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鼓動が聴こえる、その時まで  作者: UrANo
立つ鳥跡を濁さずと言うが、実行するのは難しい
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─5─ 本音はバフがかからないとなかなか言えないものだ

こんにちは、もしくはこんばんは。

UrANOです。

珈琲を控えるようになってからアールグレイを飲むようになりました。

「そういえばクレア、旅支度はしてあるか? していないと思って時間を与えたのだが……。まぁ、今日は遅い。出発は明日だろうな」

「え?」

「神具を与えられた『葬送者』は数日以内に旅に出る決まりだからな。ルヴァンもそうだろう。……いや、あいつは特例だったな」


 そもそもこんなに早く旅に出ると思わなかったから本当にバッグとか何も用意してないんだけど?


 数時間後。リアさんとグランオニーチャンに先程あったことについて話したところ、2人揃って色々な物をくれた。

 

 リアさんは化粧とか櫛とか入ったポーチとマナを込めるとテントになる袋を、グランオニーチャンは自作の陣を組み込んだバッグと……大金。


 バッグは見た目に反して物が大量に入るらしい。本人曰く5~6人くらいは入るとの事。私が愛読家だから大きめに作ってくれたのかな。それはかなり嬉しいんだけど…………問題はお金なんだよね…………。


「ねぇ、オニーチャン……こんな大金貰えないよ……。多すぎない?」


 するとグランオニーチャンは私の肩を掴んで言う。


「いいか、クレア。外にはたくさんの食べ物がある。食べ物は国を示してると言っても過言では無い。俺たち『葬送者』は体の性質上毒は滅多に効かないが感知はできる。そういう国に行ったらすぐに逃げろ。逆になんの問題もなく美味い飯出してくれるところは比較的安全だ」


 …………なるほど。国の食べ物で治安とかが分かるってことか。確かに理にかなってるけど。


「というのは建前で、クレアに美味しいものや気になるものを気にせず買って欲しいってのが本音だ」


 ガサゴソ。()()()()()がふと頭によぎり、バッグに付いているポケットを漁ってみる。うん。確定だね。確かに5~6人入るね。()()()()()()()()()

 私はため息を付いて言う。


「私達『葬送者』は少食だし旅の途中で仕事とかするからさ、あとバレたら神父様に怒られると思うよ?」


 グランオニーチャンはしゅんとしてしまったがリアさんの説得もあって当初の4分の1となった。それでも大金に変わりないが、討論がヒートアップして決闘して勝った方の意見を採用する、と言って戦い始めた時は驚いた。全員で正座する羽目になってしまう。それは阻止しなければっ。旅立つ前日に正座地獄は精神的にキツイ。


 どーどー。2人とも、落ち着いて、頼むから。2人が本気で戦ったら教会半壊しちゃうから。


 正直どっちが強いのか分からないのでとっても気になるけどそれはまた今度、しばらく旅をして帰ってきた時に頼んでみようかな。勝てなくてもリアさんと引き分けするくらいには強くなっていたらいいな。


 旅と言えば、気になることがあったんだった。


「オニーチャンって『葬送者』だから旅した事あるんだよね?でもこの教会にずっといるけど……何か理由とかあったりする?」


『葬送者』は例外無く旅に出ると神父様は言っていた。そしてここ1年でルヴァンくん以外誰も他の『葬送者』は教会に戻ってきていない。そもそも『葬送者』自体が長寿で旅をしているうちに時間の流れに鈍感になってしまう人が多いからというのもあるだろう。


 今まではこの話題はそれとなくはぐらかされてしまったが、今日は少し教えてくれるだろうか。


「あー。俺は結構古株だからな。一応神父様の補佐もしてるし。……あと新しく『葬送者』が生まれたらそれを監視するって役目もあるんだよな」

 リアさんがグランオニーチャンに白けた目を向けながら言う。

「それ言っていいんですか?」


 あ、やべ。って顔してた。グランオニーチャン絶対言っちゃいけないこと言っちゃったって顔してた。

 本人は「まぁいいだろう、旅立つ前だし」とヤケクソ気味に言ってるが。

 

