第1話 ダルすぎ!! 異世界徴収
あたしは戦場一華。
面倒くさいことはマジで嫌い。努力しないといけないとわかっていても、面倒くさいからやりたくない。そんな感じの普通の高1だ。
そんなあたしは今、親友の家にいる。何をしているのかって? 決闘だよ。それも異種混合式。あたしは素槍、相手は木刀を持って、実戦形式での決闘の真っ最中だ。
……でも、もう負けそう。
「はぁ、はぁ………」
「あれ、もうスタミナ切れ? 最近サボってたツケが周って来たんじゃない?」
この子があたしの親友で、幼馴染みの同年代、スミス光希。
お母さんがイギリス人らしくて、髪は生まれつき金色のブロンドヘアー。
勉強もスポーツもできる所謂優等生で、全国模試では常にトップクラス。スポーツも全般得意で、特に剣の腕は家が剣道場なのもあって超一流。剣道の大会では個人戦、チーム戦、共に優勝。それどころか、現役の警察官10人掛りでも敵わない程の実力なんだとか。
んで、そんな光希と1対1で決闘できるのが―――と言うより、決闘の相手が務まるのが―――よりにもよってあたしだけなんだって。それで時折、こうして決闘の相手をさせられるわけ。
……ダル。
別にあたし、何か武術を極めてるわけじゃ無いよ? 普段は戦いと無縁の、ポテチとゲームのぐーたら暮らし。そもそも剣の腕を磨く為の決闘なら、槍が得意なあたしより、道場の師範のお父さんが相手になった方が有益なはず。なのに光希ってば、もうお父さんじゃ相手にならないって言って、あたしに決闘の相手を迫ってくるわけ。
ったく。道場の人達の方が、あたしなんかよりよっぽど一生懸命やってるはずなのに、何で誰もぐーたら暮らしのあたしに及ばないかね? せめて1人でもあたしを超えてくれれば、わざわざあたしが相手しなくても済むのにさ。
「ど、どうかな……」
「……流石にこれ以上はキツイかな?」
「はは、そうみたい……。だから、今日はもう終わりにしよう?」
「もう! そんなこと言って本当はまだ動けるくせに! ちょっと甘い顔見せたらすぐサボろうとするんだから!」
「そんなこと言ったって、かれこれもう1時間だよ?」
「1時間くらいで文句言わないの! ほら、脇が甘い!」
「くっ!」
あたしは辛うじて光希の攻撃を防いだ。
光希との決闘は超ハードだ。
どっちかが急所を討つか、或いはどっちかが体力が尽きて倒れるまで、とにかくお互いに打ち合い続ける。内容としてはシンプルだけど、体力尽きるまでが区切りってのがダルすぎる。おまけに光希の体力は凄まじくて、そう簡単には倒れない。長引くと3時間も打ち合う羽目になる。
「そっちこそ、足元がお留守!」
「ひぃ!? 危なかった……! 今度はこっちの番だよ!」
「くっ! いきなりギアが上がった……!」
そんな感じでさらに打ち合い続けること―――2時間。
「ハァ、ハァ……!」
「ゼェ、ゼェ……!」
2人揃って、満身創痍になってぶっ倒れた。
「き、今日の所は、これで勘弁してあげるよ……!」
「そ、そりゃどうも……」
光希、それは小悪党のセリフトップ3だよ? まぁ、いちいち指摘しなくても良いか。
「明日も稽古に付き合ってよ!」
「え~~?」
「一華以外に本気を出せる相手がいないんだよ! お願い!」
光希が手を合わせて懇願してくる。確かにこの子の本気を受け止められる人間なんて、あたしの知る限りあたししかいない。あたし以外の人を相手に稽古してても、剣の腕が上達するどころか、逆に鈍っちゃうだろうね。
「はぁ、仕方ないなぁ」
「ほんと!? ありがとう!! 一華大好き!!」
「はいはい」
やれやれ、明日もまた稽古か……ダル。
でも、初めから断るって選択肢はない。だって親友の頼みだよ? 断る理由なんかないでしょ。
「そうだ一華。今度あの店のパフェ奢ってあげるよ」
「えっ!? ほんと!?」
「最近、いつも以上に稽古に付き合って貰ってるから、その御礼に!」
「じゃあ、今度2個奢ってね!」
「うぐっ!? し、しょうがないな。じゃあ2個ね!」
「やった~~!!」
あの店のパフェは絶品だ。天辺にプリンの乗った、山盛りフルーツパフェ。1度あの味を知ったら、もう他のやつじゃ満足できない!お高くてたまにしか食べらんないだ。それを、一気に2個も……!ワクワクが止まんない!
