第10話 集まる猛者、集う力
経験値を取り込んでレベルXに進化して、ケラウノスとグングニルにあたしを認めさせることが出来た! のは良いんだけど……何か勢い余って普通の神とは違う存在に進化しちゃったみたい。おまけに権能が全部で5つになってるし。そりゃ皆真っ青になりますよ。
「い、一華? ステータス見られた?」
「うん、まぁ……取り敢えず、調べるか」
まずは神(魔王之器)を鑑定してみよう。
・神(魔王之器)
どの属性にも当て嵌まらない純粋なる神にして、神々の魔王となる資質を秘めた神。覚醒すれば、数多の神々を束ねる王としての力を使用可能になる。
・魔王之器
その種族の魔王となる資格を持つ者が、器として十分な力を得た時に至る存在。条件を満たすことで更なる覚醒を遂げ、種族を束ねる魔王となる。
……いや、あたし魔王とかなるつもり無いんですけど?
って言うか、この世界魔王いるの? 魔王っていうと、大勢の手下を引き連れて、「この世界を我が手に!」とか言ってるあれ? あたし、あれになろうとしてんの!? そもそも神様に魔王とかいて良いの!?
―――ダメだ、疑問が尽きない。と言うか、もう疑問を浮かべることすらダルくなってきた……。よし、一旦考えるの止めよう。どうせ条件満たさない限り魔王にはなれないんだし。ほんじゃ、次は大罪権能に美徳権能を鑑定っと。
・大罪権能
大罪の進化系。
大罪から進化することでのみ獲得できる特殊な権能。
・美徳権能
大罪と対を成す自己ギフト、美徳の進化系。
美徳から進化することでのみ獲得できる特殊な権能。
分かり切ったことだけど、やっぱ大罪権能は大罪の進化系か。それに美徳権能。まさか、大罪の対になる能力があるとはね。……その対になる力を両方持ってるあたしって、何なんだろうね? まぁそれは良いや。んで、どっちも自己ギフトの段階を飛び越えて、既に権能に進化済み、か。……いや、早すぎでしょ。これってつまり、進化の途中で大罪と美徳を獲得して、そんで進化の最中に権能に進化したってことでしょ? 爆速すぎない? もうちょっとゆっくりでも―――って、今更か。うん、しょうがない。進化しちゃったもんはしょうがないから、考えるの止めよう!
んで、最後に、大罪権能の【傲慢魔神】と、美徳権能の【勇気天神】、【忍耐天神】を見た結果がこれ。
・【傲慢魔神】
統合能力【傲慢ノ意志・能力創造・傲慢ナル支配】
『能力創造』
………『能力模倣』の進化系。
ただ模倣するのではなく、情報を元にゼロから能力を創造し、保存できる。
ゼロから創造しているため、オリジナルと同じ出力で能力を使える。
『傲慢ナル支配』
………相手の存在そのものを支配し、意のままに操る。
支配した相手からエネルギーを徴収することも可能。
「自分が相手より優れている」という、絶対の自信が無ければ発動しない。
・【勇気天神】
統合能力【勇猛果敢・英雄鼓舞・民ノ希望】
『勇猛果敢』
………自らの勇気を力に変え、身体能力、魔力を強化する。
『英雄鼓舞』
………足の竦んだ戦士を鼓舞し、英雄へと昇華させる。
英雄に力を与えて、強化することも可能。
『民ノ希望』
………自らを信じる者達の声援を力に変える。
『勇猛果敢』とは相乗関係にある。
・【忍耐天神】
統合能力【難攻不落・時空障壁・万物固定】
『難攻不落』
………文字通り、難攻不落となる統合能力。
防御力の上昇、及び傷の再生を可能にする。
他者や物に付与することも可能。
『時空障壁』
………時空を隔てる障壁を展開する。
時空間に干渉できない攻撃での破壊は不可能。
『難攻不落』を付与することで、さらに強度が増す。
『万物固定』
………運動エネルギーを奪い、物体や事象も含めた
あらゆるものを固定する。
さすが権能。とんでもない能力が揃ってるね。
【傲慢魔神】は『能力模倣』の進化と、『傲慢ナル支配』の追加でより強力且つ凶悪な能力に進化してる。アネリルスの【傲慢】も、いずれはこうなるんだろうね。
んで、美徳権能の方だけど、激強な能力が揃ってるのは大罪権能と同じなのに、こっちは凶悪さより神々しさを感じる。【勇気天神】は仲間と自分を鼓舞・強化して、英雄達を引き連れて強大な敵に立ち向かう正に勇者タイプ。【忍耐天神】は最前線で鉄壁の盾になって、敵の攻撃から仲間を守る守護騎士タイプ。正しく美徳の名に恥じない力。どちらもあたしには勿体ない、聖人君子の為のような権能だ。
