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2 邂逅

 桜はリビングのソファーでウトウトしていた。

 つけっぱなしのテレビから歓声が聞こえる。だんだんと大きくなる歓声に、うるさいなぁと、横たわったままうっすら目を開くと、なぜかとても眩しかった。逆光の中、獣のような形をした一つの影がそばで動いた。

青斎(せいさい)、俺の背に乗れ。お前をレジェンドにしてやろう」

 尊大な口調の声が、脳内に響いた。

(青斎って誰…)

 歓声、と言うよりは喧騒が広がっていた。まるで戦場のようだ。

 獣とは別のもう一つの影が、

「歴史的瞬間にふさわしい演出にしてくれ」

 そう言って獣に跨った。

「桜、お前の狛馬(こま)を借りるぞ」

 青斎と呼ばれた男は、言いながら手に持った旗を掲げた。高々と突き上げられたその手首に、陽の光を受けて、美しい青い石が輝いていた。

 ◆◇◆

(また、変な夢を見てしまった)

 ぼんやりとしたまま枕元に手をやると、いつもある筈の場所にケータイが見つからなかった。

「あれ、どこいった」

 しばらく頭の辺りを弄ると、すこし覚醒した頭で、今度は本格的にケータイを探そうと、体を捻って枕元を見た。と、見慣れない白い古びた枕が目に入った。

「なに、この汚い枕」

 よく見ると、掛け布団もやはり無地の薄汚れた白、ペラペラで、肌触りもゴワゴワしていた。普段の薄いピンクの布団カバーは洗濯しているのだろうか。にしても、これは酷すぎる。

「何をしてる」

「ひゃっ」

 突然声をかけられ、桜はベッドの上でビクリと跳ねた。

 顔をあげて相手を見て唖然とする。夢から覚めたはずなのに、いるはずのない人物が立っていた。

「なんで由羅(ゆら)?」

 そばに立って自分を見下ろす人物を指差しながら、桜は不思議な気持ちで呟いた。変な夢を見て目が覚めたと思ったら、まだ夢の続きだった。

「何故俺の名を知っている。お前は何者だ」

 険を含んだ言い方に、桜はやや怯んだ。

「何故って、何者って…、私は桜です」

 これは自分が登場するタイプの夢だなと思ったが、初めてのパターンに戸惑った。今までの夢では、自分が夢の中にいると認識しておらず、考えや言葉に迷いはなかった。だが、今の問いに、桜は夢の中の人物相手にどう答えていいかわからなかった。

「私たち、仲間って言う設定じゃなかったの?なんで知ってるのか、こっちが聞きたいよ」

 由羅の乏しい表情に、困惑の色が見て取れた。

「まだ知り合う前って事?そう言えば、髪型が違うもんね。いや待って、一緒にいる夢はあったけど出会いのシーンがまだ無かったから、今がそれ?」

 今まで見た夢の中の由羅より前髪が長く、目がほとんど隠れていた。よく見れば後ろの髪も長く、少し顔周りに後毛を残して、後ろで一つに縛っていた。

「ああ、国王軍から脱走したから顔隠してるのか」

 確か初期はそんな設定だったような…、思いつくまま口にすると、聞こえていたのか、また別の二人の男が現れた。

「おい、お前今なんつった?」

 柄が悪そうなこっちの男は

雷太(らいた)?」

 確認する様に呟いた。指さされた相手は驚きの表情を浮かべた。

 さらに後ろで立っている、いかにも格闘家のようなガタイの大男は

千寿(せんじゅ)もいる」

 指差しながら言った瞬間雷太に胸ぐらを掴まれた。

「桜といったか。なんでお前が俺たちの名前を知っている!!」

「く、くるし…」

 息苦しさと驚きで、桜は言葉を発する事が出来ず、ただ瞠目して間近に迫った雷太の顔を見つめるしか出来なかった。胸ぐらを掴まれたのが初めてなら強面の人に恫喝されたのも初めてだ。

「おい、何とか言ったらどうだ!あっ、いててっ」 

 桜は胸ぐらを掴んでいる手を思い切り抓った。英玲奈の為に覚えた護身術が、こんなところで役立つとは思わなかった。

 抓られた雷太は、いよいよ怒りが頂点に達したようで、鬼の形相だ。。

 力任せに桜の腕を引き立ち上がらせると、部屋の端にあるテーブルまで引きずって行った。

「痛い!」

 片手を後ろに捻られ、もう片方をテーブルに押さえつけられる格好になった。

「どうやってこの部屋に入り込んだ!何故、俺たちの名前を知っている!何故、脱走兵だと知っている!」

 痛みに苦悶の表情を浮かべていると、耳元で声が響いた。

「答えなければ、指が一本ずつ無くなるぞ」

 雷太が言うと、千寿が短剣を構えて側に寄ってきた。

(指が無くなるって言った?)

