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鼓動が聴こえる、その時まで  作者: UrANo
我々は尺度を知らない
34/44

─22─ 別れに添えるは笑い話

こんにちは、もしくはこんばんは。

UrANoです。


今回一章ラストです。

「……っは! え!? 何処ですかここ!?」

「君、丸2日眠ってたんだけど? まずここまで運んだ僕に感謝して欲しいんだけど?」


 気がついたらベッドの上にいた。

 さっきまで吸血鬼と戦っていたはずだ。しかし何故? 確かメイヴンさんが吸血鬼を拘束したところまでは覚えているんだけど……。

 その後の記憶がすっぽり抜けている。


「というかここは何処です?」


 村の家にしては豪華だ。外見があまり発展していない村のように見えていたし、そもそもあの建物以外にほとんど人はいなかったはずだ。

 死体はどうなった? 吸血鬼は?


「ここか……。知らん」


 メイヴンさん……そういえばここの村の人じゃないって言ってたし、そりゃ知らないか。


「吸血鬼、リュミエールは……君が浄化した。僕がこの目で見たのだから間違いは無い」

「……全く記憶に残ってないんですよねぇ。あ、運んでくれてありがとうございます」

「……」


 なんかおかしい。

 けど気のせいかもしれない。いや、なんというか、うん。……目線が合わない。のか?


「あー!! メイちゃん! まだ怪我治ってないんだから安静にって言ったのに!」

「うげっ」


 どうやらアレクシスさんは無事なようだ。目立った外傷は見当たらない。しかし、メイヴンさんはと言うと。目立った外傷()()()()。唯一無事な左手でアレクシスさんをなだめている。

 

 右腕は骨折しているのか木が腕と共に包帯によって固定されている。左脚も似たような処置が施されている。その他にも色々な箇所に包帯やガーゼが貼られている。

 ……そうか、違和感はコレか。


「メイヴンさん、怪我の治り遅くないですか?」


 吸血鬼なら、内包されているマナによって怪我が修復されるはずだ。私と似たような作りのはずだし。しかし彼女の怪我は全くと言っていいほど治っていない。少し血が滲んでいる部分すらある。青色だが。


「私言ったよね? わざわざ他の街まで行って買ってきたって。たくさん買えなかったから換えがあんまりないって言ったよね?」

「ごめんって……」


 メイヴンさんはアレクシスさんの頭を撫でようと左手を伸ばす。しかしその手はから振ってしまった。それによく見ると目線が少しズレている。

 物の位置は把握しているが、距離感が分からないのだろうか。

 ……つまりメイヴンさんの目は殆ど機能していない。まさか……「呪い」の代償?


「……ん、あぁ。別に見えなくても問題なく生活できるから」


 私の視線に気がついたらのか彼女はあっけらかんと言う。そもそも自分の死と引き換えに呪い殺す気だったようで、今後の予定については不透明との事。

 もう戦う理由が無いのでマナを捨てた。そしたら目が見えなくなった、と彼女は語る。


「……あの時、僕は一度死んだんだ。死人には、この世界は眩し過ぎる」


 彼女はそう、判断したのだ。

 ならば私がそれに対して言う事はない。

 ひとつ言えることがあるとするのなら。


「日中、アレクシスさんと離れないように気をつけてくださいね。村人を見守る予定なんですよね? 街中で超音波使ったら方向感覚狂いますよ」


 彼女がこれ程の怪我をしてでも守りたかった村人達。とある街へ案内したと言っていた。予定は不透明とは言っていたもののやる事は決まっているようだ。彼女は予定を個人的にやりたい事、として捉えたのだろう。

 つまり村人の確認は使命だと思っているようだ。


「メイちゃ〜ん。私ぱんなこた? 食べてみたい。」

「あそこの街にあったかなぁ……」


 いや、予定が不透明ってもしかして。アレクシスさんが行きたい所に連れていくから詳しい場所は分からないって事?


「そういえばアレクシスさんはメイヴンさんの一部って言ってませんでしたか? 再びくっつく事はできないんですか?」

「……ここまで自我があるとな、僕とは別個体になるからな。近くにいてもくっつく事はない」


 なるほど。人の身体に魂は一つだけ。それは世の理で、どのような人であろうと捻じ曲げることはできない。

 世の理を破るとそれ相応の罰が下るからだ。『葬送者』の禁止事項(タブー)もそれに近い。


「……小娘が起きるまで待ってやったんだ。もう出るぞ」

「その怪我で!? メイちゃん、焦らなくても」

「この怪我だからだ。……ここには何も無いからな」


「……? 村から出るんですか?」

「療養ついでに治るまでは見守っておこうと思ってな。……ただの気まぐれだが」

「……無理はしないで下さいよ?」

「無理する理由が無いから問題ない」

「……そうでしたね」


 その会話から数時間後に、私達は別々の道を進む事になった。たった一日分くらいしか一緒に過ごしていないが、死闘の末生まれた友情? と言うのはいいものだ。

 

 ちなみに私は最初、メイヴンさん達に着いていく予定だった。しかし彼女がキッパリ断ったのだ。「君に頼ってしまうだろうから」との事。それとメイヴンさんが現在地を教えてくれたのだが、その街へ行くと目的地からほぼ真逆の道を進む事になるようだ。


 その為私達はここで別れることになる。

 二人は村人を見守りながら療養しつつ今後どう生活するかを考えるそうだ。おそらく彼女達も旅に出るのだろう。

 私がそれを邪魔してはいけない。


「では、ここでさよならですね。また会ったらご飯にでも行きましょうね」

「ゴチになります」

「……私が奢る前提なんですね。お二人にはかなり助けられたので奢る予定ではありましたけど。」

「クレアちゃんと食べ歩きしたい!」

「再会したら行きましょうね」


 軽い別れを済ませ、私達は別々の方向を歩き出す。

 ……が。


「……あ、そういえば聞き忘れていたんですけどこの村から次の街って、今日中に着けます?」


「君、尺度って知ってる?」

ここまで読んで下さりありがとうございます。


これにて一章 [完]


お次は間話となります。

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