《その通り。それは本来、”勇者” 足る者のための権能だ。お主のように傲慢で、見栄っ張りの小娘が持って良い力ではない。それがよりにもよって、こんなちんちくりんに、それも ”魔王之器” に宿るとは……どうなっているのだ?》
むむ。ケラウノスの奴、人の事を見栄っ張りだのちんちくりんだのと、好き勝手言ってくれちゃって。文句の1つでも言ってやろう。
「ちょっと。初対面相手に随分な言い草じゃない?」
「? どうしたの一華? 急に1人で喋り出して」
「え?」
……あ、そっか。そういえばこの声、あたしにしか聞こえてなかったんだ。
「えっとね、何か急にケラウノスとグングニルの声が聞こえるようになったんだ」
「ッ!? そうなの!?」
「うん、間違いないよ。そだ! ちょっと待ってね。え~と……こうか、”念話” !!」
”念話” を使って、あたしはここにいる全員の思考をあたしと繋いだ。これであたしを通して、皆にも槍達の声が聞こえるはず。
《……勝手なことをしおって。本来我らの声は、我らが認めた者にしか聞かせてはならぬというのに》
《ッ!! 本当だ……声が聞こえた!》
《なんか偉そうっすね》
《偏屈ジジイ》
《よせレビィ! 相手は創世級だぞ!》
《下手な事言って、またさっきみたいになっても知らないよ?》
皆が、思い思いの反応を返してくる。よしよし、ちゃんと聞こえてるみたいだね。
《……まあ良い。それよりも小娘。言っておくが、我はお主の力を認めただけで、新たな使い手として認めた訳ではないぞ》
《え、そうなの?》
《当たり前じゃろう! 我らは世界を創り、世界を滅ぼす創世級じゃぞ? どこの馬の骨とも分からぬ小娘に、そう易々と力を貸してなるものか!》
《そうね。下手に力を貸せば、使い手によっては世界を滅ぼし兼ねない。だから私達は、簡単に使い手を決める訳にはいかないの。……と言っても、私は手を貸しても良いと思ってるけどね》
《な、どういうつもりだ!?》
《考えても見て。この子は土壇場で人を捨てて、いきなり神に成った。それも普通じゃない、特別な神へと進化を遂げ、私達の抵抗をものともしない力を得た。親友を助ける。その思いを胸にここまでやってのけるなんて、そう簡単に出来ることじゃない。確かに、”魔王之器” や大罪権能がある以上、危険性は否めないわ。でも美徳権能を手にしたということは、きっと、高潔な魂の持ち主でもあるのよ。だから私、この子を信じます。私はこの子を、私の新たな使い手として認めるわ》
グングニル、そんなにあたしのことを買ってくれたんだ……。
《じ、じゃが、我はまだこの小娘を―――》
《あら、嫌なら別に良いのよ? 1人でこの暗~い地下室に閉じこもってても。でもそれだと私、他の武器に浮気しちゃうかもしれないわねぇ………》
《な、何じゃとお前!? それはいかん! いかんぞ!》
《えぇ~? じゃあ一緒に来てくれないかしら? あなただって、流石にそろそろ外の空気が吸いたいんじゃなくって?》
《ちっ! 仕方あるまい。今回だけじゃ! その変わり、浮気は絶対許さんぞ!》
《えぇ、もちろんよ。あ・な・た♡》
………何聞かされてんのあたし達?
《おい小娘、今回は止む無く同行することにしたが、我がお主を真に使い手と認めるまで、【滅界雷】は使わせぬからな?》
《あ、はい……》
このケラウノスを認めさせるのは、時間掛かりそうだな……ダル。
《ところでお主、異世界人じゃな。何故こんな所におる?》
《っ! あたしが異世界から来たって知ってんの?》
《お主の魂を覗き見たのだ。魂というものは、世界ごとに色が異なる。お主の魂の色は我が知る世界の物では無かったのでな。お陰で異世界人と分かったのだ》
コイツ、プライバシーとか無い訳?
《ほう? 確かに見てみると色が違う》
《虹色は見たことないっすね》
《こんな色は初めて見た》
《……綺麗》
《アタシもこんな魂、欲しかったな……》
コイツらもか。しかも物騒な事言ってる奴がいるし。
《……で、あたしが何でここにいるかって? クラヴィアって奴に追放されたんだよ。何でかは分かんないけどね》
《追放されたのは知っておる。我らも「危険すぎる」という理由で、奴の手によってここに閉じ込められたからな。我が聞いたのは、なぜ異世界人がこの世界にいるかという事じゃ》
《……生贄だってさ》
《何じゃと?》
《だから、生贄として連れてこられたの! あたしと親友と他に2人。4人揃って何かの生贄にする為に、クラヴィアはあたし達をここへ呼んだの!》
《………っ!!》
あれ? ケラウノスの様子がおかしいような?
