にして、何度でも完全復活できるわけでしょ? ダルすぎ。こっちはさっさと倒して、先に進みたいってのに、何してくれてんの?


「ふはははは! どうだ! 我は不死身。すなわち、如何に貴様らが強くとも、我に勝つ術は無い!」

「チィッ、面倒な……!」

「ってかそれ、暗に自分の方が弱いって認めてるんじゃ……?」

「黙れ! どんな手段を使っても、勝てれば良いのだ!」


開き直りやがったコイツ。

でもこれは厄介だな。となると、まずはあの完全復活をどうにかしないとだね。あれを止めるには、その大元になってるギフトの力を止めるか、或いは妨害する事が出来れば………って、そんなの簡単じゃん。


《皆、ちょっと試したい事があるんだけど、良いかな?》

《試したい事? アタシは別に良いけど》

《俺達も問題無い。それで、何をする気なんだ?》

《ふっふっふ、見てて。ケラウノス、ちょっと体だけ貸してね》

《……良かろう》

《あんがとね》


許可を貰って、あたしは背負ってたケラウノスを手に持った。……本当はグングニルと一緒に『厄災収納』に入って欲しかったんだけど、「まだ認めて無いから」って、どうしても入ってくれなかったんだよね。


「これでも食らえ。”暗闇刺突(ダークネス・ショット)”!」

「ぬぐっ……!」


ケラウノスの穂先に黒い力を纏い、『闘魂励起』でブーストを掛けつつユガエルに接近して、ケラウノスを突き出す。槍の先端が左の鎖骨辺りに刺さって、ユガエルは顔をしかめた。

―――でも、それだけだ。


「……? これだけか? こんなひ弱な一撃が、試したかった事なのか?」

「そう。あたしの狙い通りなら、あんたもう終わりだよ」

「ふっ、何を言い出すかと思えば。こんなもの、”怪我の否定(ペイン・キャンセラー)”!」


例のごとく、ユガエルは傷を消そうとする。でも、今度は何も起きない。


「な、何だ? 失敗したのか? ならばもう1度、”怪我の否定(ペイン・キャンセラー)”!」


もう1度発動してみても、やっぱり何も起きない。それどころか、傷口から黒い瘴気みたいなのが溢れだして、ジワジワとユガエルを侵食していく。


「ぺ、”怪我の否定(ペイン・キャンセラー)”! ”怪我の否定(ペイン・キャンセラー)”! ”怪我の否定(ペイン・キャンセラー)” ァァァァ!!!」


流石におかしいと気付いたみたいで、ユガエルは顔を真っ青にして、半狂乱になりながら何度も必死に ”怪我の否定(ペイン・キャンセラー)” を発動する。でも、現実は何も変わらなかった。


「ぐぅ、我が肉体が蝕まれていく……! 何故だ!? 何故傷が消えない!?」

「さぁ? 何でだろうね?」

「ぐぎぎ……!」


種明かししちゃうと、黒い瘴気に付与された『厄災収納』のお陰だ。

権能未満の能力は、どれだけ力を寄り集めても権能に絶対逆らえない。アネリルスみたいに神話級(ミトロジー)を軸に置いてるならともかく、そうじゃないなら柱の無い建物みたいなものだ。


ユガエルの【歪曲改変(ディストーション)】も、強力ではあるけどギフト止まり。さっきの攻撃に付与した『厄災収納』は権能【厄災箱(パンドラボックス)】の力だから、【歪曲改変(ディストーション)】じゃどうにもならないのは当然だ。後はユガエルを収納しちゃえばこっちの勝ちだ。


「止めはよろしくね、アネリルス」

「ありがとう。本当は今すぐ消し去る事だって出来る筈なのに、アタシの為に手加減してくれたんだね。先を急ぐんでしょ? 一発で終わらせるから、ちょっと待ってて」


そう言って、アネリルスはレーヴァテインを高く掲げると、再び自分の全能力をレーヴァテインに付与し始めた。


「拍子抜けだったけど、これで終わりだね。”神滅炎獄斬ジャッジメント・スラッシュ”!!」


神すら葬る地獄の業火が、斬撃となってユガエルに迫る。ここまで、随分時間が掛かったけど、やっとここから出られる!

―――そう、思った時だった。


《い、嫌だ……死にたくない………!》


急に頭の中に、ユガエルの声が聞こえた気がした。今更命乞い? でも、様子が変だぞ?


《死にたくないよ!!!!》


今度はハッキリと声が聞こえた。その直後、いきなりユガエルの体が半透明な幕に包まれる。そこに ”神滅炎獄斬ジャッジメント・スラッシュ” が直撃した。

―――けど、半透明の幕は、無傷だった。


『ッ!!!?』


あまりの衝撃にあたし含めた全員が、一瞬頭がフリーズして硬直した。だって、アネリルスの最終奥義だよ? それも、対 ”怪物(ユガエル)” 用に開発した技だよ? あたしみたいな例外でもない限り、権能持ちにだって効く筈の―――権能?


……そうだ! 確かユガエルを鑑定した時、使用不可になってた権能があった。もし、あれが急に動き出したとしたら!


(もう一度、『鑑定眼』!)





・ユガエル(境田改人(さかいだ かいと))

種族:天神

レベル:X

権能:【境界】(一時解放)

ギフト:【歪曲改変(ディストーション)




やっぱり、権能が目覚めてる! ”神滅炎獄斬ジャッジメント・スラッシュ” を無傷で凌げたのは、これが原因で間違いない。

それはそれとして、『境田改人(さかいだ かいと)』って明らかに日本人の名前だよね? いったいどうなってんの? 何で天神に日本人の名前が?


