─13─ 操り人形は笑わない
こんにちは、もしくはこんばんは。
UrANoです。
小説書くための語彙力の本みたいなものを所持しているのにそれが使える事を今思い出しました。アホです。……三冊あるのに。
クレアは淀んだ黒いマナ目指して走っていた。
途中で囮をばら撒きつつ。
それと同時に辺りを見渡していた。村人がどこにいるのかを確認する為だ。村人が避難する前に戦闘になった場合、攻撃が当たらないようにしなければいけないからだ。その攻撃で結果的に人を殺してしまう事が禁止事項に触れるからだ。
どうやら近くに人は居ないようだ。
と、一匹の蝙蝠がこちらにやってくる。
移動する際神具があるとその辺に引っかかってロスになるので出していなかった。なのでネクタイにつけていた神具に手を当てる。
この蝙蝠はどちらの分身なのだろうか。
蝙蝠はパタパタと近いてくる。
敵意はないのだが警戒するに越したことはない。
蝙蝠はこちらに紙を届け、別方向へ行ってしまった。一体何だったのだろう。
紙には少し拙い文字が書かれていた。
「村人の避難誘導は完了した。現在マナが枯渇したので補給中だ。それが済み次第そちらへ向かう」
なるほど。そういえばメイヴンさんと遠隔の連絡が取れないんだった。失念していた。色んな国の言語学んでおいてよかった。
この文章が敵の嘘の可能性は……ない。どの吸血鬼も人を人として見ていない。実際に何体もの吸血鬼を浄化した事がある人が言っていたのだから確実だろう。……グランオニーチャンの事だが。
これで舞台は整った。
あとは……いや、そう来たか。
「困りましたね……」
目の前にいるのは村人だった。
正確に言うと地下にいた操り人形だった。
無理に動かしているのか関節が変な方向に動いている者もいる。腐敗が進み過ぎて腕がちぎれそうな者も。眼球が溶けて落ちかけている者もいる。そして死体は呟くのだ。
「いたい」
「たすけて」
「くるしい」
と。
普通の人だったら立ちすくんでしまうだろう。死体は進む度に肉が無理に動かされる。その為ギギッ、という普通は聞かない音が鳴る。人は死亡すると体が固まるから当然といえば当然なのだが。
「うっわぁ……趣味悪いとは思っていたんですけど……まさかここまでとは」
クレアは白けた目で死体を見つめる。
何もできないから。
操っている吸血鬼を倒すしかこの人々を救う方法がない。
同情も、哀れみもない。
物理的に跡形もなく消す事はできるが、それは避けたい。
「……さて、どうしましょうか」
振り切るのは簡単だが、この死体が無理やり動かされているところを見るに私を追いかけるのだろう。本来の身体能力を超えて。
体がどれだけボロボロになったとしても。うわ言のように、「いたい」「くるしい」と言うのだろう。気分がいいものでは無い。
少しずつ後退するが、後ろは壁だ。
禁止事項の範囲が「生きた人間」ならこの人達を躊躇いなく攻撃できる。しかし「人間」の場合、どうなのだろうか。この人達は「生きた人間」に害を与える可能性がある。
曲がりなりにも「魂の暴走」に侵され生まれた吸血鬼によって操られているのだ。それはもはや人間ではなく「魂の暴走」……身体がマナによって変質したものと言っても過言では無い。
それにこの人達を倒したら、メイヴンさんは怒るだろう。この人達は元々村の人なのだから。だから倒せない。
つまり八方塞がり、という事だ。
なので割と困っているのだ。
一応『奇跡』で結界を作ろうか悩んだが、「魂の暴走」によって生まれた吸血鬼の操っている死体なのだ。『奇跡』が効くのは確実だが、浄化する前に消えてしまう可能性がある。変質に耐えきれず脆くなっているから。
あー! なんで神父様もグランオニーチャンも浄化について教えてくれなかったの! 今めっちゃ困ってるのに!
