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第7話:勇者ナオキ、これまでの冒険日誌...?


この異世界にやって来て1日が経った

この1日だけでも様々な事が有ったので、その出来事をここにまとめようと思う





まず、この異世界に来た経緯


元の世界じゃイケてない男子高校生だったこの俺、桐島ナオキ

いつものように学校から帰ってきて、いつものようにゲームをしたりなんなりをし、これからの自分に心配をしながら眠りに付き

眠りから覚め、目を開けた先には麗しくて素晴らしい女神、イルク様がそこにいた


聞けば、俺は突然死んでしまって、それを不憫に思った女神様の御慈悲によって生き返らせてくれたとの事

更に聞けば、俺はとても悲惨な死に方をしてしまったとの事

どんな死に方をしてしまったのかと俺は問うたが、女神様はその様な事を教えるのは貴方に失礼てあり、女神として許せないとの事で教えてはくれなかった

なんと慈悲深きお方だ


その後、俺はこの先どうすれば良いのですかとイルク様に尋ねる


イルク様は、「これから貴方を異世界へと送ります、そこで貴方は様々な体験をしながら自分の思うがままに生きるのです」と伝えた

思うがままに生きよ、それもまた素晴らしい事

しかし、一度は果てたこの命を、イルク様は救ってくださった

ならば世の為人の為、そしてイルク様の為に使わねば無礼と言うもの


俺はその信念を伝えた

イルク様は、「なんたる素晴らしい信念、貴方こそ勇者に相応しき存在です」と、俺にもったいないお言葉をくださった



その後、少し話をした後に、異世界への扉の前に立ち、そのまま行こうとした

その俺にイルク様は

「お待ちなさい、異世界へと旅立つのなら、この聖なる剣と女神の加護の力を授けましょう」

と俺に差し出してきた


だが俺は

「お心遣い感謝致します、ですが受け取れません、己の力と自分で手に入れた武具で世界に平和をもたらし、人々を守って見せます、それが俺の勇者としての信念という物です」と伝えた