《”抹消境界”!》


また頭に声が聞こえたと思ったら、今度はユガエルを蝕んでた黒い瘴気が消え失せた。

いや、ちょっと待ってよ。レーヴァテインすら飲み込んだあたしの『厄災収納』を打ち消すって、マジ? どうなってんのさ、あの【境界】って権能は?





・【境界】

………鑑定に失敗。詳細不明。




ウッソだろ、おい……。超硬いガードで守られてんじゃん。名前からして境界(・・)に関する能力を持ってるんだろうけどさ、境界の能力って何よ? 全く分かんないんですけど……。


「ふふ、ふははははははははは!!」


形勢逆転とでも思ったのか、瘴気ダメージから回復したユガエルが高笑いした。ムカつくなぁ。


「おい虫けら共。たった今、お前達の希望は完全に潰えた」

「はぁ? その程度の攻撃を凌いだくらいで、本気でそう思ってんの?」


まぁ確かに、『厄災収納』も『鑑定眼』も効かなかったのはショックだけど。でもそれだけで勝ったと? 甘すぎ。


「無論だ。貴様も見ただろう? 貴様の能力も、神話級(ミトロジー)の力も無効化した、我が権能の力を!」

「でも一時的な物なんでしょ?」

「っ!! バレていたか……。だが、どうと言う事は無い。この【境界】を行使すれば、貴様らなど塵に等しいのだからな!」


『さらに!』と続けて、ユガエルが右手を上げると―――


「来い! ”エクスカリバー”、”スヴェル”!」


右手に片手剣、左手に籠手サイズの盾が現れた。どっちもただの武具じゃない。ケラウノスやグングニル程じゃないけど、凄い覇気(オーラ)を感じる。早速鑑定して(見て)みると―――





・王剣エクスカリバー

武具ランク:神話級(ミトロジー) (準創世級(ジェネシス))

描画領域(ミトロ・フィールド):【剣ノ王】


【剣ノ王】

………全ての剣の王としての力。

   神話級(ミトロジー)以下の全ての剣を支配下に置き、

   その力を使うことができる。

   また、支配下に置いた剣を召喚して操ることも可能。





・深淵盾スヴェル

武具ランク:神話級(ミトロジー)

描画領域(ミトロ・フィールド):【深淵ノ闇】


【深淵ノ闇】

………全てを飲み込む闇を展開する。

   飲み込んだ物の保存・放出、さらには闇による攻撃も可能。




どっちも神話級(ミトロジー)。しかもエクスカリバーは準創世級(ジェネシス)。多分格としては、あたしの【厄災箱(パンドラボックス)】や【戦神】と同等。ましてやそこに、あたしの権能達の力を弾いた【境界】まで加わるって考えると、もうさっきまでとは別物と考えた方が良いね。


《皆、言うまでもないけど、気を引き締めて。正直 ”厄災兵器(カラミティ・アームズ)” でも、今のアイツの攻撃は受け切れないから》

《応!!》

《ケラウノス、それにグングニルも。エクスカリバーと【境界】の力を併せた攻撃なんて、あんた達でもどうなるか分からないでしょ?》

《な、何を言う。そんな事は―――》

《そうね。エクスカリバーもそうだけど、あの【境界】って権能は、準創世級(ジェネシス)と比べても数段上の力を感じる。あの2つの力を併せたのなら、私達でもただでは済まない。でも、負ける気はしないわ。あなたもそうでしょ、一華?》

《もちろん。あたしの権能が弾かれた程度、どうって事はない。準備は出来る限りしてきたし、仲間もいる。負ける道理がない。何より光希を助ける為にも、こんな所で負けてられない!》

《……この状況でよく前向きになれるな、お主は。本当に……》


その後の言葉を、ケラウノスは飲み込んだみたいだった。ちょっと気になるけど、今はそれよりもユガエルだね。


「どうだ? 恐ろしいか? 恐ろしすぎて声も出ぬか? ふはははは!! そうであろうな。なんせコイツらは、クラヴィア様から授かった神器。貴様らの武器など足蹴にも及ばぬ存在なのだからな!」


コイツ、ケラウノスを前にして、よくそんな事言えるね。


《大方、我の力にも気付けぬ小物なのだろう。しかし、まさか天神にこのような小物がおるとは……》


ほんとにね。アネリルスの方は本人から(・・・・)油断できないものを感じるのに、コイツ自身は大した事なさそうに見える。脅威を感じるのは能力と武器だけ。天神って、本当に魔神の対になってんの?


「誰がお前なんか怖がるか」

「そこの魔神は昔、我に恐れを成して逃げ出したが?」

「………ッ!!」

「いるよね~。そうやって昔話持ち出して、ネチネチ文句言ってくるしょうもない奴。過去は過去で、今は今。今のアネリルスはあんたから一歩も退いてない。そんな事もちゃんと評価できない訳?」

「どこまでも舐めた口を……! もう良い! 生き地獄はやめだ! 貴様だけは、今この場で殺してやる!」

「はいはい、御託なんて良いから。―――掛かってこい」


あたしはケラウノスを構え直す。アネリルス達も各々構え直して、ユガエルを睨み付けた。権能と武具に余程自信があるのか、ユガエルはこちらを一切警戒していない。その慢心は好都合だ。さっさと返り討ちにして、迷宮核(ダンジョンコア)を手に入れるとしますか!

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