「というか、なんで監視する必要あるの?」


 一瞬。

 2人の雰囲気が変わった。

 でも一瞬だったから気の所為かもしれない。


「だって普通に考えていきなり知らないところにいたら怖いだろ? だから俺達が新しく生まれた『葬送者』に安心して過ごして貰う為に仲良くして、そんでもってリア(そこのヤツ)と新人に色々教えるってわけ。『葬送者』の家族ってほど重いくくりじゃないけど仲間みたいなもんだと俺は思ってるからな」


 何かを隠してる気がするけど言ってる事は本心だろう。

 たしかに『葬送者』は家族はいない。本の中の話では家族というものがあった。お父さん、お母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん、弟、妹、……でも特に気にした事も羨ましく思った事もなかった。

 オニーチャンが似たような事をしてくれたから。だってオニーチャンの事をオニーチャンって言ってるのが証拠だもん。


「私は、家族みたいに思ってるけどなぁ……。オニーチャン達は違うの?」


 少し恥ずかしいが旅立つ前日バフがかかってる私は止まらなかった。気になったままなのも良くないと思ったし。


「あぅ………………」


 パタン。

 グランオニーチャンが真っ赤になって倒れた。

 湯気が出そうな程真っ赤だった。ここまで感情的なグランオニーチャンは初めて見る。

 リアさんは横でニヤニヤと笑っている。


「ほーら、言ったでしょ。アンダーリビオン様はアンタが思ってるよりそういう事ははっきり言う人だよ。臆病なアンタと違ってね」

 って言ってグランオニーチャンをつんつくしていた。


 意外な一面とはこういう時に使うんだなぁ。


 グランオニーチャンは実はかなり謙虚でリアさんは割とフランクに話すんだ。同じとこで過ごしても分からない事って結構あるんだ。


 するとグランオニーチャンは勢いよく立ち上がりリアさんを指さしながら言う。ちなみに顔の火照りは健在だ。


「そ、そういうお前もクレアの中で家族の1人として認識されてるからなっ……!」

「私はアンダーリビオン様の師匠でもあるんだよね。師匠も家族と似たようなものでしょ。」

「うっ、そういうものなのか………?」

 なんかまぁた討論が始まった。グランオニーチャンが劣勢だけど。

 

「私はみんなと違って1年しか一緒にいなかったけど、それでもみんなの事大好きだし自慢の家族だって言えるよ。」

 

 その一言でグランオニーチャンは照れがまた限界に達し、アワアワとしている。リアさんはポカンとしていたけど普段隠れてる耳が真っ赤になっていた。もちろん私も照れていた。


 そして笑った。

 普段言えない事を言う機会だったし、しんみりとした別れは嫌だったからこれでよかった。いや、これが1番よかったんだ。が、


「そっかぁ……クレアももう旅に出るんだなぁ…………。初めて会った頃を今でもすぐに思い出せるな」

「もう少しいて欲しいと思ってしまいます…………。しばらく静かになりそうですね……」


 ………………ん? なんかかなりしんみりとしてない? グランオニーチャンに至ってはなんかもう、せっかくのイケメン顔が泣きそうな顔になってるというか決壊寸前だしリアさんも似たような感じになってる…………。「送り出す時は笑ってようって言ってた本人が泣きそうだけど?」「お前だって珍しく泣きそうだぞ……っ」


 どうしよう……。支度出来てないから旅に出るの明日なんだけど………………。

 と、後ろから神父様が音もなくやってきた。


 すんごい複雑な顔をしていた。基本真顔で子供達に怖がられているからモザイクがかかるレベルで表情がハッキリと分かるのは珍しい。


「何してるんだ? グラン、シスターティアマト。クレアが旅に出るのは明日だぞ。ルヴァンの時とは違って女の子を夜中に外に出すわけないだろう」


 神父様っ……。〈神具授与の儀〉の時に心配するとことがないって言ってたのに……。顔に出てないけどそんなに心配して…………。

「狙って襲ってきた人達が可哀想だろう」


 ……………………。


「「「ムード無ッッッ!」」」

ここまで読んで下さりありがとうございます。

旅の準備がほとんど整ってしまいましたね。

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