「その代わり、明日はちゃんと頼むよ?」
「分かってるって」
ここまで来て約束を反古にするなんて真似はしない。もちろんお互いそれはわかってる。だからこれは……まぁ、指切りのおまじないみたいなものかな。
「さて、今日はもう上がろっか」
「そうだね」
あたしらは決闘で使った武器を片付けて、正座して一礼してから道場を出た。そんでシャワーを浴びて汗を流した後、光希は私服で、あたしは制服でもう一度道場に入った。
「そんじゃ、終わりじまいの挨拶をしますか」
「そうだね。せーのっ」
「「ありがとうございました!!」」
いつも帰る前にやってる、終わりじまいの礼をした、その時だった。
―――急に道場の床が光り始めた。
「あれ、この道場床にライトを―――」
「仕込むわけないでしょ! 何なのこれ!?」
光は徐々に強くなり、やがて視界全体が光に覆われる。あたしらは目を開けることもできなくなって、しばらくの間顔を覆った状態で硬直し続けた。
………少しして、光がおさまったことに気付いて顔を上げると―――
そこは、見知らぬ真っ白な空間だった。ただただ真っ白で、だだっ広い。いや広いというより、端っこが無いって言った方が正解かもしれない。そのくらい先が見えなかった。
「な、何なのこれ、ドッキリ?」
「ドッキリだとしたら規模デカすぎでしょ。人をいきなりこんなところに移動させるなんて。そんなことより、今日はもう疲れたから早く帰りたいんですけど?」
「……っていうか、何で一華はそんな冷静なの!?」
「え? だって騒いでもどうしようもないし、それなのに騒ぐのもダルいし。そういう光希こそ、そんな騒いでダルくないの?」
「ダルいとかそういう問題じゃないから!」
「ちょっと! いつまでつまんない漫才やってる気?」
突然、知らない声が聞こえて来た。声がした方を見ると、ネイルに化粧にスマホと、とにかく今時って感じの女子2人が、あたしらを睨みつけてた。
……やっべ。そういえば、他に人がいる可能性を考えてなかった。
「さっきから五月蠅くてしょうがないんですけど?」
「ご、ごめんなさい。五月蠅くするつもりはなかったんです。ちょっと混乱しちゃって」
髪を桃色に染めた子の文句に対し、光希が大人の対応で返す。こういうのは光希の方が慣れてるね。
「はぁ、まあそれはわかるけどね。ったく、『異世界転移』は小説の中だけで充分だっつーの」
「ほんとだよね~。ラノベは読む物で体験するものじゃないっての」
「……あの~、異世界転移って?」
異世界転移。
それが何なのか、あたしらにはわからない。でも、どうも2人はこの現象を、異世界転移だと思っているようだ。もしこれが本当に異世界転移なら、その異世界転移とやらについて知っておきたい。
「あ、もしかしてお2人さん、漫画もラノベも読まない感じ?」
「え~と、漫画は読むけどアクション系ばっかで、ラノベは読まないですね」
「ふ~ん、そっか。異世界転移ってのは、文字通り別の世界に転移しちゃうことだよ」
「別の、世界?」
「そそ!あーしらがいたのとは、まったく別の世界!で、大抵は剣と魔法のファンタジー世界に飛ぶっていうのがお決まりだよね~」
「後は転移した世界でチートな力を手に入れて、その力で無双しちゃうっていうのもお決まりの展開かな」
「そうそう! 例えばあれとかさ………」
「分かる~! んでもってあれは……」
あたしは次第に話に取り残されて、いつの間にか2人の世界に入ってしまった。けど、とりあえず異世界転移っていうのは、元とは別の世界に行くことだってこと、そして行先は剣と魔法の世界らしいことがわかった。
(まぁ、チートな力を持っただけで無双ってのは、わからない感覚だけどね)
あたしだって、光希と決闘してるから分かる。急に強くなるなんて、そんな都合の良い話あるわけがない。100歩譲って、そんなことを可能にする力があったとしても、そんな力絶対持て余す。持て余す力は真の力にあらず。使いこなしてこその力。急に強くなる力があるんだとしたら、それは力に使われているだけだ。
……とは言ってみたけど、これはあたしの持論だし、別に人に押し付ける気はないけどね。
「あら、今回は4人釣れたのね」
また知らない声が聞こえて来た。今度の人もまた女性。それも、金色のサラサラのブロンドヘアーをなびかせる、絶世の美女だ。だけど、服装が妙だった。うまく言えないけど、今の時代の服とは思えない。例えるなら、ローマ時代の人達が着てそうなゆったりとした白い服を着ている。それと……見せつけてるのか、胸の部分が大きく開いていて、あたしの何倍もデカいそれが谷間を露わにしていた。
(光希もそうだけど、あんなのぶら下げてて重くないのかな?)
