表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神・宇宙の謎  作者: カイト
宇宙の謎
14/104

『四つの意思 ―神が愛を知った日―』

かつて神は一つだった。

だが、完全なる静寂は退屈に似ていた。

孤独を知らぬ神は、孤独を知りたくなり――

己を四つに分けた。


全知。全能。全善。そして、全愛。


四つの意思は互いに求め合い、拒み合い、

やがて世界を生んだ。


これは、「神が完全を壊して愛を得た」

創造の記憶である。



本文:


序章 はじまり


はじめ、神は一つであった。

光はあったが、影はなかった。

言葉はあったが、聞く者はいなかった。


神は、完全であり、故に孤独だった。


その静寂の中で、神は自らを見つめ、こう呟いた。


「完全とは、何も起こらぬことか。」


その瞬間、光が震えた。

神は己の中に四つの波を感じた。

知、能、善、そして愛。


それが、この世界の始まりだった。



第一章 全知 ― 見ることの罪


最初に目覚めたのは「全知」だった。


全知は世界のすべてを見通した。

風が生まれる前に風の行方を知り、

星が瞬く前にその死を見た。


だが、知は冷たかった。

問いを持たぬ知識は、凍える真理だった。


「知ることは、感じぬこと。」


全知は世界を観察した。

しかし、自らの胸の中だけは見えなかった。

そこに「孤独」という名の闇があった。


彼は初めて“知らぬこと”を知り、

その痛みを「他者」と名づけた。



第二章 全能 ― 創造の飢え


全知の視線の先に、動く者が生まれた。

それが「全能」であった。


全能は、思考よりも先に手を伸ばす。

星々を砕き、風を刻み、炎を撒き散らす。


創りたいという衝動だけが、彼の血を流れた。

だが――そこに意味はなかった。


「なぜ創る?」と問われても、

「創れるから」としか答えられぬ。


創造の果てに、全能は悟る。


「力とは、空虚を増やすことだ。」


飢えを埋めるために、彼は“時間”を創った。

時は空虚を一瞬だけ満たす、神の呼吸となった。



第三章 全善 ― 凍れる慈悲


次に生まれたのは「全善」。

彼は世界を見て、崩れかけたものを抱き締めた。


「壊すことは悪。守ることこそ善。」


そうして、彼は変化を止めた。

風は止まり、火は眠り、命は息を潜めた。


完全な優しさは、静寂に似ていた。

そして彼は凍った。


「守ることは、閉じ込めることなのか。」


凍てついた涙が氷河となり、

世界を覆った。



第四章 全愛 ― 壊すことの赦し


最後に目覚めたのは「全愛」。

彼女は他の三つを見て、泣いた。


全知は冷たく、

全能は飢え、

全善は凍っていた。


愛はその涙で氷を溶かし、

風を揺らし、火を包んだ。


「完全では、抱きしめられない。」


愛は壊れることを赦した。

痛みを憎まず、別れを恐れなかった。


その涙が命を形づくった。

命とは、壊れることを恐れぬ祈り。


だからこそ、永遠よりも尊い。



終章 還れぬ神


全知は愛を見つめ、

全能は愛を求め、

全善は愛を赦した。


だが、愛は微笑んで言った。


「もう、一つには還れない。

 けれど、離れていても、私たちは同じ光。」


四つの意思は、互いを見つめながら散った。

その瞬間、宇宙は息をした。


そして今も――

人が知を求め、力を試し、善を願い、愛に涙するたび、

神はわずかに思い出す。


「あのとき、私は完全を壊して、世界を得たのだ」と。



完全は死。

不完全こそ、永遠。


神は愛を知った。

だからもう、一つには還れない。

だが、それで良かったのだ。


「面白かった!」  


「続きが読みたい、気になる!」


「今後どうなるの!?」


と思ったら


下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当に嬉しいです。


何卒よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