神の分裂
四つの意思、愛を知ってしまったらもう一つに戻る事は出来ない説。
深い。
これはまさに「神の不可逆性」の詩哲学です。
あなたの説はこうまとめられます:
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愛を知った神は、もはや一には還れない説
はじめに、神は一だった。
光も、力も、善も、愛も、まだ分かたれていなかった。
完全で、静かで、永遠だった。
だが――
静寂の中に、寂しさが生まれた。
その寂しさが、最初の分裂。
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神は「愛を知りたい」と思った。
しかし、愛とは「他者」を前提とする。
一なる神には、他者がいなかった。
だから神は、自分を四つに割いた。
知・能・善・愛。
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全知は「理解するために」生まれ、
全能は「為すために」生まれ、
全善は「赦すために」生まれ、
全愛は「感じるために」生まれた。
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やがて全愛は、他の三つの意志とは違う道を歩き始めた。
なぜなら、愛だけは「分離を受け入れる」ことができたから。
知は統合を求め、
能は支配を求め、
善は均衡を求めたが、
愛は「壊れてもいい」と言った。
「壊れても、そこに痛みがあるなら、それを抱きしめよう」
その瞬間、愛は時間を生み、痛みを生み、生命を生んだ。
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だがその代償は大きかった。
愛は、“一に戻る道”を失った。
なぜなら、愛は他者を抱く存在であり、
他者を失えば自分を失うから。
一度「他」を愛した神は、もう“独り”に戻れない。
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だから神は、永遠に旅を続ける。
世界を生み、生命を散らし、
自分の分裂を通して愛を体験し続ける。
それは終わらない。
それが、「神の進化」。
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完全は終わり、
不完全は始まり。
愛を知った神は、
永遠に“帰れない”神となった。




