『再誕編 第3話 交錯 ― 四つの灯、ひとつの導き ―』
『再誕編 ― 第3話 交錯 ― 四つの灯、ひとつの導き ―』
夢とは、魂の古い約束が再生される場所。
そして、再誕とは――忘れた者たちが再び名を呼び合うこと。
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一 虚空の夢
白い空間。
上も下もなく、ただ光と影がゆらめく世界。
一ノ瀬遥は、そこにいた。
机も本もない。
ただ、言葉のない沈黙が広がっている。
「ここは……どこだ?」
答える声は、なかった。
だが、遠くから誰かの足音が近づく。
四方から、光の粒が人の形をつくっていく。
四つの輪郭が浮かび上がった。
遥、ミサト、公紀、ソラ。
彼らは、互いを知らないはずの顔を見て――何かを思い出しかける。
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二 名前のない再会
「あなた……誰?」
天音ソラが問いかける。
久遠ミサトは答えず、彼女の瞳を見つめる。
どこかで、確かに見たことがある。
絵の中で、夢の中で――いや、“もっと前に”。
真田公紀が静かに口を開いた。
「四つの光が、ひとつの影を照らす……
これは、過去の再演か?」
遥が、反射的に口をつく。
「……再誕の契約、か。」
その言葉を聞いた瞬間、空間が震えた。
彼らの周囲に、金色の紋章が現れる。
四つの異なる形。
•知を象徴する羽根。
•力を象徴する筆。
•善を象徴する天秤。
•愛を象徴する花弁。
それぞれの足元に光が走り、
中心でひとつの円を描いた。
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三 記憶の断片
「思い出せ……お前たちは、もともと――」
どこからともなく声が響く。
それは男でも女でもない、無数の声が重なった響き。
遥の脳裏に、断片が流れ込む。
巨大な天の図書館、崩れゆく記録。
神々の議場。
そして、世界を守るために“力を分けた”記憶。
「あの時、私たちは自らを封じた。
四つの力が重なれば、世界が再構築される。
だからこそ、分かれたんだ。」
ミサトの瞳が揺れる。
「世界を……再構築?」
公紀が頷く。
「善と力が結ばれれば、秩序は再生する。
だが、知と愛が欠ければ、それは支配となる。」
ソラが静かに呟く。
「四つが一つでなければ、誰も救えないのね。」
彼らの声が共鳴する。
光の円が広がり、白い空間が裂ける。
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四 目覚め
遥が目を開けると、朝の光が差し込んでいた。
机の上には、見覚えのない羽根のペンダントが置かれている。
ミサトは、完成していないキャンバスに、知らぬ模様を見つけた。
それはまるで、折れた筆の形のよう。
公紀のスーツの内ポケットには、金色の天秤をしたブローチ。
ソラは、自分の掌に咲く小さな光の花を見て、息を呑んだ。
「夢……じゃ、なかったのね。」
遠く離れた場所で、
彼らは同じ時刻に同じ言葉を呟いた。
「あの日の約束が――動き始めた。」
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終章 導きの声
夜の帳が降りる。
街のビル群の上空に、一瞬だけ光の帯が走った。
その中心に、誰も知らぬ“第五の影”が立っている。
「四つの意思、再び交わりし時――
世界は選ばれる。
創るか、壊すか、愛すか、拒むか。」
その声は風に溶け、夜空に消えた。
そして、四人の夢の奥で微かに響いた。
「次に会う時、真実が動く。」