……って、今はそんなこと気にしてる場合じゃない。
(この人今、「釣れた」とか言ってたよね? ってことは、この人があたしらをここへ連れてきた張本人?)
だとしたら、いったい何の目的で? 何を考えてこんな誘拐紛いなことをしたんだろう? なんてことをあたしが考えていると、その女の人があたしらに話しかけて来た。
「初めまして。私はクラヴィア。時空の女神よ」
……自分で自分のこと神とか言ってるよ。痛すぎない?
「今、私のこと痛い奴とか思ったでしょう?」
うげっ!? バレた!?
「別に良いのよ。ラノベというものが普及した今でも、私の言葉を素直に信じない奴は必ずいるし。でも言っとくけど、私は本物の神様だから。そうだ、ちょっと神様っぽい所を見せてあげるわね」
そう言って、クラヴィアさんは右手を上に向ける。するとどこから湧いたのか、右手に光が収束して巨大な光の玉になった。
『っ!!!?』
「これで終わりじゃないわよ。それっ!」
クラヴィアさんはそれを無造作に投げる。光の球はあたしらの遥か後方に着弾して、同時に凄まじい大爆発を起こす。爆風はこっちまで届いて、髪が大きく捲れ上がった。
『……………!!!!』
あまりのことに驚きすぎて、あたし含めて誰も声を発することができなくなった。
(何だよあれ? いきなり光の球を作って、爆発させた?)
そんなこと、人間には絶対できない。神かどうかはともかく、この人が人間じゃないことだけは確かみたいだ。下手にこの人を刺激すると、最悪命を落とす可能性もある。ダルいけど、今はこの人の言うことに従っておこう。
『………』
「うふふ、少しは私の偉大さが理解できたようね。では改めて、良く来てくれたわね、あなた達。歓迎するわ」
来たって言うか、無理矢理連れてこられたんですけどね。
「あ、あの!」
「何かしら?」
「あなたが私達をここへ呼び出したことはわかりました。ですが、何故そんなことを? 私達をどうするおつもりですか?」
光希が相手を刺激しないよう、丁寧な口調でそう聞く。かなり怯えているみたいで、よく見ると手が小刻み震えていた。
「安心なさい。取って食ったりしないから。ただ、あなた達には私の管理する世界へ行って欲しいの。要はさっきあなた達が言ってた異世界転移よ。剣と魔法の世界への、ね」
どうやら、さっきの2人の予想があたったみたいだ。クラヴィアさんの目的は、あたしらを異世界転移させること。つまりこれからあたしらは、異世界へ送られるわけだ。多分拒否権はない。わざわざ力を誇示したのがその証拠。逆らうなら殺す。あれは、そういう警告なんだ。
(ったく、こんなの異世界転移じゃなくて異世界徴収じゃん。ダルすぎでしょ…)
せめて、どうしてあたしらをここへ呼んだのか、この人の狙いが知りたい。リスクはあるけど、ここは思い切って直接聞いてみよう。
「あの~、あたしらを異世界転移させようだなんて、何が目的なんですか?」
「簡単なことよ。あなた達にはね、私が管理する世界で強くなってもらいたいの」
「強く? それは、暴力的な意味で?」
「ええ。どんな敵も簡単に排除できるくらいに強くなってもらいたいわ」
「でも、魔法がある世界で魔法も無しにそんなに強くなれます?」
「そこは安心なさい。ちゃんと練習すれば、あなた達も魔法の1つや2つ、すぐに使えるようになるわ」
あ、そうなんだ。魔法とか言うから何か特別な才能みたいなのが必要なのかと思ったけど、そうじゃなかったみたいだね。
「それにあなた達はレベルも上がりやすくしてあるから、強くなるのはそう難しい話じゃないわ」
「レベル? それって、ゲームとかでよくでてくる、数字が大きく成る度強くなるあれですか?」
