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マーシャルアーティスト佐我

 冒険者パーティ〈金銀獅子〉とMMA格闘技家・織田佐我の〈決闘〉が始まる。


 鶴間は真っ先に魔杖を突き込もうと、歯をむき出しにして笑って佐我に駆け寄る。


「おっさん、100回ぶん殴るけど死なないでね~!!」


「前回は格闘技家らしい攻撃ができなかったから、きっちり今回はさせてもらうよ!」


 そういうと佐我は外に小さく弧を描くようにローキックを繰り出す。それが魔杖を当てそこなった鶴間の左ふくろはぎに命中する。パチンと小さい音だったが効果は絶大だった。


「い・いで~!!!!!」


 鶴間は顔を激痛に歪ませて転倒した。

 鶴間の動きを目で追っていた栗原は戦慄する。いきなり眼前に佐我がおり、自分に拳を繰り出しているのが見えたからだ。


  な、なんだよ、この速さぁ! こんなどえりゃー速さに対応できるかわ!?


 栗原が動揺した途端に、甲冑の上からズンと重いパンチを受けて、腹部の右側に衝撃を覚えた。


 痛痛痛痛痛痛痛痛痛!!!


 刹那、栗原は身を丸めて転倒する。全身をただ震わせるだけだった。未知の激痛に呼吸もできない。

 佐我が神速で動けることを理解しながら金森は前に出る。金森は佐我の動きが見えるようになっていたし、自分の【ヴォケーション】の〈悟り〉があれば十分に対処できると判断した。〈悟り〉とは相手の心を先回りして知るというモノで、これで金森は敵対する者を全て沈めている。

 金森は佐我が自分の背中に張り付き、甲冑の首回りに差し込んだ手で首を絞めようとするヴィジョンが見えた。


「わかっていれば対処できるさ!!」


 カウンターを決めようと、振り返り長剣を短く振るう。

 が佐我は長剣には当たらず、金森の胴甲冑の背を両足で挟んで張り付き、手を伸ばしてきた。また佐我は胸で金森の首を前に倒れるようにして押し出す。

 金森は頭を前に傾けながら顔面蒼白となる。


 わかっていても振り切れない!! 速度が上がったのか!?


 首に指を食いこまされて6秒で金森は動けなくなる。意識はあるが、視界の周りが真っ黒になって体はピクリとも動かなくなったのだ。

 ダウンした3人を見て、佐我は満足げにほほ笑む。


「おし! 速度を上げればやっぱり格闘技の技術は有効だな。鶴間のふくろはぎを撃ったのはカーフキック。『実はふくろはぎは鍛えられない』という事実から注目されたローキックの一種だ。流行り過ぎて最近の格闘技家ならまず引っかからないが素人ならこの有様だ! いきなり食らえば激痛で10分は動けない」


 次には真っ青になって痙攣する栗原を見つめる。


「栗原に見舞ったのはボクシングでほとんどのKOシーンを生み出しているレバーブロー、肝臓打ちだな。レバーブローを受けるとまあ激痛で動けない。息もできない痛さで完全に地獄に堕ちる。甲冑越しに〈氣〉を叩き込んだんだけど見事に効果が出てよかった! 寸勁をイメージして打ちました」


 佐我は目を開いているがまったく動けない金森を観察する。


「金森に見舞った技は正確には格闘技のテクニックじゃない。指で頸動脈を強引に押して頸動脈洞に誤作動を起こさせて失神させる技だ。『フィンガーロックチョーク』と俺が命名している。実は俺はこれが得意なんだが、反則だとか危険って言われ、更に評判がとても悪いので封印しているんだ。気道は確保しているし、打撃要素もないからリア・ネイキッド・チョークと理屈は同じなのに理不尽だよ!」


 そう一人解説している佐我の背後に3メートルのコバルトブルーの巨人が立っていた。


「佐我のおじさん、残念な話だけど〈金銀獅子〉で一番強いのはわたし〈聖女〉麻溝台竜美だよ? わたしの【ヴォケーション】の〈使徒〉は何でも使徒にして動かせるんだ。このミスリルでできた巨人は今までどんな奴にも負けたことはないから!! 速度もパワーもハンパないし。まあ〈インベントリ〉がこれだけでいっぱいになるって話は置いておいて」


 麻溝台は目をランランと見開き、上気した顔でそう断言した。非常に好戦的な表情を見せる。

 佐我はそんな人型ミスリルに感心して唸った。


「ほほう、その人形には魔力が凄い漲っているね。これはびっくり――まあとにかく麻溝台ちゃんには頭部の中心付近にある三半規管を刺激して失神させてあげるけどね!」


 そういった直後、麻溝台はミスリルの〈使徒〉に行けと命じながら、佐我が白い球を一瞬取り出して見せたのを目にした。

 直後麻溝台はミスリルの〈使徒〉と一緒に硬直・動けなくなる。

 佐我は左手に魔力を吸い込む石を手にしながら、麻溝台に近づき、顎をかすめるパンチを出す。


 ガスッ!!


 すると麻溝台は糸が切れた操り人形よろしく昏倒したのだ。同時にミスリル巨人も灰褐色に変色しながら転倒する。

 

「やった! 色々な漫画でお馴染みの顎の先端をかすめ、脳を揺らせて脳震盪を起こす『皮一枚パンチ』が成功した!! 『実在する・しない』にこれで終止符が打たれる!」


 佐我は顎をかすめる一撃で麻溝台の意識を刈り取っていると思って感動したが、事実は違っていた。魔力を刹那で消失したせいで、麻溝台は血流が一瞬完全に止まり失神したのだ。

 とにもかくにも佐我の頭上に勝利を表すヨモギの花の光が輝いた。



――――――――――――――――――――――――――――――――

ここまでお読みいただきありがとうございました。

これから書きだめに入ります。


よろしければポイント★を入れてもらえると幸いです。

それではまた!

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