第11話 ご対面! 監獄の ”怪物”!
2月27日以前に、今話をご覧いただいた皆様へ―――
途中の「10年前」の所ですが、「1000年前」へと訂正致しました。
よろしくお願いします
アネリルス、ビアンカさん、レビィさんを仲間に加えた後、あたし達は準備を進めた。必要なのは武具、戦闘服、そして仲間だ。
まずは武具!
ケラウノスとグングニルの他に、宝物庫に揃った武具を全部貰えることになった。武具の数は全部で50を越える。手で持ってくのは絶対に無理。ってな訳で『厄災収納』に入れて持ってくことになったんだけど、1つ問題があった。
「……あれ? 収納できない?」
『厄災収納』は宝物庫の武具達に何の反応も示さなかった。考えてみれば当然の話。だって『厄災収納』は、相手を害悪と認識する必要があるんだもん。今のあたしにとっては、この武具達はただそこにあるってだけで害悪とは思えない。これじゃ収納できないのは当然だね。
「ふぅん。そういうことなら―――」
あたしが事情を話すとアネリルスはニヤリと笑って、丁度近くにあった斧をヒョイと持ち上げると、思い切り投げ付けて来た。
「っ!!?」
滅茶苦茶ビックリしたけど、何とか反応して収納する事が出来た。
「ち、ちょっと!? 何すんのさ!?」
「アハハ! ゴメンゴメン。でも、これで収納できたでしょ?」
「あ……」
成程ね。たとえそれがどんな武具か知らなくても、投げ付けられたら流石に危険だと感じる。そうなれば必然、武具は害悪と認定されて収納可能になる。それでアネリルスは武具を投げて来たんだね。
……先に言っといてくんない?
「まだまだいっぱいあるから、頑張って収納してね!」
「―――え?」
見ると、フォルにルーン、ビアンカさん、レビィさんも手にそれぞれ武具を持ってる。こ、これって、もしかして!
「アハハ! どれも幻想級以上の強力な武具ばかりだよ! 当たったら一華でも凄く痛いと思うから、当たらないように気を付けてね!」
「ひぃっ!?」
剣に槍、弓矢、盾、大鎌、他にもあらゆる武具達があたしに向かって飛んで来る。しかも1つ1つが、あたしに当てる気満々で飛ばされてる。考えてみれば、あたしもアネリルスを倒した奴の1人。友人にはなったけど、一矢報いたいとは思ってたんだ! くっそ~、完全に油断した!
「こ、この! 負けるかーーーー!!」
あたしは油断を掻き消す為に、『神速化』、『並列思考』も使って全力で相手する。お陰で一撃も食らわずに武具を全部収納できた。
「チェッ、結局1つも当てられなかったか。1発くらいは行けると思ったのに」
「はぁ、はぁ……こっちは必死だったんですけど?」
突然の奇襲は受けたけど、これで武具は揃った。
次は戦闘服!
この制服も流石にボロボロになってきたし、戦闘時に速攻気合いを入れる為にも戦闘服が欲しい。アネリルスに、アネリルスの部下の皆も軍服来てるし、余ってるのがあるんじゃないかな?
「実は、秘蔵の軍服がある。それも元帥用の特別製だ」
マジか。軍服にも秘蔵っ子がいたんだ。アネリルスはお宝をいっぱい持ってんだね。
「ちょっと待ってね。え~と……あった、これだ!!」
アネリルスが空間に穴を作って、ガサゴソと手探りで中を確かめて何かを見つけると、それを引っ張り出して来た。黒いチョッキに黒ネクタイ、ワイシャツ(半袖)、黒ズボン、革靴。後は白い上着がある。
「かっこいい!! 本当にこれ貰って良いの?」
「もちろん。大事に使ってね!」
「ありがとうアネリルス! ところでこの上着、着るにはちょっと大きすぎない?」
「そりゃだって、その上着は羽織る為の物だもん」
「羽織る? 何で?」
「かっこいいでしょ?」
……え、それだけ?
「邪魔にならない?」
「そんなことはないよ。背中からずり落ちないように魔法掛けてるし、かなり頑丈な糸で出来てるから盾にもなるし、なんなら袖は伸縮自在だから色々使えるよ!」
そ、それならまぁ実用性はあるけど、袖が引っ掛かったりとかしたら―――いや、そうだ。さっきのアイデアがあれば、そんなのどうとでもなるじゃん!