女神様は微笑み

「とても良き信念です、期待しております」と俺に呟いた




そして、女神様に別れを告げ俺は異世界へと旅立った


世界に平和をもたらし、人々を守り、イルク様への期待を裏切らない為に

猛烈に胸を高鳴らせながら俺は行く





ついに異世界へと降り立った俺は、その光景に驚く

元の世界では見られなかった景色、自然、動物達

様々な胸を踊らせてくれる物達

夢にまで見た空想の世界が俺の目の前に広がっている

なんて素晴らしい、ここに来て良かった



そのすぐ後、俺は初めての出会いを果たす

狐の姿をした獣人の親子だ

その親子と他愛の無い話をしていたのもつかの間、一体のモンスターに襲われた

そのモンスターはスライム、こういった異世界ではお馴染みの存在であまり強い印象はない

だが、来たばかりの俺とか弱い民間人にとっては十分な驚異には違いない


俺は勇気を出しスライムの前に立ちはだかる、民を守るのは勇者となる俺の使命だからだ


俺はスライムと闘った、苦戦する程ではないが、優勢とも言い切れなかった

その時、親子が木の棒を渡してくれた

その木の棒を使い、俺はスライムに勝利した

俺の最初の闘いは勝利に終わった


その後、狐の親子からその木の棒と薬草の束を受け取り親子と別れた



親子と別れてからしばらくして、腹が空いた事に気づく

食糧をどうするかと悩んだ時、どこからともなく良い匂いがしてきた


匂いの方に行くと、そこには良い匂いと音をさせる肉の丸焼きがあった

腹が減っていたので丁度良いと思ったが、これは間違いなく他人の物

他人の物に手を出すのは勇者にあるまじき行為、そんな事はいけない


考えていると、1人の少女が現れた

彼女の名はパルフェ、未来の大賢者を目指しているという可愛らしい女の子だった


困っていた俺に彼女は

「良かったら一緒に食べる?」と優しく話しかけてきた

見知らぬ俺に偏見を持たずに食糧を分けてくれるなんて、なんて優しくて可憐な少女なんだろうと俺は思った


食事を終え、この世界の情報が不足していた俺に、彼女は快く情報を提供してくれた


フローリア、俺がやって来たこの世界の名前

ロロン、俺がいるこの島の名前

マーレ、この先を行った所にある宿場町の名前


彼女のくれた情報はどれも役に立った




そんな俺に彼女は

「旅するならあたしと一緒に行かない?」と誘って来た

仲間を欲していた俺は彼女の提案を快諾した

勇者として、こんなか弱い少女を一人旅させる訳にはいかないからだ




しばらくして町に着いた

宿場町マーレ、港もあり人々や多くの店が集まる賑やかな場所だ

俺はそこで武器を調達する事にした

スライムを倒した実績があるとは言え、やはり木の棒だけでは心もとないからだ

しかし、困った事に金がない

どうするかと困っていた時、パルフェが


「あたしに任せて」と言って武器を買ってくれると言うのだ

それはいくらなんでも悪いと断った、しかしパルフェは

「自分の仲間が困ってるなんて放っておけない」と言う


なんて心の広い少女だ

だが感謝の念以上に、己の不甲斐なさが強い

こんな可憐な少女に武器を買ってもらうだなんて、勇者としてあるまじき事

絶対にこの娘には恩返しをせねばと、俺は誓った



そして武器屋に着いた俺は、どの武器が良いかと選んでいた

その時店主が声を掛けてきた


どうやら俺の履き物に興味があるという

見慣れない異世界の履き物が珍しい様で、店のブーツと交換してほしいとの事だ

俺は快諾し、新しくて動きやすい履き物に胸を踊らせた

武器を買うのを忘れてしまったが、まずは動きやすさ重視だパルフェに伝え、彼女も了承してくれた



その後は装飾品屋や薬屋等に行き、買い物を楽しんだ


薬屋ではパルフェが丸薬を俺に買ってくれた、効果はなんだと彼女に聞いたが教えてはくれなかった、恐らくは回復か強化のどちらかだろう


そしてその後に事件は起きた

パルフェが両親から貰った軍資金を盗まれたという

その事を俺に伝え、彼女は

「ごめんね、あんたに武器を買う約束してたのに...」と言って大声で泣き出してしまった

許さない、こんな可憐でか弱い少女を泣かすなんて最低だ

犯人を絶対に見つけてやる



聞き込みなどを終えて、集めた情報によると

ドランという男が怪しいと言う結論に至った

聞けば、奴は恐喝や器物破損の常習犯だった男で、こういった事の疑いが真っ先に向く存在という


だが奴は姑息にも、最近ではなりを潜め、そういった事をせずに小さな事をし町の人々も強く出ることが出来なくなってしまったとの事

なんて卑怯な奴だろう、男の風上にも置けん奴だ


しばらく探していた時に1人の男とぶつかった

見れば、子分を連れていていかにもチンピラといった風貌の男だ

こいつがドランだ、という野生の勘が働く、しかし証拠がない


だが奴らはあっさりと証拠を出した

ある子供の金を盗った事、それが身なりの良い女の子という事、純水に観光を楽しんでいる子供など馬鹿だという事


こいつらがパルフェの金を盗った事はもはやまごう事なき事実

俺は奴らに金を返せと言った、しかし奴らは証拠があるのかと言い訳をしてきた

盗られた本人でも連れて来てみろと言ったので、後ろに隠れさせていたパルフェの姿を見せる

その瞬間、奴らの眉が動き都合の悪そうな表情を見せた

その事を奴らに伝えたが奴はまだ食い下がる、それだけじゃ証拠にならないたの、証人をもっとだせだの

どこまでも往生際の悪い奴等だ


その時、1人の少年が声を上げた

奴等が財布を盗った瞬間を見たという


その少年にドランは、見間違いだろと脅しを掛ける

しかし少年は怯まず、見間違いではないと言い張り、更にあの様な装飾の財布は大の大人の男が使う物ではないと証言した

それに対し、自分のだと言い張っていたドランが口を滑らせた


パルフェが持っていた財布と同じ特徴を挙げたのだ

とっさに奴は店で買った物だと言い訳をしたが、その財布はパルフェが旅に出た時に母親が作ってくれた手作りの物だと言う証言で嘘だと判明した


都合の悪い証言を突き付けられ、少年に食ってかかったドランだったが、町の人に突き飛ばされ、よろけた表紙に胸元からパルフェの財布、更には他の人達からも盗った財布を落とした


