─3─ 反射神経を舐めるでない
こんにちは、もしくはこんばんは。
UrANoです。
トマトジュース片手に編集中です。
今回なんと挿絵があります。描きました。
しん、と静まり返った廊下を歩く。
現在外は日が沈み、星々が輝き始める時間となっております。私が好きな時間でもあります。
昼頃に1回香部屋へ行ったのだが、神父様は私の周りをうろちょろして一言。
「夜になったら香部屋に来なさい。それまでは自由にしていいぞ。……教会内部の物を壊さなければ。」
との事。
まさかの説教回避だ。
神父様は『葬送者』なのでもちろんマナを感知する事ができる。なのでうろちょろしたのは確認の為だろう。
時間ができたのでリアさんと鍛錬したりグランオニーチャンと食べ物の話で盛り上がったりしてたらいつの間にか夜になっていた。床に穴を開けて花瓶を割った後から新しく教会内部の物は壊していない。
そして今、私は香部屋の前にいる。本日2度目で人生では両手で数えられるくらいになった。
「クレア。この街は『葬送者』が生まれる街だ。だが、この教会には『葬送者』は数人しかいない。何故か分かるか?」
『葬送者』は「魂の暴走」を唯一浄化する事ができる人達だ。1人でも多く浄化し、穢れの蔓延を抑える為に1人前になった『葬送者』は旅に出る。半年前まで教会にいた青年が旅に出た理由もコレだ。
……だからマナの話をしてたのか。
「ある程度『奇跡』を覚え、発動する事ができる」、「マナが安定している」これが1人前の『葬送者』である最低条件だ。
確かに私は旅に憧れを持っている。
自由気ままに自分の好きな所を回って色んな人を見る事ができる……。物語の主人公がそこで人助けをする話があったなぁ。私には縁のない話だと思ってたけどよくよく考えたら縁しかないことに今更ながら気がついた。
しかも目的がある意味世界の危機を救う為……ときた。娯楽小説より壮大だ。現実は小説より奇なりというけど……。
『葬送者』が「魂の暴走」に侵された者を浄化するのは言うなれば天命の様なものだ。
『葬送者』は死後生き返った人間を指す。現世の人と同じ様に過ごす事ができている。ただの人間に浄化する力を与えている……。そう、それが天に与えた使命だ。
簡単に言うと「生き返らせて力を与えたから害虫は自分達で何とかしてね」みたいなものだろう。個人的にそう思っているだけだが。
「魂の暴走」は暴走してるのは元生者の欲がその名の通り暴走している。
本来、人間は死後魂が天に帰るのだと言う。しかし魂……記憶は身体の至る所に存在する。死者に未練がある程魂と身体の結びつきが強くなり「魂の暴走」を発症? 発生? させてしまう可能性が高いのだ。
もはや生前の姿と程遠い形になってしまうらしい。マナが穢れ、周りの生物や植物に汚染する。
まぁ私は天に住んでる? 人が地上の人間の事をどう思ってるか分からないけど。何とも思ってないかもしれないし。
だから旅に出るという結果のみを見れば物語の主人公となんら変わらない。
「神父様、私そんなに強くないですよ?」
まだ1年しか教会にいないし、マナが安定したのも最近だし、……でも『奇跡』は結構すんなり使えたんだっけ?
「そうか……」
神父様が後ろを向いて何かを探そうと……して、ノールックでいきなりナイフを投げてきた。
「ヴぇ?!」
意味の無い気の抜けた声とは裏腹に、私の体はこの1年近くリアさんにしごかれてきた動体視力と運動神経のおかげで太ももあたりに仕込んでる暗器で軌道をズラし、後ろの地図にぐさりと刺さった。
「……護身術はやり過ぎたか…。シスターティアマトの教育の賜物だな……。やり過ぎな気がするが」
神父様? 私が反応できなかった場合どうするつもりだったの? え、怖。
「恐らくクレアより強い人はそうそういないな。マナも問題なさそうだ」
神父様はそう言い歩き出す。
ポカンとしてると「ついてこい」と目で圧をかけられたので後ろの地図を気にしつつ神父様について行く。地図穴空いちゃったけど……いいのかな…………。私悪くないし私が原因じゃないからこれは破壊に判定されないはずだ。
2~3分程歩いただろうか。……ん? 香部屋から出てないのにそんなに歩く? 別に隠し通路があった訳じゃないし。なんか神父様が進む度に部屋が大きくなってる?
突然神父様が立ち止まる。突然だったので背中にぶつかった。
「わぷっ」
辺りが突然暗くなり驚いたのもつかの間、淡い光が円状に浮かび上がっていた。中心に行くにつれて明るくなっている。
よく見ると何重にも重なった大きな陣だった。そしてその陣の中心にあるのは、香部屋でよく見たアレだ。
「あ、神父様の杖(仮)だ」
イタズラ目的で侵入した時に何本か置いてあった木製だと思われる茶色い杖。
「クレアの瞳は結構珍しいからコレクターに売りつけたらどのくらいだろうな。気にならないか?」
「……ヒェッ」
例えがリアルすぎて怖い。私は冗談で言ったのに………………。
ちなみにこれがあまり気にしないでいい話では無いのだ。神父様は片目が義眼。もう片方は詳しく聞いてないが殆ど見えていないらしい。『奇跡』を常時発動して空間を把握しているから視えている、という娯楽小説の主人公もびっくりのチートだとグランオニーチャンから聞いた。
「冗談で言ったがコレクターには気をつけろ。我々『葬送者』は体中全てがマナが実体化するほど凝縮している。どこの部位でも全て喰われるぞ。特に眼だな。移植することによってマナの感知ができるようになるだけではなく、『葬送者』と同じとまではいかないが寿命が200年程伸びる。適合すればの話だがな。そうだな……シスターティアマトがいい例だな」
冗談かーい。
……それよりも。
「え、リアさんが……っ?」
つまりリアさんは元はコレクターの? ん? どういうこと?
「彼女はとある国のご令嬢でな、病気で目が見えなくなった事に胸を痛めた両親があの手この手を使って何としても娘に外の世界をもう一度見せようとした。そして見事適合したが、時が経つにつれ見た目が全く変わらない娘を呪い子だと散々言った挙句、捨てたと言う訳だ」
だからリアさんは『葬送者』とほぼ同じ基礎体力、反射神経を持ってるのか。長年(と言っても1年だけど)の謎が解けた。ってリアさんゴレイジョウさんなの? ゴレイジョウさんってたしか物語で出てきた貴族の?
ここに来て初耳情報が沢山でてきた。
「まさかシスターティアマトが適合した瞳が私の瞳だとは思わなかったがな。」
………………………………はい?
ここまで読んで下さりありがとうございます。
つい先日テレビ付けた時にとある国の教会が出てきたんですけど……造形細すぎですよね。
(暗器→サバイバルナイフ