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プロローグ

こんにちは、もしくはこんばんは。UrANoです。よく分からない単語ばかりで戸惑う方もいると思います。私もです。

 目を覚ます。


 どうやら入浴中に寝てしまったみたいだ。体が湯船に沈んでいるが問題ない。私は呼吸を必要としない体だから。…いや、訂正しよう。多分肺はちゃんとあるし息を吸わないと声がでないのは普通の人間と変わらない。


 決定的に違うのは、それが必須では無いという事だろう。だから長い間水の中にいても問題ないというとても便利な体と成っている。微々たる差はあれど「人間」だ。


 喜怒哀楽を示す顔はあるし、精神的な疲れもある。もちろん肉体的な疲れだってあるし、五体満足だ。今まで私がどのような経験を経て何を感じたのか、何を得て何を失ったのか……。全ておぼえている。


 湯船から上がり、着替える。

 と言っても時間はそこまで掛からない。


 教会で育った私は神父様に『奇跡』を教わった。そこで私は私という体が()()という空中に漂う神秘的な力が集まってできた者という事を知った。


『奇跡』はマナを使い精霊を使役させる事によって発動する。イメージ次第でマナがある限りある程度の事はできるらしい。火や水を出したり、種から蔓を出して操ったり……鮮明であればあるほど本人のイメージに沿った『奇跡』を発動する事ができる。もちろんマナが足りなければ発動しない、もしくは途中で消える等……と言われているが、私は過去から現在に至るまで一度も『奇跡』で失敗した試しはない。


 で、私は『奇跡』を使い着替える。

 ちなみにここは旅の途中で見つけた宿屋だ。

 私は探し物があって旅をしている。が、未だ糸口すら見つかりそうにない。

 

「私」という存在がこの世に存在した証拠を探している。


 最初旅に出た理由は物語の主人公が自由気ままに旅をしつつ、周りを助ける……というのに憧れを持ったからだった。

 

 人間は死後、魂が天へと還る。

 しかしその身は魂を欲する。ありもしない無くなった魂を求め彷徨う……「魂の暴走(コルポレジラ)」という現象がある。

 当初は死後生き返ったと歓喜するも「魂の暴走(コルポレジラ)」に侵された者は近くの魂持つ人間に襲いかかる。


 だから「身体の暴走」ではなく「魂の暴走」という名が付いたのだろう。人は誰しも魂を視ることができないのだから。


『奇跡』が何故イメージに沿った物が発動できるのか、そもそも何故発動というのかは「魂の暴走(コルポレジラ)」が関係する。


 そもそも『奇跡』が「魂の暴走(コルポレジラ)」を浄化する為の独奏曲(アリア)だからだ。


魂の暴走(コルポレジラ)」に侵された者を浄化するのが正に『奇跡』だからそう名付けられた……と神父様に聞いた。


 そして『奇跡』は特別な人間のみ使える。

 

 生き返った者のみが使う事ができる。


 聖書によると、死後生き返った神が多数存在する。私はそれに近いらしい。違う所は生前の記憶が無くなる事と、体がマナ化する事、そしてそれに伴い色素が抜ける事だ。だから私は割と肌が白いし髪も白い。


 しかし瞳は色がついている。私以外の人は瞳も色は付いていてもかなり白に近いらしい。それも「私」を見つける手がかりになるのだろうか。


 生き返った(『奇跡』が使える)人間を人は『葬送者』と呼ぶ。

 ごく一部の人間しか知らないが。


 何故かと言うと、「魂の暴走(コルポレジラ)」に侵される人間が滅多に現れるわけではないからだ。

 全人類が「魂の暴走(コルポレジラ)」に侵されようものなら『葬送者』が逆に過労死する(実際に死ぬことはできないが)。


 という冗談はさておき。

 私の旅での経験と教会での知識から仮説を立ててみた。

「『葬送者』と同じ様に「魂の暴走(コルポレジラ)」を侵す人間には何かしら共通点があるのではないか」、と。

 今のところ共通点は見つかっていない。


 そもそも『葬送者』の共通点すら見つからないのだ。


 ただ、1世紀に1人くらいの頻度で私が目覚めた教会の棺に突然現れる事と、歳をとらない事。そして滅多に死ぬ事はないので千年以上生きる人も居るという事が『葬送者』に()()()()の特徴らしい。


 一度死んでいるのに生きるとは表現的におかしい気がするがそうとしか言えない。

『葬送者』だとしても風邪はひくし、怪我をしたら血も出る。生者とほぼ変わらない。

 目の前の鏡を見る。


 何も映らない。


 吸血鬼や魔物が鏡に本来の姿を見せるという話はよく耳にする。そもそも吸血鬼も魔物も「魂の暴走(コルポレジラ)」にあてられた生者や動物が変化して生まれた存在だ。


『葬送者』はマナでできていると行っても過言ではない。そしてマナは見えない。だから鏡に映らないのだ。

『奇跡』を使えば身なりは整うので問題はないし鏡も必要としない。


 けれど私は鏡の前に立つ。


 そして目覚めた日に握り締めていたリボンを髪に結びつける。そして、

 

「私は、クレイニアム・アンダーリビオン」

 

 そう呟く。


 この名前は教会の人が付けてくれた物だ。

 付けてくれた、というよりも記号として振られた……に近い。目覚めた部屋にある白紙の本にマナを流すと名前が浮かび上がるらしい。それで出てきた文字が、クレイニアム・アンダーリビオン。それがこの体、今までとこれからの記憶の持ち主の名前。


 忘れる事は無いと思うが一人旅の時はこうやってリボンを結ぶ時に言うようにしている。

 いつか去る旅人を名前で呼ぶ人は滅多にいない。他人の名前なんか気にしない。だから忘れないように、自分で呟く。


 一時期名前を一人称にしようと思ったが長過ぎたのでやめた。


 外を見る。夜明け前だから暗い。

 私は身支度をし、杖を持つ。

 この杖は教会で貰った大切な物だ。いつもは首にかけてる十字架のネックレスの中に入るサイズにしているか、ネクタイを止める宝石にしているが、使う時はさすがに戻す。

 杖を使うことによって『奇跡』を安定して発動する事ができる。


「……お世話になりました。」


 小声で感謝を述べる。

 国によるが、出国する際にパーティーを開かれたり金品を狙われたり、殺人鬼のターゲットにされたりする。国の者ではないから見つからなければ殺人や恐喝等の罪が公になることは無い。だから旅人は格好の的だ。

 なので出国の前日には手続きを終わらせる。


 夜中に国を出るのはそういった理由だ。マナさえあれば活動はできるので何日かは寝なくても生活できる。精神的に疲れた時や病に倒れた時はさすがに寝るが。


 この国も粗方調べはしたが、生前の私への手がかりは見つからなかった。

 リボンが何処で作られた物か知る為、そして無くさない様にする為、目立つ所(髪)に付けている。……どこに着けてもこのリボンは目立つが。


 このリボンについて知ってる誰かがいるかもしれないと願うもこちらの手がかりも未だ掴めていない。


 旅は始まったばかりだ。

 今は旅を楽しむ事に集中しよう。

ここまで読んで下さりありがとうございます。

やっと主人公の名前が出てきましたね。そして次の話から本編(序章)です。

が、挿絵を描くので投稿は翌日になります。

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