それに対して偶然拾った物で、後で皆に返すつもりだったと見苦しい言い訳をかますドラン

しかしこれまでの悪行の数々により、誰もドランを信じない


そのドランをよそに、証拠と証言が揃っている事を伝えてたパルフェが財布を拾おうとした時、信じられない光景が俺の目に飛び込んできた


ドランがパルフェに手を上げたのだ

財布を盗み、自分が自爆する原因を作った1人の少女の頬を叩いたのだ


それを周囲から非難され逆上したドランに対して、俺は心の底から怒りを覚え殴り飛ばした

許せる訳がない、可憐でか弱い少女であり、俺の大切な仲間に手をあげたんだ

これ以上の殴る理由なんてある訳がない




そこから俺とドランの激闘が始まった


木の棒で応戦する俺、しかしドランにはまるで効かない

武器があるとはいえなんて事のない木の棒を持った少年

それに対して向こうは喧嘩慣れしている大人、当然分が悪い


奴からの痛恨の一芸が腹に入る

痛みにうずくまる俺に対し奴は、弱い奴が意気がるなと吐き捨てる


こんな奴に負けるのなんて嫌だ、勇者として恥ずかしい、それ以上にパルフェに申し訳無いから

そう思い力が有ればと呟いた時、一つの事を思い出した


パルフェに俺にくれた丸薬の事を思い出した俺は立ち上がり、その丸薬を噛み砕き飲み込んだ



その俺に奴が向かって来た

奴の打ってきた拳を受け止め、怯んだ隙に奴の頭に頭突きを食らわせた



そして俺は奴に人差し指を見せつけ、宣言した

「次の一撃でお前に勝つ」


そう宣言した俺目掛けて、奴の渾身の一撃が飛んできた


その攻撃を軽やかにかわし、俺は大きく跳んだ


町の人々への迷惑や、俺自身の奴に対する苛立ち

そして、俺の大切な仲間に暴行した事に対して激しい怒りを込めた一撃が奴の頭に直撃した、だが、それと同時に木の棒も砕けてしまった


悲痛な叫びを上げ、崩れ落ちるドラン、そのドランに駆け寄る子分の男

その二人に対して、石を投げつけ今までの鬱憤を晴らす住人達


居心地の悪くなった子分の男は、ドランを抱えその場を去っていく


激しい闘いを終え、勝利の余韻に浸っていたのもつかの間、俺は傷と疲労によってその場に倒れ込んだ


パルフェから貰った丸薬が一時的な強化だったと知り、それと同時に効果が切れるまでに闘いを終わらせられた事に喜んだ


倒れている俺に、パルフェが掛けよって来た


「良く頑張ってくれたわ」

「とても格好良かった」

「あなたは最高の仲間よ」

等と労いの言葉を掛けてくれた


先程の少年も、俺に労いの言葉を掛けてくれた

俺はその少年に

勇気ある告発をしてくれた君こそが一番の英雄だと伝えた、彼は顔を赤らめ照れた



その後、パルフェは俺に回復魔法を掛けてくれ、町の人々は俺を英雄だと称え、宿場町は活気に溢れた



そして、宿に着いてパルフェは俺への感謝と労いの気持ちを込め、食事を食べさせてくれた


ふわふわとしていて柔らかそうなパン

食べごたえに溢れた分厚いステーキ

彩りに豊かなサラダとカットフルーツ

口の中を癒してくれる甘いジュース


どう食べても腹一杯になって当たり前の食事、こんな豪勢な食事を与えてくれるなんて、なんて優しい娘なんだろう


食事を終えて自分達の部屋にやって来た俺たちは、疲れから体を伸ばした


ひとしきり休んだ俺は、パルフェがどこかへと行こうとしたので行き先を聞いたが教えてはくれなかった



その後、しばらくして帰ってきたパルフェは一振の剣を持っていた

手頃で振りやすい長さの剣だ


聞けば、今日の事への労いと俺への感謝、そして最初に約束した武器の購入の件だと言う

俺は感謝の言葉を彼女に告げ、ありがたく剣を受け取った