 テーブルに押し当てられた手と千寿の短剣を見て、桜の背筋は凍った。

「じ、冗談でしょう?」

 掠れた声しか出なかった。上擦って上手く喋れない。

「一本落とせば、冗談かどうかわかるか?」

 雷太の低く静かな声が聞こえた。

(そんな、まさかでしょう?そんなバカな。私の頭、とうとうこんな夢まで見るようになった?)

 桜は混乱して言葉が出なかった。

「質問に答えてもらおう」

「し、質問って、な、なんだっけ」

 桜はパニックになって聞き返したが、この後に及んで惚ける相手に雷太はとうとう我慢ならない様子だった。

「なるほど、そこまで強情になるか。なら無くなった指を見て後悔するがいい!」

「待って、だってこれは夢でしょう?なんで知ってるかって、全部夢で見たからに決まってるでしょう?なんで夢の中でこんな目に遭わないといけないの!」

 叫ぶ桜を無視して、千寿は無言で短剣を振り上げた。桜の混乱は頂点に達した。

(これは夢!夢なら痛くないはず!)

 桜は目を閉じ目覚める瞬間を待ったが、目覚しく回転した頭は、また別の方法を桜にもたらした。刀が振り下ろされるまでの刹那、桜は目一杯体を逸らせると、

(刺される前に目覚めよう!)

 頭を思い切りテーブルに叩きつけた。何故それで目覚めると思ったのかと聞かれると、桜は答えられない。混乱が頂点に達した末の行動だ。

 次の瞬間、渾身の頭突きを食らったテーブルはバリバリっと嫌な音を立てながら二つに裂けた。割れたテーブルと共に床にベシャリと崩れた桜は、慌てて起き上がると、自分の指を確認した。血だらけだった。

「あ、あわわ、血が、指が…」

 間に合わなかった、取り返しのつかない事になったと震える桜に、その狂気じみた行動を唖然と眺めていた由羅は冷静に指摘した。

「違う、それは額の血だ」

 あとの二人は呆然と桜を眺める事しか出来なかった。

「額?あっ、ほんとだ血が。じゃあ、あはは、痛くないからやっぱ夢だ。あはははは」

 血だらけで笑う少女の姿に三人の猛将は震えた。戦場を駆り、幾つもの修羅場を乗り越えてきた男達を戦慄させ、桜は再び気を失った。

 ◆◇◆

「どうするよ」

 ギシギシと椅子を傾けながら雷太が問う。

「連れて行くしかないだろう」

 腕を組んで答える由羅。このやり取りは、これで三度目だった。千寿も腕を組み、視線は机に落としたまま、言葉を発する事は無かった。

 宿場の一階の食堂だった。四、五人程で囲めるテーブルが十台、どれも客で埋まっていた。昼間から酒を煽る者も多く食堂は賑やかだったので、特に声を潜めずとも周りに聞こえる心配は無さそうだった。

「あんな頭のおかしな女、連れて行けるわけないだろう。だいたい、ちょっと留守をした間に勝手に部屋に入り込んで倒れてたんだ。介抱する義理なんかなかったんだよ」

 雷太が心底嫌そうな顔で呟く。ありえない、と。

「じゃあ置いて行くのか、俺たちの素性を知る者を」

 それまで無言だった千寿は、低く呟いた。

「千寿も連れて行くのに賛成なのか」

 雷太は幾分トーンダウンして聞き返す。千寿までがそう言うなら雷太には分が悪い。千寿は机に視線を落としたまま、自問するように呟く。

「本当に頭がおかしいんだろうか…」

「何言ってんだ、千寿!あれがまともに見えるのか?あんな血だらけで笑ってるような女…」

 言って雷太は身震いした。戦場で多くの血を見てきたが、こんな怖気の走る感覚は初めてだった。

「雷太はあの娘が怖いから連れて行きたくな…」

「そんなわけねーだろ!」

 テーブルを叩き千寿の言葉を遮ると、流石にいくつかの視線が集まった。由羅は目で静かに、と諭した。

「あの娘は、夢で見たと言っていた。指を落とされそうになりながら叫んだんだ、あの場面で嘘はないだろう」

「そうだな、あれは心底恐怖に支配された者の目だった。拷問に耐える訓練を受けた者とはとても思えない」

 由羅の言葉に千寿が応じた。

「じゃあなんだ、あれがハクだとでも言うのか?」

 雷太の問いに由羅も千寿も無言になった。夢見や先見、巫術の能力を持つ者を総じて白華人、又は白華仙と呼んだ。それを略して、通称はハク、ビャクなどと呼ばれている。全国に十人いるかいないかの稀有なものではあるが、この国では広く認知された存在だった。

