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鼓動が聴こえる、その時まで  作者: UrANo
我々は尺度を知らない
13/44

─1─ こんにちは、世界

こんにちは、もしくはこんばんは。

UrANoです。

序章は五年前くらいに書いてたやつなんですけど、第一章は数日前にぺちぺち書いてます。

 教会から旅立って数日が経過した。

 朝目が覚めても誰もいない。一人旅だから当然の事なのだが少し寂しさを感じる。一年前に教会で目覚めてから今まで常に誰かがいた。だから少しなれないだけ。慣れた手つきで髪を結う。もちろんリボンも忘れずに。

 

 いくつか、聞きたいことがある。まず。


「人とすれ違わない」


 そう。旅を始めて数日が経過しているのにも関わらず、誰ともすれ違うことがなかった。空き家すら見つからなかった。

 過去に読んだ冒険譚では旅を始めた次の日に別の国に辿り着いていたはずだ。だから穴の空いた地図を見て「ここはどんな国なのかな」とか「どういう建物があるのかな」とか「美味しい食べ物ないかな」とか思いにふけっていたのに。


 現実はそう甘くなかった。


 神父様に言われるまましばらく直進していたのだが気が付いたら知らない場所にいた。歩いた距離的に教会は見えるはずなのだが、振り向いたら何も無かった。

 あの教会はこの地図には載っていないという話は聞いていたので、突然見えなくなった事については気にしていない。それよりも重大な問題があるからだ。


 ここは何処なのか。


 地図の見方は知っているが、現在地が分からなければ持っていても仕方がない。だから誰かいたら聞こうと思っていた。

 このまままっすぐ進むべきなのだろうか……。それとも右か左に曲がるべきだろうか。

 しかし辺りを見渡しても見えるのは地平線。もしくは森。あと土。そして申し訳程度の雑草。……あ、コレ食べられる野草だ。


 そろそろ夜の帳に包まれる時間だ。空を見ると薄らと星々が見え始めている。……つまり四日連続野宿が確定した。


 背負ってるリュックの中から個包装の固形食を取り出す。『奇跡』で辺りを灯す。光源確保の為だ。私は「葬送者」なので身体がマナでできている。食事が不必要だと思われがちだが、実はそうでも無い。

 空気中に漂うマナを吸収するよりも何かを食べる方が効率的だからだ。それと普通にお腹は空く。元は普通の人間なので、生活リズムも殆ど変わらないはずだ。


「……お風呂入りたいよぉ」


 汗や油が出にくい体質とはいえ、5日もお風呂に入れないとなると、風になびいていた白髪が砂埃やその他諸々で少し乱れてしまった。一応川で洗ったり吹いたりしているのだが、そろそろ暖かいお風呂でくつろぎたい。水を温める事はできなくはないが、私が中に入れるだけの水を貯めることができる容器が見つからなかった。


「……もぐもぐ。そろそろ足が痛いし街とまでは言わないけど、もぐもぐ。村には辿り着きたいなぁ……。もぐもぐ」


 リアさんとグランオニーチャンのおかげで野宿はあまり苦ではないのだが、固形食が尽きる前に人々が住む集落に辿り着けなかったら詰みなのだ。少食なので今持ってる固形食で2ヶ月から4ヶ月は凌ぐことができると思うが。

 

 それより先に人に会うだろう。そうであって欲しい。

 

 いつの間にか空は暗く、星々が煌めいている。教会で見た星空と殆ど変わらない……とても綺麗だ。ここも教会も星の光を妨げる光源が殆どないので星々が届けた光を余すこと無く見ることができる。『葬送者』も星も、長い時を生きる。なので少し親近感がある。もしかしたら私が生まれ(目覚め)た時に一緒に誕生した星があるのかもしれない。その光を見る事ができるのはおそらくかなり先だろうけど。


 最近愛読している小説によると。


「街は夜でも明るく活気に満ち溢れている。しかし、夜空の星々の光は街の光に負けてしまった。その為人は夜に空を見上げなくなった。その街にとって、星空は価値の無いものになってしまったのだ。人は自然と共に発展しているのにも関わらず、自然を蔑ろにしがちだ」


 と、書かれていた。

 その先は割愛するが、発展した街ではこんな風に地面に寝そべりながら――さすがにシートを敷いているが――何もせずに星を見上げる事が出来ないんだろうなと思った。


 マナは星から生まれ、夜になると降ってくるという解釈がある。もしそうなら夜はもっと眩しくなると思う。私達『葬送者』の目を潰す気かっ。

 