更には折れてしまった木の棒を加工した首飾りも受け取った、この世界の文字は読めないが、何とかナオキと書かれている事は察した、他の文字はわからなっかったが



夜も遅くなって来たので、俺達はもう寝ることにした

パルフェが「ベッドは一つだけだから、一緒に寝ましょ」と提案して来たが丁重に断った

それではパルフェには悪いからだ、ここまで散々良くしてもらってきたんだ、ベッドは彼女だけが余裕を持って使うべきだ考えて譲り、俺は予備用のシーツを掛けて床で寝た




俺はこの異世界に来て初めての夜を迎え、初めて日を跨ぎ、初めて夜が明けてからの朝を迎え、差し込む日の光と鳥の囀ずりで目を覚ました


横を見ると、既に起きていたパルフェがそこにいた

「良く眠れた?」と彼女が聞いてきた

俺はもちろんだと答えた


宿を出発した俺達は港にやって来た

そこには俺達が乗り込む客船があった


中々に大きい船、これで大陸にある町に行けるのか?とパルフェに聞いた

彼女曰く「この船で行けるのはここよりも大きい島ぐらいよ、大陸にそのまま行ける程の丈夫さは無いわ」との事だ



船を見ていると、後ろから声がした

振り向けば、昨日の勇気ある告発をした少年、小さな英雄の姿があった



彼は宿の人間達に聞いて、冒険に出かける俺達を見送りに来たのだと言う


少年と話込んでいた俺に、パルフェがもうじき出港だと伝える


名残惜しいが、少年とはお互いを労った後別れた



船に乗った新たな場所へと進む

これから先、俺達にはどんな事が起きるのか

不安はある、だがそれ以上に期待に胸を踊らせる


俺は今、猛烈に、胸を高まらせている




こうして俺達は町を出て大海原を進み、次なる冒険へと出かける


これまでの経緯を書き記し、後世へと残さん    勇者ナオキ





「ふ~、やっと書けた」

「色々膨張や改竄入っているとは言え中々の力作だ、後はこれを...」

「あんたさっきから何書いてるの?」

「うぉっ!?」

パルフェに後ろから声を掛けられ、驚く俺

その拍子に、日誌を床に落としてしまった


「何よこれ?」

「あっ...!?」

パルフェが俺の日誌を拾い上げ眺める

まずい、見られた



「ん...、ん~...?」

「...?」


パルフェは不思議そうな顔で日誌を見ている

そうだった、俺がこの世界の文字を読めないんだから、パルフェが俺の世界の文字を読めないのも当然だ

助かった、と思ったのもつかの間


パルフェは日誌の片隅に描かれた、憎たらしい顔の自分の落書きを指差し、俺を睨む


「何よこれ」

「いやあの」

「あたし?」

「その様な事があろう筈がございません」


その瞬間、パルフェが日誌を破り捨てた

「ああああああああああああ!?何してくれてんのお前ぇぇぇぇぇぇ!?」

「あんな絵を描いたあんたが悪いんでしょ!?」


「別にお前だとは言ってないだろ!」

「どうだか、信用ならないし、あんたの事だからどうせ横の文字もあたしへの悪口とかでしょ!」

「違う!決して可愛げの欠片もない腐れちんちくりんとか書いてないから!」



「...」

「...あ」

「やっぱ書いてたんじゃないのよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

パルフェの全身全霊のビンタが俺に迫り来る

「パルフェ様お慈悲をぉぉぉぉぉぉぉ!!」


俺の願いも空しく、パルフェの平手が俺に直撃し、頭の上で星が回り、俺は深い眠りに落ちた


船は目的地を目指し、優雅に進むのであった

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