《どうかした?》
《い、いや、何でもない……。そうか、それは大変であったな》
《大変なんてもんじゃないよ、まったく。でも、気に掛けてくれてありがとう。2人が一緒にいてくれれば、”怪物” とも戦えるよ!》
《”怪物” ?》
《この迷宮の最下層に、とんでもない力を持った ”怪物” がいるんだって。あたし、最下層まで行って迷宮核を手に入れなきゃだから、ソイツをぶっ飛ばさないといけないの。だから、2人が居てくれると凄く助かるんだ》
《……さっきも言ったが、【滅界雷】は使わせぬぞ?》
《でも、槍としては使わせてくれるんでしょ?》
《まぁ、それならな》
《なら充分だよ! ”怪物” の能力が効かない武器が一緒に来てくれるってだけで、本当助かるよ! ありがとね!》
《う、うむ……》
【滅界雷】は使わせてもらえないみたいだけど、創世級2人に一緒に来てもらえるのはありがたい。後は ”怪物” をぶっ飛ばして迷宮核を手に入れれば、この監獄からも脱出できるはず!
「一華」
「ん? どったのアネリルス?」
「いよいよ ”怪物” 退治に行くんだね」
「うん! フォルとルーンも一緒に来てくれるんだよね?」
「もちろん。少なくとも ”怪物” の討伐が終わるまでは、何があろうとも着いていくさ」
「アネリルス様。俺っち達、一華さんに着いていくって約束しちまったっす。約束を反古にしたら堕天使の誇りが完全に消えちまうっす。だから申し訳ないっすけど、しばらく休暇をいただきたいっす」
「………」
どうしたんだろう? さっきからアネリルスの様子が変だ。何か、言いたいことでもあるのかな?
「……一華、頼みがある」
「頼み? どんな?」
「アタシも、ついでにこの武具達も、一緒に連れてって欲しい」
『っ!!?』
アネリルスの言葉が、あたしは信じられなかった。四天王も驚いていた。
「アネリルス様! 危険です!」
「フォル、ルーン、行く! アネリルス様、行く必要、無い! どうしても、言うなら、私達、行く!」
「いや、こればっかりは2人に代わってもらう訳にはいかない。アタシが行く」
「「アネリルス様!!」」
ビアンカさん、レビィさんが必死に止めるけど、アネリルスの意志は硬いらしい。
「だ、大丈夫なの? 前に ”怪物” にボコボコにされたんでしょ?」
「アハハ! ズバッと言うね。でもさ、アンタが ”怪物” と戦う為に、ケラウノスとグングニルの抵抗を必死に受け続けてる姿を見てたら、アタシもアイツに一泡吹かせたいって思っちゃったんだよね。それに―――」
アネリルスは部屋全体を見回して、シンミリしながら続ける。
「ここにある武具達は、実は ”怪物” を倒す為に集めたんだ。でも、アタシが動かずにいるから、ずっとここで燻ったままになっちゃってるんだよね。だからお願い。アタシとこの武具達を、一緒に連れてって!」
アネリルスが懸命に頼んで来る。思えば、彼女は【傲慢】を持ってる。プライドの高い性格なのは間違いないし、当然負けた相手にはリベンジしたいって考えるだろうね。ここでアネリルス抜きで ”怪物” を倒したらアネリルスは2度とリベンジが出来なくなる。となればここは……連れてかない訳にはいかないね!
「分かった! 期待してるよ!」
「……っ! 任せといて!」
「それと、ビアンカさんとレビィさんも一緒に連れてこうよ」
「わ、私達もか!?」
「何故? 何、考えてる?」
「ここで2人を置き去りにして何かあったら、後から後悔する羽目になると思って」
「っ! 私達の事を、そこまで考えてくれたのか?」
「……私達、無礼、働いた。どうして?」
「どうしても何も、誰かを思う気持ちを見過ごす事なんて出来ないよ」
あたしだって、光希を助ける為なら地獄の果てまでだって行く。この2人だってきっとそうなんだ。そんな2人の気持ちを無下にしたら、光希に顔向け出来ないよ。
「アネリルス。それで良いかな?」
「ま、止めても勝手に着いて来そうだしね。厳しい戦いになると思うから、覚悟してね?」
「「はっ!」」
ビアンカさんとレビィさんが、アネリルスに向かって跪く。これでメンバーは6人。いや、ケラウノスとグングニルを入れて8人。ついでにここにある武具達も貰えるなら、もう負ける要素がないように感じる。でも、犠牲を出さない完全勝利を目指すなら、油断は出来ない。
そだ! 戦闘服も用意してもらおう! 「何で服?」って思うかもだけど、服は人の気分を変える物だ。戦闘用の服ってのを用意しておけば、それを着るだけで気合いが入るし油断も無くなる。
……そんな事を考えてたらあたし、閃いちゃった。それも、自分でも天才じゃないかと思えるアイデアを。、正直敵が可哀想になるようなアイデアだけど、相手は ”怪物” だからね。これぐらいはやんないと!