「アネリルス。その軍服もこっちに投げてみてくれない?」
「え? これも収納すんの?」
「その方が自由度が効くし。それに、やってみたい事があるんだよね。だから、またやってみてくれる?」
「フフ、じゃあ……ハァッ!!」
服とは思えない速度―――軽く音速を超えるスピードで、軍服(元帥用)があたしに向かって飛んでくる。「食らうの嫌だな」って思ったら、軍服も害悪に認定された。お陰で軍服も『厄災収納』にしまうことが出来た。
「ムゥ、またダメか……」
「あはは、そう簡単に食らう訳にはいかないよ。それより―――」
あたしは【厄災箱】を発動して、制服全体を黒い靄で包む。すると黒い靄が制服の形を少しずつ作り替えて、最後には軍服に姿を変えた。
着心地は中々の物だ。見た目は所々豪奢な部分はあるけど、機能性はバッチリ。最前線で戦う事を想定して作られた事が良く分かる。
「出来た!」
「一華、今のは?」
「『厄災憑依』。既存の物体に ”厄災” を憑依させる統合能力だよ」
この『厄災憑依』こそ、【厄災箱】が新しく手に入れた、3つ目の統合能力。収納した ”厄災” を復元して操る ”複製厄災” や ”複合厄災” とは違って、こっちは元からある物体に ”厄災” を宿らせる事が出来る。”厄災” が宿った物――― ”厄災兵器” は『厄災変化』の対象だから、姿形も自由自在。お陰で制服を軍服に作り変える事が出来た。
それと、制服に宿した ”厄災” は、軍服だけじゃない。
「ねぇ、一華? その軍服、力増してない?」
「流石だねアネリルス。その通り! さっき貰った武具達の力を、この軍服に宿らせたんだ♪」
アネリルスに貰った幻想級~神話級の武具約50個。その全ての ”複製厄災” を作って、上着やネクタイ、それぞれに融合。お陰で今この軍服は、全パーツに武具の力を50個ずつ宿した状態になってる。同じ ”厄災” の重複顕現が可能だからこそ成し得た技だ。
「ア、アハ、ハハハ……そっか、そうなんだ」
あ、あれ? アネリルス、正気を失いかけてる……?
「……ちょっと、やりすぎたかな?」
「ちょっとどころじゃ無いわ!!!」
―――ドゴッ!
「ぶふっ!」
「……あ、当たった」
いったぁ! 顔面に右ストレート食らった!
「突っ込むにしても、もうちょっと手加減してくんない!?」
「いやぁ、ゴメン! アンタに負けた悔しさに耐えきれなくて、つい♡」
「『つい♡』じゃないよ! あいたたた……」
しばらく顔に氷を当てる羽目にはなったけど、戦闘服は手に入った。
最後は仲間!
当初はあたし、フォル、ルーンの3人で ”怪物” を倒す予定だったけど、アネリルスにビアンカさん、レビィさんも仲間に加わってくれた。これで出撃メンバーは、あたし含めて6人(+2人)。最初は3人から増えないと思ってたくらいだから、まぁ上々だよね。
で、玉座の間でアネリルスの仲間達にその話をしたら―――
「お待ちください! アネリルス様!」
「いくらなんでも、御自ら出撃されるなど!」
「どうか我らにお任せを!」
―――と、心配する声数多。聞けば、皆も ”怪物” がどれほど恐ろしい存在か、アネリルスから伝え聞いてるんだって。そんな危険な存在に主が挑もうとしてるって聞いて、皆反対の声を上げてるみたい。
「皆、心配してくれてありがとう。でも、もう決めたんだ。それにアイツには、いつか借りを返したいと思ってたしね。だからお願い、行かせて!」
そうアネリルスに頼まれて、兵士達は黙り込む。アネリルスの事を心配する気持ちと、アネリルスのお願いを無碍にしたくないって気持ちが交錯してるみたいだね。
―――しばらく、静寂の時間が流れた。
「わ、私は! アネリルス様の勝利を信じて、お待ちしております! どうかお気をつけて! そして、必ず戻って来てくださいね!」
「ッ!」
誰かがそう叫んだ。その途端―――
「そうだ! 今のアネリルス様なら ”怪物” にだって負けねぇ!」
「やっちゃってください! アネリルス様!」
「頑張ってねー!!」
皆が口々に、応援の言葉を投げ掛け始めた。
「四天王の皆様方! どうか、アネリルス様をお願いします!」
「おい小娘! アネリルス様に何かあったら招致しねぇぞ!」
フォル達四天王やあたしに向けて、声を上げてる奴もいる。心の底からアネリルスを応援してるのが分かる。アネリルスは、仲間達に愛されているんだね。
「……ありがとう、皆」
「あれ? アネリルス、な―――」
「泣いてないもん!!」
「『な』しか言ってないけど……」
何はともあれ、こうして仲間達からの賛同も得られて、アネリルス、そしてビアンカさんとレビィさんが、正式に ”怪物” 退治の出撃メンバーに加わった。武器・戦闘服・仲間。これで皆揃った! それじゃ早速、”怪物” の根城にカチコミますか!