「あいつは黒髪で、とても透き通るような白さとは言えない肌色だった。それにあの間抜けた面、あんなハクがいてたまるか」

 白華人は全体的に色素が薄く、髪も肌も白く、その瞳までがごく薄い茶色、または灰色で、それは一目で只人ではないと見て取れる程だった。

「ハクではないだろう。しかし、夢見の才はあるんじゃないか?でなければ、説明出来ない」

 由羅は桜とのやりとりを思い出しながら言った。

「夢見だからと言って、無害とは言い切れないがな。我々の情報を簡単に与えるのは危うい」

 千寿は独り言のように呟いた。

「じゃあどうするんだよ」

 雷太の四度目の問いに、全員押し黙った。しかし何度聞かれようと、由羅には置いて行くと言う選択肢は考えられなかった。

「そもそもあいつが何者であろうと、八角峠をあんな小娘連れて越えられないだろうが!」

「八角峠を渡られるんですか?」

 雷太が少し大きな声で苛立ったように言うと、雷太の背後から宿主の男が割って入った。

「あなた達は相当腕がたつ護衛とお見受けしますが、十分お気をつけください。ここ数ヶ月は、これまでにないくらい道中が荒れてましてね、荷物がほとんど届かない」

「そんなに酷いのか」

「盗賊が力を蓄えてきているのに加え、峠向こうは国王様の領地なんでね、国境警備の者も賄賂でまともに街道を警備しようとしない。荷も届かないし、この街は寂れていく一方です」

 宿主は深くため息をついた。

「店主殿、ちょっと聞きたいのだが、この宿に奇妙な格好の娘を泊めなかったか?膝までしかない衣装に腰までしかない羽織りを着た十かそこらに見える娘を」

 由羅の問いに宿主は傷ついたような表情を浮かべた。

「肌を好んで見せる娘は女郎か、似たような事を生業としている者でしょう。もちろんそのような娘を泊める事はありません。誰かが連れ込んだのでしょう」

「近くに遊郭があるのか?」

「もう少し離れた安宿の辺りには何軒かあります。あの辺りは客層が悪く治安もあまり良くない。ここらは格式高い宿が多かったのですが、近頃はチンピラのような護衛兵が跋扈しております。金さえ払えばこちらも文句は言えない。きっとそんな者たちが自室に連れ込んだのでしょう」

 宿主が話し終えると同時に、近くのテーブルから女性の悲鳴と下卑た笑い声が上がった。思わずそちらに目をやると、給仕の娘が泣きそうな顔で固まっていた。男の一人が娘の腕を掴んで叫んでいた。

「金なら払うって言ってんだろ!」

「嘆かわしい、ここは遙か昔は天彾様も滞在された由緒正しき宿ですのに」

 そう言ってそのテーブルに向かおうとした宿主を押し除け、雷太がぐいっと前に出た。

「俺が静かにさせてきてやる」

 指をポキポキと鳴らしながら歩いていく雷太を、宿主は戸惑った様子で見ていた。

「あの、どうするおつもりですか」

 不安げな店主に、由羅は雷太の行動など意に介さず話し続ける。

「雷太に任せておけばいい。話の続きだが、この宿には風采の良くない者が出入りして、時々遊女を連れ込むんだな」

「残念ながら、その通りです。昔天彾様が書かれた護符が各部屋に貼られてるんですが、罰当たりな事でございます」

「護符?」

「はい、護符と簡易な祭壇を各部屋に備えておりますよ。窓の上辺りに護符が貼られ、鏡の下に備え付けた黒い机に略式の召喚陣と蝋燭が置かれてあったでしょう」

「ああ、あの机…」

 由羅は呟きながら、今は真っ二つに割れた無残な姿を浮かべた。

「祭壇…それは罰当たりだな…」

 由羅が言い、千寿は無言で手元の茶をすすった。

 二人の気も知らず、店主は少し得意げに話す。

「護符には不思議な文字が書いてあったでしょう?我々には解読出来ませんが、世の繁栄を謳った文言が書かれているそうです」

 気づけば喧騒はおさまり、宿主は件のテーブルに目をやる。すると、そこにいた三人のチンピラ風情の男達は床に転がり静かになっていた。食堂にいた者全て、何故か助けられた給仕の娘までが、雷太に恐怖の眼差しを向けていた。

