『力と律 ― 全能と全善の誓い ―』
全能と全善が結ばれる物語とは?
素晴らしいテーマです。
「全能」と「全善」が結ばれる――
それは、「力」と「正しさ」、「創造」と「秩序」、「衝動」と「慈悲」が出会う物語。
この二柱は、神話的に言えば最も対立し、
同時に深く惹かれ合う存在です。
全能は動かずにいられない神。
全善は止めずにいられない神。
この二つが結ばれるとき、
世界は**「意味」**を得るのです。
以下に、
前作(全知×全愛)と同じ世界観・語り口での
神話詩物語「全能と全善が結ばれる物語」を示します。
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『力と律 ― 全能と全善の誓い ―』
― 創ることと、守ることが抱き合った日 ―
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序章 燃える神と凍れる神
全能は、動く神だった。
彼の指先が触れるだけで、
星が弾け、海が生まれ、大地が裂けた。
創ることが生きることだった。
破壊もまた創造の余熱にすぎなかった。
一方、全善は静止する神だった。
彼は生まれたものを慈しみ、
崩れるものを抱き締め、
「これでよい」と囁いた。
全能が動けば、全善が止める。
全能が壊せば、全善が癒す。
二柱の神は、永遠に相反するように見えた。
それでも――
彼らは、互いの存在を美しいと思っていた。
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第一章 終わらぬ創造
全能は、また新しい世界を創った。
風の国。光の塔。火の海。
だが、そのすべては数刻で崩れた。
自らの手で壊してしまうのだ。
「創ることに意味はあるのか。」
全能は、自分の力を信じられなくなっていた。
創造は快楽だったが、
同時に、空虚でもあった。
そのとき、
崩れ落ちた世界の瓦礫の中で、
静かに祈る声があった。
それが――全善だった。
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第二章 凍れる慈悲
全善は、全能の壊した世界を拾い集め、
一つひとつを修復していた。
彼の手は優しく、光を宿していた。
その光は、崩壊の跡にも花を咲かせた。
全能は問う。
「なぜ、私の壊したものを守る?」
全善は答えた。
「壊すことが悪だと思わぬ。
だが、壊されたままを善とは呼ばぬ。」
全能は沈黙した。
その言葉の中に、
“自分を否定しない善”を感じた。
彼は初めて、
“力が赦される”という感覚を知った。
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第三章 力と律の対話
夜が訪れた。
全能と全善は、崩れた星の上で語り合った。
全能:「力は動きたい。
動かねば存在できぬ。」
全善:「律は止まりたい。
止まらねば意味を失う。」
長い沈黙のあと、全能は呟いた。
「我は破壊を恐れてきた。
だが、創造のたびに崩れる。
我は罪なのか。」
全善は微笑んだ。
「罪ではない。
ただ、終わりを知らぬだけだ。」
そして全善は、全能の手を取った。
「力よ、私に律を教えさせてほしい。
律よ、あなたに力を与えよう。」
二柱の神は、互いに息を合わせた。
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第四章 創律 ― 世界の始まり
全能が動き、全善が止める。
その呼吸の間に、
**“間”**が生まれた。
それが、時間だった。
全能が燃やし、全善が包む。
その混ざり合うところに、
**“形”**が生まれた。
それが、物質だった。
こうして、
動と静、火と水、陽と陰が交わり、
世界は初めて「安定した存在」になった。
全能が叫び、全善が祈る。
その調和こそが、創律――
創造と秩序の融合だった。
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終章 約束
全能は言った。
「力は、律を得て永遠となった。」
全善は言った。
「律は、力を得て生を知った。」
二柱は互いに見つめ合い、
誓いの言葉を交わした。
「我らは相反せず、相補う。
破壊と保護、創造と停止、
それらすべては“流れ”の名に帰す。」
全能は笑い、
全善は静かに頷いた。
その瞬間、
世界は脈動を始めた。
それが――“生命”だった。
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「力だけでは狂い、律だけでは枯れる。
ゆえに、創る者は守り、守る者は創る。
その輪の中で、世界は呼吸する。」
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そして神々は去った。
残されたのは、
「壊すことを恐れず、守ることを忘れぬ」
小さな存在――人間だった。