 でもそう解釈してしまう程、いつの間にか現れたほうき星は夜空を色々な色で照らした。


 自然と私の異様に白い手が宙へ伸びる。星を捕まえる事はできない。……では何故手を伸ばしたのだろう。逆にこの絶景が見える範囲を減らしてしまうだけなのに。

 

 しばらく手を宙に伸ばしていたが、ほうき星が消えたタイミングで下ろす。手には何も無い。マナが降っていたら発光する水になって手に貯まっていたのかもしれないが、残念ながら水が手に乗る感覚はなかった。そこまで高濃度のマナがある場所は限られているので想定内だ。


 地域によってマナが微妙に変化するらしいのでそれも検証しようと思っていたのだが……。この辺りはマナがあまり無いので分からない。

 二つ目の固形食を口に挟みながら明日の予定を考える。ここ四日の日記は殆ど同じ内容なのでそろそろ旅特有の刺激が欲しいところだ。

 その点で言うと今のほうき星は割と刺激的ではあるのか。毎日見れるものではないし。綺麗だけど残せないのが少し惜しい。


 思い出せるようにこの風景を書き留める。


 目測で角度や速度を計算する。色もふられた番号に沿って数字と記号を書き込む。おそらく他の人が見ても数字の書かれた本としか思わないだろうが自分が分かれば問題ない。ガリガリと書き進めても白紙の本は終わりを知らないかのように次のページを生成する。使っている羽根ペンも、だ。

 さすが教会作の日記帳とペン。マナさえあれば無限にページを増やすことができる。インクも無くなることがない。その上軽いときた。


 ある程度書いて満足したのでパタンと日記帳を閉じる。インクの乾きを気にしなくていいのもこの日記帳のいい所だ。……普通のペンを使う時には気を付けないと。

 

 代わり映えのない道を進んでいるとはいえ、そのまま通り過ぎているわけでは無い。

 文明は水と共にあるというし風も街を探す上で重要だ。つまりその辺に転がっている石も十分情報が詰まっている。石は水で削る事ができる。もちろん風で削る事もできる。しかしどちらも長い年月がかかる。

 

 つまり。

 石だけでは情報が掴めない。

 すぐに川を見つけることができたのは幸いだった。このまま砂と石だけの地平線を眺め続ける羽目になるのかと恐れていたので見つけた瞬間その場で跳ねながら喜んだ。

 

 が。未だに人と出会っていない。正直人は滅亡しているかもしれないとも思っていたりする。何故ならここから見える森は枯れている。森だと思われるもの。魂の暴走(コルポレジラ)によって汚染されたのではないかと思ったがマナの動きは正常なので自然の摂理である事は確実だ。


 テントに入る。


「うぅーーーん」


 固形食を口に咥えながら唸る。

  

 教会外で大っぴらに『奇跡』使うのは危険だろう。コレクターの存在もあるのだが、マナはなるべく温存しておきたい。かと言ってこのまま歩き続けるには足が持ちそうにない。と言うか外に出てからたまに足が全く動かなくなるのだ。なので想定よりも進みが遅くなってしまった。

 

 石や風の測定の為に足を止める必要がある。なので実際に全く足が動かなくなる訳ではないので安心して欲しい。とはいえ同じような石ばっかだしほぼ無風なのですぐに飽きてしまった。


 一応川に沿って歩いているのだが、途中枯れかけていたり苔が蔓延っていたり……。ただ、枯れかけている割に湿度が少し高い気がする。そういう地域なのだろう。だから苔が繁殖している。

 

 ……雨とか降りそうだなぁ。

 

 川があると言うことはどこかで雨、もしくは雪が降っている証拠だ。夜しかない国や逆に朝しかない国というのも聞いた事があるがそういう国でも雨は降るものだ。つまりここも例外では無い。

 一応テントがあるので雨風を凌ぐことは出来るがゲリラ豪雨や暴風、長期戦には向かないので国に着く前に天気が悪化しない事を祈った。


 先に結果だけ伝えておこう。

 

 天気は悪化しなかった。ぽかぽかでお昼寝ができそうな、過ごしやすい気候だった。()()()()()()()()気候だけだった。


 あと少し気が付くのに遅れていたら、私の旅は終わっていたのかもしれない。


ここまで読んで下さりありがとうございます。

とりあえずツッコんでいいですか。

セリフすっくな。


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