うがーと頭を抱える。
「おやおや、幼い子にはトラウマになってしまったかな? かな?」
死体の奥に、一人だけ。普通に歩いている人がいた。どうやらこの死体を動かしているのはあの人のようだ。少し体が腐敗しているが……。
そうか! 吸血鬼と言えば。
「私はリュミエール様から血を与えられた事によって生きながらえる事ができたのです! です!」
いや、死んでるよね。
語尾二回言ってるし。脳見えてるし。正直グロい。モザイクをかけて欲しいのだが。
元気に動く死体は思い出したかのようにパチンと指を鳴らす。すると、足元から影が現れ、死体さん(仮名)を包み込む。メイヴンさんが現れた時と少し似ている。吸血鬼では無いので床に影があるのか。
影が消えた頃には腐敗の跡が消えていた。ついでに脳みそもちゃんとしまってくれた。
「危ない危ない。弱点を晒したまま戦うところでした。した」
「……あ、脳が弱点なんですね……」
ニコニコと死体さん(仮名)は笑う。
吸血鬼に血を与えられたという事は、私達が倒す吸血鬼と似たような攻撃ができるのだろう。
それは自分の手の内を晒す行為のはずだ。デメリットしかないはずだが……。とりあえずこの死体さんを倒せば操られている死体を解放する事ができるだろう。
死体さんは吸血鬼の眷属になっている。耳や手などが変形している。これは「魂の暴走」の影響を受けている。それは人間に害を与えるだけの力があるということ。操られている死体とは違う。……駆除対象である。
あまり時間はかけたくないが、駆除対象の吸血鬼の手札を知っておきたい。
死体さん(仮名)に手招きをする。
「……先手は譲りますよ?」
「後悔しても知らないよ? よ?」
グラりと死体さんは揺れる。そして倒れる……。
目の前に影ができた。
「わぁああああ!!?」
私は間一髪でそれを避ける。私がいた所には大きな引っ掻きあとがついていた。
たらりと「汗」が頬を伝う。
「お、凄い凄い。い。避けられるとは。は」
ケラケラと死体さんは笑う。
目の前にできた影は死体さんだったのだ。私が瞬きをした瞬間に間合いを詰めたのだ。死体だから動きが遅いと思っていたので先手を譲ったのだが。まさかここまで高速な攻撃ができるとは……。
しかし死体さんが攻撃をしている間は死体を操ることができないのだろう。その場に留まっている。ブツブツとつぶやき続けているが。
チリッ。
「……っ!?」
「ありゃ、りゃ。外してしまいました。した。」
死体さんは周りを確認する暇すら与えない。髪が少し舞う。きらりと光源に反射する。
ギリッ、と床が削れる音。その後すぐに私目掛けて鋭い爪が伸びる。先程の死体さんの攻撃で崩れた壁の木材で攻撃を僅かに逸らす。それでも頬を少し掠めてしまう。
透明な血は少しずつ赤く染まっていく。
死体さんは私の血がついた爪を舐める事はなく逆にピシャリと床に払う。
私の血は簡単に言うと液状化したマナだ。その為空気に触れるまで透明だ。原理としてはヘモグロビンと結合しているのがマナで、体外では酸素や一酸化炭素と結合するので赤くなるという仕組みなのだが。それは一回置いておこう。
死体さんは純粋に身体能力が上がっているのだろう。それと死体を操る能力もありそうだ。しかし操る際、脳の記憶まで再現してしまうのだろうか。だから一番記憶に残る瞬間、死亡直前の言葉を放つのだろう。それ……わぁ!?
「考え事してる暇なんて与えませんよ? よ?」
私の頭を狙った蹴りを避けた先に死体さんの拳。それを身を捩ることで辛うじて避ける。しかし次の攻撃を避けるには体勢がキツすぎる。
死体さんの下段蹴りを跳躍によって避ける。しかし空中では攻撃を避ける手段が極端に減る。いなすにしても死体さんの攻撃が早すぎる。
先手を譲ったことを後悔する。攻撃力の高い『奇跡』を使うには神具を展開してそれを媒介にして発動する必要がある。あくまで『葬送者』は精霊を使役させることによって『奇跡』を使う事ができるのだ。仮に神具を展開していたとしても『奇跡』を発動する時に一瞬隙ができてしまう。
最低三秒、死体さんを固定出来ればいいのだが……っ!
「……ぐっ!」
「当たった! った! そちらから攻撃しないんですか? か?」
したくてもできないんですよ! ばーか!
手でガードしながら逸らしたとはいえ死体さんの回し蹴りを受けてしまった。一応折れてはいないが少し赤くなっている。
反動で吹き飛ぶが、その間に一回転し体勢を整え……っぶな!?
る暇もなく死体さんの拳が目の前に。
逆に壁を蹴って前進する事によって攻撃を躱す。そしてそのまま床を思い切り蹴る。死体さんが操っていた死体がいる床まで割らないように攻撃を避けながらヒビを入れていた。
その為私と死体さんは一つ下の階へ落ちる。
瓦礫でお互い何処にいるのか分からないはずだ。今のうちに神具を……。
私は目を見開く。
振り向いた瞬間には死体さんの足があったのだから。
咄嗟に頭を手でガードする。しかしそれを見越していたのか私の腹に蹴りが深く刺さった。
「……ごはっ!?」
口から血を吐き出す。わー。私って内蔵損傷したら血がちゃんと出るんですねー。知らなかったー。リアさんとの訓練でもここまで重い攻撃は受けた事がなかったからね!
しかし痛みはない。体内のマナが体を修復しているのだ。なので打撲しても数秒あればすぐに治る。骨折だともう少し時間がかかるのだが。
さて、内蔵損傷はどのくらいのマナを消費してどのくらいの速さで治るのだろうか。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
やぁっと戦闘ですよ!
ドンバチです!
ちなみにUrANoは引きこもりなので貧弱ですが昔は空手と剣道をやっていたのですよ。当時もよわよわちゃんでしたけどね!
あ、次回挿絵ありです。