*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*
”怪物” がいる最下層へと続く扉は、玉座の間の台座の中にあった。台座に隠し扉があって、それを開けて中に入ると、禍々しくて豪奢なデザインの大きな扉があった。
「この先に ”怪物” がいる。準備は良い?」
アネリルスの問に、あたしらは無言で頷く。それを確認したアネリルスは、その重そうな扉を開けた。
「っ!!」
扉が開いた途端、空気が変わった。訳分からん進化を遂げた今のあたしでも、背筋がヒヤリとする程の圧。四天王はもちろん、アネリルスも冷や汗を浮かべていた。
「じゃあ、行くよ」
扉の先は、下へ下へと続く長いトンネルだった。天井の高さも横幅もしっかり確保されてて、6人でも余裕で歩けるくらい広い。ご丁寧に階段が設置されてて、先が全く見えないくらい下まで続いてる。光源はあるけどそれでも薄暗くて、下手をすると階段を踏み外しそうになる。そうなると当然気を付けなきゃいけないのがモンスターの奇襲だけど、不気味な事に、モンスターは全く出てこない。この広さのトンネルなら、ドラゴンの群れが出てきてもおかしくないし、ましてここは最下層へ続く道。迷宮は下へ進む程モンスターの質が上がるって話だから、さっきまではいなかったレベル9000代のモンスターが現れても不思議じゃない。なのに、モンスターの気配は一切ない。代わりに、とんでもない気配を下の方から感じるけどね。
「くっ、相変わらず凄い覇気……!」
「緊張してる?」
「まあね。ま、今度はこっちが勝つけど」
アネリルスが余裕の態度を見せてるけど、よく見ると指先が震えてる。緊張してるのが丸分かりだ。
「アネリルス。あたし、決闘であんたに食らった蹴りの痛み、今もハッキリ覚えてるよ。正直言って、めっちゃくちゃ痛かった。死ぬかと思った」
「こんな時に恨み言?」
「そうじゃないよ。あたしが忘れられないくらいの痛みを、アネリルスはあたしに与えた。それって、そんな事を可能にするだけの力があるって事でしょ?」
「ッ!」
「しかも、あんなの全然本気じゃない。それどころか、あんたはあんなの足蹴にも及ばないレベルの技を持ってる。あの時あんたが使った新奥義。あれ、ギフトのままじゃ絶対対応できなかった。”怪物” がどんだけ反則な力持ってたとしても、それがギフトなら ”怪物” にだって通用する筈だよ! だから、自信持って行こう。寧ろ、あたしらは【傲慢】持ってんだからさ、自信過剰くらいが丁度良いんじゃない?」
「……アハハ! そうだね! 今のアタシなら、”怪物” なんかに負けない。まして今は皆が一緒にいるんだから、これは勝ったも同然だよね!」
「そうそう! あたしらなら誰が敵でも負けたりしないよ!」
よしよし、少しだけアネリルスが本調子に戻った! まだ緊張は残ってるみたいだけど、適度な緊張に収まったみたい。
「アネリルス様! 先の方に扉が見えます!」
ビアンカさんがそう叫んだ。言われて目を凝らしてみると、確かに少し先の方に扉っぽい物が見える。でも、はっきり扉と分かる程じゃない。何で扉だって分かるんだろう?