「ええ、その認識であってるわ。レベルは1から9999まであって、今のあなた達はレベル1。基本的にはモンスターと呼ばれる怪物を倒して、それで得られる経験値を集めることでレベルが上げられるの。レベルを上げれば身体能力と魔力―――あ、魔力は魔法を使うのに必要なエネルギーのことよ―――が強化されるけど、その分レベルアップに必要な経験値も増えていくから、なるべく大量の経験値を得られる相手―――高レベルのモンスターを倒すようにね。本当はレベル9999を目指してほしい所だけど、さすがにそこに至るには時間が掛かると思うから、とりあえず5000を目指してちょうだい」
……ダル。結構がんばらせるじゃん。
ってかそもそも、怪物のいる世界とか、ガチで勘弁してほしいんですけど?
「それと、あなた達には『ギフト』を与えてるから、これもうまく使ってちょうだい」
「ギフト?」
「神が人間に与える加護みたいなものよ。幾つかの統合能力を宿してて、理に縛られない力を振るえるの。基本は1人につき1つで種類は千差万別だけど、どれもこれも強大な力を秘めてるわ。ただ性質上、あなた達がどんなギフトを得たのかは、与えてみるまで分からない。つまり、私もまだあなた達が手にしたギフトが何なのか知らないの。だから見せてもらうわね」
クラヴィアさんの目が文字通り光って、あたしらを品定めするように見始める。
「まずは、そこの桃髪のあなた―――糸川優里からね。ギフトは……『傀儡人形』か」
え、怖っ。何その物騒なギフト?
「それってどんなギフトですか?」
「見た所、殺した相手の肉体と魂を支配するギフトみたいね。1度傀儡化した相手は、絶対にあなたの命令に逆らえなくなるみたいよ」
「おぉ!超便利っすね!」
そう言って、糸川さんははしゃいだ。因みに、もしあたしがあのギフトを貰ったら、即刻返品願いを出す。だって、相手を殺して支配するなんて……うまく言えないけどヤバすぎるんだもん。
「ただ、傀儡が増えるまではただの人でしかないから、まずは何かしら戦う手段を身につけなさい」
「了解でーす!ありがとうございます!」
「ふふ、素直な子ね。さて、次は青髪のあなた―――天野美空。あなたのギフトは『天体魔法』ね」
へぇ、魔法がギフトになることもあるんだ。しかも天体って、えらく規模がデカい気がするんだけど?
「これは単純に、天体魔法を全て使えるようにするギフトみたいよ」
「その天体魔法っていうのは何ですか?」
「超級魔法の一種で、簡単にいうと宇宙に干渉して、天体の事象を引き起こす魔法よ。わかりやすい例で言えば、隕石の召喚や重力操作ね」
めっちゃ強いじゃん。
「でも、魔法って魔力を消費するものなんですよね? そんな凄い魔法、魔力消費が激しくて簡単には使えないんじゃないですか?」
「そこがギフトとの違いね」
「って言うと?」
「あなたの言う通り、天体魔法は強力な分大量の魔力を消費するから、本来はそう簡単に発動できない魔法よ。でも言い忘れてたんだけど、ギフトは魔力を一切消費せずに使用することが可能なの」
「っ!? それってつまり、あーしは天体魔法を使い放題ってことですか!?」
「理論上はそうなるわね。体力は有限だけど、魔力に関しては一切の消費がないのだから。天体の事象を好きに使い放題だなんて、正直言ってとんでもないわね。気を付けて使いなさい」
それを聞いて天野さんは、期待と不安が入り混じったような顔をした。
これは……ヤバい。天体の事象を引き起こす魔法を、一切の魔力消費なく使えるなんて、正にチートだ。正直言って、人間がどうこうできる次元じゃない。
(……本当にあるんだ。手に入れただけで最強になれる力って)
素直にそう思った。とは言え、それを天野さんが使いこなせるかは別問題。下手に使えばクラヴィアさんの世界を巻き込んで自滅する恐れもある。少なくとも、ギフトを万全に使いこなせるようにはなってもらわないとね。でないと、あたしらの身も危ないし。
「次は、ポニーテールのあなたね。スミス光希」
「は、はい」
次は光希の番か。光希のことだから、刀に関係するギフトを貰ってそうだけど、どうなんだろう?