「静かになり過ぎちまったな」

 皆の刺さすような視線を受け、雷太は机に戻ってきた。

「雷太、あの三人はどうなったんだ」

「寝てるだけだ。なんなら今のうちに外に放り出してやってもいいが、どうする?」

 宿主はふるふると頭を振った。

「いえいえ、もう十分でございます」

「部屋にあったあの机は、祭壇だったらしい」

 由羅の言葉に、雷太は一瞬目をパチクリさせた。

「あの机?ああ、あの机か。なるほど、祭壇…」

 雷太は渋い顔をする。面倒な事しやがってと、本人がいたらまた胸ぐらを掴む勢いだった。

「何か不都合がございましたか」

「いや、何でもない。こちらの話だ。騒ぎも鎮まった事だし、我々は部屋に引き上げよう」

 由羅が腰を浮かすと、宿主は頭を下げた。

「助かりました。天彾様縁の宿と言うのに最近はこんな有様で、情けない限りです」

 そう言って再度お辞儀をして去り際に、ふと思い出したように付け加えた。

「そうそう、部屋にあります脚にヒビの入った椅子、張り紙にも書いておりますが、明日修理の者が参りますのでそれまで使用しないようお願いしますね」

 言うと、今度こそ立ち去った。由羅は、使用禁止の文字と、今宿主が話した旨が書かれた張り紙をされた椅子を思い浮かべ、祭壇にもヒビが入っていた事にして修理してもらおうか、などと考えた。すると、ずっと気配を絶って茶を啜っていた千寿がポツリと呟いた。

「あの娘は文字が読めるのだろうか」

 雷太と由羅は顔を見合わせ、慌てて立ち上がった。これ以上部屋の物を破壊されるわけにはいかなかった。

  ◆◇◆

(人生最悪の目覚めだ)

 ベットに上半身を起こし部屋を見回した桜は泣きそうな気持ちになった。

「何でまたこの夢…、いたた」

 顔を覆った桜は、指が触れた額あたりに痛みを感じ顔をしかめた。慎重にそっと触れると、包帯のようなものが巻かれていた。どうやら、納得し難い事に、夢ではないらしい。いや、逆にまだ夢の中という事か。

 部屋に人の気配が無かった。その代わり、階下からは賑やかな声が聞こえてきた。

(下にいるのかな。置いていかれた…、って事はないよね)

 指を落とされかけたが、手当てをしてくれたところを見ると、あれは単なる脅しだったのかもしれない。

 夢で見た限りだが、彼らの身元は知れている。他の人に託されるより、彼らに面倒見て貰う方がマシに思えた。大声で泣き出したかったが、ここには他にどんな人物がいるかわからない。由羅達が素性を隠しているなら、騒がれては困るはずだ。彼らが戻ってきたら落ち着いてもう一度話し合おう、と思い至って桜はそっとベッドから降りた。

 改めて部屋を見渡すと、桜が真っ二つにしたテーブルが部屋の隅に横たえられていた。近付いてみると、何か模様が書かれているのが見て取れた。

(何処かで見たような…)

 それほど大きくないテーブルを引きずって、横倒しのまま割れ目を繋げてみた。五芒星の頂点に沿って円が描かれ、さらに一回り大きな円、内側の小さな円の円周には文字だか模様だか良くわからない物がいくつも描かれていた。

「魔法陣みたい」

 呟いて、ハッとする。ここに来る前にも同じ事を思った筈だ。そう、桜が吸い込まれたあの鏡の向こうで、女の人がこんな模様の中で何事か祈っていた。その意味をしばし考えてみたが何の解決策も見出す事はできず、桜は他に手掛かりがないか部屋を見渡した。そこで桜はある一点を吸い寄せられるように凝視した。ある筈のないものが、不思議な形でそこにはあった。

(日本語?) 

 心臓が跳ねた。この世界の文字は読めない設定だった筈だ。なのに、桜の理解できる文字がそこにはあった。

 桜はそっと窓に近づく。明りとりの戸板が上げられ、部屋は明るかった。窓の上辺り、かなりの年月を感じる黄ばんだありがたい体裁のお札に、ありがたみのない文字で二行、

 『世界がずっと平和でありますよーに♡

 もしこの文字が読めてしまう人は 裏を見て』

 そう書かれていた。

「この文字が読めてしまう人…」

 お札は木の額に入れられて、壁に打った釘に紐で引っ掛けられていた。取り外さなければ裏を見ることが出来ない。

 辺りを見回すと、一脚の椅子が目に入った。桜は急いでそれを手近に引いた。何か張り紙がしてあったが、こちらは崩した漢字のような字ばかりで読めなかった。

 椅子に乗ると左手を窓枠にかけ、右手を目一杯伸ばす。札は掴めたが、釘から外せない。背伸びをすると、椅子がミシッと音を立てた。

(あと少し)

 軽くジャンプすると、紐が釘から外れた。

「取れた!」

 札を掴んだ瞬間、足元からミシミシっと音がして体が傾いだ。慌てて突き出した空いた方の手は、明かりとりの跳ね上げ板を軽く押して、そのまま体ごと窓の外へ飛び出した。

「危ない!」

 部屋へ駆け込んできた由羅がめいっぱい手を伸ばしたが、何も掴む事は出来なかった。

(由羅!)

 悲痛な叫びが声になる事はなく、桜は衝撃に備えてぎゅっと目を瞑った。


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