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神・宇宙の謎  作者: カイト
宇宙の謎
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「再誕編 第1話:出会い」

『再誕編 ― 第1話 導かれし四人 ―』


世界は眠っている。けれど、夢の奥で誰かが目を覚まそうとしている。




東京の夜は、あまりにも明るい。

ビルの灯りが星を追い払い、

人々の声が神の囁きを掻き消している。


だが――この夜だけは違った。


街のどこかで、

四つの灯がふたたび息を吹き返していた。




神楽坂の小さな喫茶店。

哲学者・**一ノ瀬遥いちのせ はるか**は、古びたノートを前にしていた。


「世界は、なぜ『意味』を欲しがるのだろう。」


彼はそう呟き、書きかけの言葉を見つめる。

意味を知ろうとする衝動。

それが彼の中に眠る全知の記憶だった。


その瞬間、ドアのベルが鳴った。

一人の女性が入ってくる。

大きなキャンバスを背負い、髪に絵の具をつけたまま。


彼女の名は――久遠ミサト(くおん みさと)。

絵を描くために生きる画家。

彼女の瞳の奥では、全能の残光が微かに揺れていた。




ふたりは偶然、同じ席の隣に座る。

ミサトが頼んだのは、ミルクティー。

遥が開いたのは、哲学書。


互いに言葉を交わさない。

ただ、時計の秒針が同じリズムで鳴る。


「何かを……思い出しそうだ。」

「何かを……描きたくなる。」


それぞれの心が、見えない糸で結ばれた。




同じ夜、別の場所。


地下の法廷。

裁判官・**真田公紀さなだ こうき**は、

無罪と有罪の間で、震える手を握りしめていた。


「正義は、誰のためにある。」


答えは風に消える。

それでも彼は、判決文にサインした。


その心の奥底で、

全善の律が微かに軋んだ。




夜の公園。

ひとりの女性がベンチに座り、

泣く子を抱いていた。


名前は天音ソラ(あまね そら)。

保育士。誰よりも他人の涙に弱い人。


子をあやすその指先から、

見えない光が零れていた。


それは、全愛の温もり。


「泣いていいの。

 泣くことは、愛の始まりだから。」




時刻は、深夜0時。

街全体が、ひと呼吸分だけ静まった。


遥のノートのページが、ひとりでにめくれた。

ミサトの絵の具が、ひとりでに混ざった。

真田のペンが、勝手に動き、

ソラの涙が、光に変わった。


四つの場所で、同じ瞬間に、

同じ言葉が――生まれた。


『始まる。』




それを誰も聞かなかった。

けれど、世界は確かに震えた。


ビルの隙間に風が流れ、

電線が唸り、

月が雲を割った。


そして、空のどこかで。


「目覚めの時が来た。」


古の声が、微かに響いた。



神はもう一度、歩き出す。

今度は人の姿で。愛を知るために。


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