「あなたは……まあ、これは珍しいわね!あなたにはギフトが2つもあるわ!」
『っ!!?』
マジか!ギフトは基本1つって聞いたのに2つも? 凄いな光希!
「どんなギフトですか?」
「まず1つ目は『光神』ね。これは文字通り、光を司るギフトみたいよ。レベルを上げる毎にできることが増えるタイプのギフトみたいだから、研鑽を怠らないようにね」
「『光神』……」
「あら、ご不満かしら? あなたの髪の毛も光り輝く金髪なのに―――」
「髪のことは言わないで!!!」
『っ!!?』
ヤバい!光希の髪の色を本人の前で指摘するのはタブーなんだ!
だって、光希のお母さんは―――
「あ……すいません。突然大きな声を出してしまって……」
「わ、私の方こそ、気に障ったのなら謝るわ。ごめんなさい」
あたしらを脅して従わせたクラヴィアさんが、あまりの迫力に思わず謝罪してる。それだけ光希の迫力が凄かった証拠だ。普段は温厚な光希だけど、髪のことに触れられると烈火の如く怒り出す。一度なんか、髪のことをからかってきた男連中を、ボッコボコにして病院送りにしたこともあるんだ。光希の髪のことは、そのくらい慎重に扱わないといけない。
少しの間、静寂がその場を支配する。
―――先に沈黙を破ったのは、光希だった。
「そ、そうだ!2つ目のギフトって、どんなのですか?」
「あ、あぁ、そうね、2つ目ね。2つ目のギフトは『多次元存在』。自分の存在そのものを増殖させられるギフトみたいね」
「存在の増殖? それって、どういうことですか?」
「記憶、人格、レベル、ギフト、その他諸々完全に同一の存在を生み出せるってことよ」
「……じゃあ私、自分を増やせるんですか!?」
「その通りよ。今まで私が見てきた中でも、指折りのチートギフトだわ。ただ、こっちもレベルアップで成長するギフトみたいね。最終的にどれだけ増えられるかわからないけど、現状は2人が限界みたいよ」
「ちなみに『光神』の方は、今は何ができますか?」
「こっちは光を発するのと、極細のレーザーを発射するのが精々ね。でもレベルを上げれば、できることも増えるはずよ。さっきも言ったけど、研鑽を続けることね」
「はい!」
光希が元気よく返事をする。この感じ、もしかするとスイッチ入っちゃったかもしんない。面倒くさがりなあたしと違って、光希はとんでもない努力家だ。一度スイッチが入ると、どんなことでも達人級まで極める、正に努力マニア。今までもそうやって、色んなことをできるようになってきた。今回も、レベル9999は当然として、ギフトを完璧に使いこなせるようになるまで止まらないだろうね。
「さて、最後は黒髪のあなたね、戦場一華」
「みたいですね」
いよいよあたしの番か。はてさて、あたしのギフトは何なのやら。
「あなたは……え?」
おや、クラヴィアさんの様子が……?
「どうかしました?」
「……いえ、何でもないわ。あなたのギフトは『道具箱』。どんな物も無限に収納できるギフトみたいよ。ただし、生物は対象外みたいね」
「……え、それだけ?」
ちょっとショボくない? いや、まぁね、無限に物を収納できるのは凄いと思うけど、さすがに他のと比べてショボすぎでしょ!?
「ええ、それだけよ。残念ながら、あなたはハズレギフトみたいね」
ガーーーン!!