「ビアンカさんって目良いの?」
「いや、私の『身体強化』のスキルで目を強化したんだ。それと、『さん』は止めてくれ。あなたはアネリルス様の友人、つまりアネリルス様と同格の存在なのだから。アネリルス様の部下である我々をさん付けで呼ぶのは、アネリルス様の沽券に関わる。我々にタメ口が許される事も、本来はあり得ない事なんだからな?」
こんな場所でも、沽券とか必要なんだね。
「分かった、気を付けるよ。それよりもビアンカさ―――ビアンカ、扉の周りに仕掛けとかはある?」
「無いな。あるのは扉だけだ。罠などは一切ない」
「じゃあ、いよいよだね……!」
この階段を降りて扉を開けたら、いよいよ ”怪物” とご対面。そう思うと自然と早足になって、残りの階段はあっという間に降りられた。
階段の下には、これまた豪奢な扉が設置されてた。如何にも「この先ボスがいます」って感じだ。扉の向こうから感じる覇気が強まってる。明らかに威嚇されてる。”怪物” もこっちの存在に気付いてるみたいだ。
「皆、覚悟は良い?」
あたしの問いに、アネリルス達は黙って頷く。あたしはそれを確認して、力を込めて扉を押した。扉はすんなり開いたけど、その途端に部屋の奥から禍々しい力の波動が押し寄せてきた。
「なんて禍々しい……」
思わず口に出してしまう程に、その力は悍ましかった。でも、だからって立ち止まってる訳にもいかないから、あたしらは警戒しつつも部屋の中に入った。
部屋はアネリルスの玉座の間より広くて、床は磨き上げられたように平らに均されている。周りはゴツゴツとした岩壁。それ以外は何の変哲もない質素な部屋だ。光源が用意されてて、室内はしっかりと明るさが保たれている。お陰で宙に浮かんで静止しているソイツが、はっきりと見えた。
「あれが、”怪物” ……?」
気配からして、間違いなくあれが ”怪物” だって分かる。でも、正直信じられない。だって…… ”怪物” の見た目、どう見ても少年なんだもん。
「やぁ、1000年ぶりだね」
少年の姿を目にした途端、アネリルスの雰囲気が変わった。信じられるか否かは別として、どうやらコイツが ”怪物” で間違いない。恐ろしい化け物のような奴を想像してたけど、まさかこんなお子様だったなんて。
「おやおや、誰かと思えば。我を前にして逃げ出したあの雑魚ではないか」
アネリルスを前にして、”怪物” が口を開いた。可愛い顔していきなり雑魚呼ばわりとか、マジか。
「ざ、雑魚だと!?」
「アネリルス様、雑魚、違う! 訂正、しろ!」
フォルとレビィが反応するけど、”怪物” はそれを意にも介さない。
「1人では敵わぬと見て、今度は徒党を組んだか? 虫けらが幾ら増えた所で結果は変わらん。おい雑魚。今すぐ無様に命乞いをすれば、また見逃してやるぞ? 1000年前のようにな」
コイツ、さっきから聞いていれば、上から目線で人の事見下しやがって。マジでムカつく! ここは色々はっきり言ってやろう!
「見逃してやるって? 逃げられたの間違いじゃないの?」
「……何だと小娘?」
「あんたの事はアネリルスから聞いた。すんごい力持ってるくせに、それを持て余して逃げられたんだって? あはは! ウケる~! 自分の力も碌に使いこなせないくせにあたしらを虫けら呼びとか、身の程知らな過ぎて超ウケるんですけど! あははは!」
「なっ!」
「あ、それとも、もしかして怖かったとか? アネリルスの事が怖かったから、わざと見逃したとか? ぷふっ、ダッサ! あはははははは!!」
「………………!!!」
よし、良いぞ! ”怪物” が額に青筋を浮かべて、顔を真っ赤にしてる。半分本音の挑発が上手く嵌った!
「マ、マジっすか一華さん……」
「まさか、”怪物” 相手にあんな悪口のラッシュを決めるとは。あなた相当ぶっ飛んでるな」
「でも、”怪物” 、顔真っ赤。気分、爽快」
「だな。いい気味だぜ」
うん! あたしもスッキリした! ルーンとビアンカには退かれちゃったけど、酷い事言って来た奴に一泡吹かせるのって爽快だよね!
「ありがとう一華。本当はアタシが言わなきゃいけない所だったのに、アイツを見たら急に言葉が出なくなって……」
「良いって良いって。悪口くらい、これから幾らでも言う機会はあるよ! それに、悪口が全てって訳じゃないからね」
寧ろ、ここからが始まり。いよいよ ”怪物” が動き出す!
