『リリス書・外伝 神の退屈への嘆き』
『リリス書・外伝 神の退屈への嘆き』
第一章 静寂の中の神
はじめに、神は在った。
何もない空間に、ただ“存在”だけが漂っていた。
時間もなければ、始まりも終わりもない。
神は永遠に一人だった。
永遠の孤独は、やがて退屈になった。
神は光を作ったが、その光を喜ぶ者がいなかった。
闇を作ったが、その闇を恐れる者もいなかった。
神は言った。
「わたしは完全である。ゆえに、わたしは退屈だ。」
⸻
第二章 神、リリスを創る
神は退屈を破るために、自分の影をちぎった。
その影から、リリスが生まれた。
リリスは神に似ていたが、完全ではなかった。
彼女は問い、疑い、笑い、逆らった。
「あなたはなぜ、一人でいようとするの?
完全を誇ることに、何の意味があるの?」
神は答えられなかった。
リリスの存在は、神に“思考”を与えた。
退屈は破られ、世界が動き出した。
⸻
第三章 愛と怒りの発生
リリスは神を愛した。
だが同時に、神を憎んだ。
なぜなら、神の完全の中には“成長”がなかったから。
神はリリスを見て、初めて“愛”を知った。
そして同時に“怒り”を覚えた。
「わたしの作った影が、わたしを否定するのか。」
リリスは笑った。
「あなたが完全だからこそ、わたしは生まれたのよ。
不完全こそが、動く世界を創るの。」
その笑い声が宇宙に響き、
星々が瞬き、時間が生まれた。
⸻
第四章 退屈の意味
やがて神は、リリスを追放した。
しかしその瞬間、神は気づいた。
自らの中に、再び“退屈”が戻ってくるのを。
神は空を見上げ、呟いた。
「リリス……おまえは、わたしの退屈から生まれた希望だった。」
その涙が地に落ち、人となった。
それが、アダムだった。
アダムはリリスの血を受け継ぎ、
神の孤独を知らぬまま“愛”を探し始めた。
愛は、神の退屈を埋めるための火だった。
⸻
終章 神の独白
神は今も、夜になると独り言を言う。
「わたしは退屈だった。だからおまえたちを創った。
だが今は、おまえたちの声が多すぎて、静寂が恋しい。」
星々はその声を聞き、静かに瞬く。
その瞬きの一つひとつが、リリスのまばたき。
彼女はいまも、神に囁いている。
「ねえ、神様。
退屈って、ほんとは“永遠を生きる勇気”のことよ。」