ギフトを与えた本人からハズレ判定されちゃった! いやね、別にギフト欲しがってたわけでもないし、何なら無理矢理与えられた感じでもあるんだけどさ、他の人が強いの貰ってたら自分だって欲しくなるじゃん? なのに、神様(?)公式のハズレギフトって……さすがにショックなんですけど?
「いや、何て言うか、その……ドンマイ」
「し、しょうがないよ。こればっかりは、運だから……」
ショックが顔に出てたのか、糸川さんと天野さんが慰めてくる。嬉しいけど、その優しさが逆に刺さる。
「……」
それを察してか、光希は何も言わなかった。こういう所がさすが親友って感じだよね。
「さて、何はともあれ、あなた達のギフトは判明したわね。それじゃあ、早速私の世界へ行ってもらおうかしら」
やれやれ、とうとうこの時が来たか。
「今から私の力で、あなた達を私の世界へ転送します。座標は人里近くの祠に設定してあるから、悪いけどそこからは自分達で街を目指してちょうだい。街に着いたら、まずは冒険者ギルドで冒険者登録を済ませてね。その方がレベル上げもスムーズになるから。ギルドや冒険者については、現地の人から聞いてみて。現地の人とのコミュニケーションは大切よ」
誘拐はしてるけど、割とまともなこと言うなこの人。と言うか、誘拐の部分除いたら、この人結構まともじゃない?
「言語とかは大丈夫なんですか?」
「そこは私の加護で、お互いに言葉が理解できるようにしてあるから安心なさい。あ、それと言い忘れてたけど、私の世界には人間の他にも色々な種族がいるの。彼らへの意識については個々人に委ねるけど、とりあえず種族が多数いることは理解しておいてね」
へぇ、異種族か。
……それはちょっと会ってみたいかも。
「説明は、こんなところかしらね。最後に、何か聞いておきたいことはあるかしら?」
「あの! 1つだけよろしいでしょうか?」
ここで光希が手を挙げた。必死の形相だ。余程知りたいことがあるみたい。
「どうぞ」
「あなたが私達に求める強さを獲得したら、元の世界に帰してもらえるんでしょうか?」
あたしはハッとした。
危なかった。流されて忘れるところだった。あたしらは最終的に、元の世界へ帰らないといけない。クラヴィアさんの目的を達成したら帰してもらえるのか。そもそも帰還自体可能なのか。それをちゃんと聞いておかないとだった! ナイスだよ光希!
「そうね。あなた達には強くなってやってもらいたいことがあるの。それを達成したら、あなた達を元の世界に帰してあげるわ。まあ、残りたかったら別だけど」
「や、約束ですよ!?」
「ええ、約束よ」
良し、言質は取った! これで帰れることは保証された。後はこの人の目的を達成すれば良い。ダルいけど、こればっかりはやるしかない!
(どんな無茶ぶりでもどんと来い! 必ず達成して、絶対に4人で元の世界に帰ってやる!)
光希との稽古以外で、久々に本気で闘志が湧いてきた。それと同時に、今なら何でもできそうだと思えてしまう程に、力が漲る感覚があった。
(何この感覚? ……まあ良いや。そんなことより―――)
さっさと転送してもらおうじゃないの。早いとこ元の世界に帰るために!
「他には……無さそうね。それじゃあ、大変だと思うけど、頑張ってちょうだい!」
その言葉と同時に、あたしらの足元に不思議な模様が描かれた円が出現した。円は眩しい光を発して、次の瞬間、視界が暗転した。
やがて、視界が安定すると―――そこは、ゴツゴツした岩に覆われた、暗い洞窟だった。
初めまして! 蓬莱と申します。
この度は本作をご覧いただき、誠にありがとうございます!
改めましてこちら、新作です!
主人公の少女「戦場一華」は、かなりのめんどくさがり屋。そんな一華が、糸川優里、天野美空、そして親友のスミス光希の3名と共に、異世界へ飛ばされた所から始まります。ですが………?
本日は初日記念として、もう1話投稿予定です。時間は17半頃の予定です。
このお話をより良いものとするため、皆様に楽しい時間をご提供するため、皆様のご感想をいただけると幸いです。
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