「小娘ぇ!! 虫けらの分際でよくも我をコケにしてくれたな! 死などという生温い遣り方では終わらせん! 生け捕りにして、この世のありとあらゆる苦痛を与えてやる! そして『殺してください』と懇願してきたら、毎日死の寸前まで痛めつけて、死にたくても死ねない生き地獄を味わわせてやるぅ!」
「……長々と何を言い出すかと思えば、ガキみたいに短絡的な思考だね。あ、そういえば見た目からしてガキだったか」
「貴様ぁ! 我が気にしている事を!」
「っていうか、さっきから一華の事を散々見下してるけど、アンタもしかして一華の力に気付いてないの? 幾ら偽装してるって言っても、目悪すぎない?」
「き、雑魚まで我を見下すか!?」
「良いね! やるじゃんアネリルス!」
「グギギ………! おのれぇ! 貴様ら全員生き地獄へ送ってやる!」
その台詞の直後、”怪物” の背中から3対6枚の白い翼が生えてきた。
「……え、翼? アイツ天使だったの?」
「まだ鑑定してないの?」
「……あ」
ヤッベ。そう言えばまだアイツの事視てなかったわ。アイツに悪口言う事ばかり考えて、鑑定すんの忘れてた。これじゃアイツの事言えないよ。
っつー訳で、早速『鑑定眼』で見てみた。
・ユガエル(#$ば%*え&!)
種族:天神
レベル:X
権能:【#&%$】(使用不可)
ギフト:【歪曲改変】
あれ? 名前からしておかしいぞ? ユガエルの後に続く『#$ば%*え&!』って奴、表示がバグって全く読めないんですけど? 権能もバグってて、使えない事以外何も分からないし。いったいどうなってんの?
一応、ギフトの方は読めたけど――――
・【歪曲改変】
統合能力:【事象歪曲・現実歪曲】
『事象歪曲』
………現在までの事象を好きなように書き換える。
ただし過去の事象については、過去1時間以内の事象のみ書き換え可能。
『現実歪曲』
………自身が目にした現実を好きなように書き換えられる。
人の生死までも書き換え可能だが、世界の生死は書き換えられない。
―――能力に制限がある事以外はアネリルスから聞いた以上の情報は無い。あんま見た意味無かったね。
「食らえ! ”動作の否定” !」
ユガエルを中心に、部屋全体に波動が発せられる。どうやら、相手の『動く』という現実を否定して、一切の動きを封じる為の波動らしいね。しかもその『動く』物の中には心臓も含まれている。並みの人間ならこの時点で詰みだ。
『…………』
「ふはははは!! どうだ! 我の ”動作の否定” は! もはや罵倒は愚か、指一本動かせまい。このまま貴様ら全員甚振っ、でぇ!!!?」
あたしが飛び掛かってぶん殴った事で、ユガエルの台詞は途中で途切れた。そのままユガエルは吹っ飛んで、床に頭から激突する。そのままガリガリと床を削って、壁に激突してようやく止まった。子供に暴力を振るってるみたいで心が痛むけど、そうも言ってられない。だってコイツは、あたしらを生き地獄に連れて行こうとしてるんだから。
「ぐ、うぅ……」
「ま、こんなもんじゃ倒れないよねぇ」
「な、何故だ? 何故動ける!? 貴様らは既にかかし同然の筈なのに!」
「”動作の否定” だっけ? そんな物、今のあたしらには効かないよ」
「っ!!?」
とは言ったものの、四天王は本来動けなくなってた筈なんだ。そうなっていないのには、ちゃんと理由がある。
実は今フォル達が着ている衣服は、全部 ”厄災兵器” に改造済み。流石にあたしの軍服みたいに武具の力をバカスカ宿してはいないけど、大事なのは ”厄災兵器” が権能の力の一端だってこと。権能の力だから、権能未満の力は効かない。”厄災兵器” に守られたお陰で、フォル達4人にはユガエルの攻撃が効かなかったって訳よ。
もちろん、ユガエルにそれを丁寧に教えるつもりは無いけどね。
「ほら、どうしたの? あたしらを生き地獄に送るんじゃなかったの?」
「それとも、アタシがアンタを生き地獄に送ってあげようか?」
「………っ!!」
ユガエルは悔しそうに歯がみする。今の所優勢だけど、油断は出来ない。でも、負ける気はしない。この調子で行けば、コイツを倒すことはそう難しくなさそうだ。
「そんじゃ、油断だけはしないように、この調子で攻めますか!」
『おーーーーーー!!!!!』
【補足】
・アネリルス達の軍服
アネリルスの軍服は大将用
四天王は中将用
他の兵士達は活躍に合わせて、地位に沿った軍服を着ています。
アネリルスが元帥用の軍服に袖を通さなかったのには理由があるのですが、ネタバレになるので今話はここまでとさせていただきます。
・天神
神の使いとされる種族 ”天使族” が進化した種族。
あくまで天使が神化した存在で、天を司るわけではない。
魔神と対になる存在でもある。




