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第5話:ざまぁみろ!制裁受けて、反省しやがれ!



「オラァっ!さっきまでの威勢はどうした!?」




ドランの猛攻が続く


何度も奴の殴打が俺の体に入る




このままじゃまずい


だが、防ぐばかりだ




その瞬間、奴の重い一撃が俺の腹をえぐる




 「おぐぁっ...!」




俺は片膝を付き、うずくまる




「なんだぁ?もう終わりか?」


ドランがオレを見下ろし言う



「がはっ...」


「さぁどうするよ?そのままくたばるか、泣いて許しをこうか?」





誰がするもんか


このまま死ぬなんてゴメンだし、ましてや、こいつに謝るなんてもっての他だ




だけど、このままじゃ...






「はん、弱ぇくせにカッコつけるからこうなんだよ、力の無い奴が偉そうにしやがって」





その通りだ、俺は弱い


弱いくせにカッコつけた結果がこれだ



「ちくしょう、ちくしょう...!」




俺にもっと、力があれば...






力?


そうだ、アレだ




俺にはアレがあったんだ






俺は震える足で立ち上がり、ドランを睨む


「なんだてめぇ、まだやる気か?」




奴の言葉に対し、俺は不敵に笑い


ポケットの中のあるものを噛み砕き飲み込んだ




「おいてめぇ、今何食いやがった」


「メシ、腹減っちまったからな」




俺は奴に強がりを言い放った



「ふざけてんのかてめぇ!?」




奴が再び俺に向かってくる


そして、打ってきたパンチを俺は顔の前で手の平で受け止める


「なっ!?」



奴が怯んだ隙に、奴の頭に頭突きをかます


「っ!てめぇ!」




たじろぐドランに俺は言った



「どうした?さっきまでの威勢はよ」



俺は奴をまた煽った



力が溢れる


まだ痛みはある、だけどそれ以上に力が湧いてくる




パルフェがくれたのは傷を治す物ではなく、力を上げる丸薬だったみたいだ

こんな良いもんくれたのかあいつ



「ありがとよ、パルフェ」


俺は心の底から感謝した






「この野郎...それで俺に勝つつもりか?」

「ああ」




俺は人差し指を立てて、奴に見せつけた



「...何の合図だそりゃ」


「次の一発で決めてやるよ」



俺は不敵に笑い、奴に言った


ドランは肩を震わせ言った


「そいつは...」


「俺の台詞だぁぁぁぁぁぁ!!」





奴の拳が俺に向かってくる


その拳を後ろに大きく跳ねてかわし、俺は飛び上がった




「なっ!?」



大振りのパンチをかわされ、奴がよろける




よろけたそいつの頭に俺は狙いを定めた





「今まで散々お前に迷惑を掛けられて苦しんできたみんなの苦しみを...」

「お前みたいな奴に好き勝手言われて何も言い返せず悔しかった俺の不甲斐なさを...」




「そして...」




「そんなお前に、金を盗られてその事で俺に泣かされた揚げ句、ひっぱたかれて屈辱を味あわされた...」




「パルフェの痛みを...!」








「思いしれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」




俺の渾身の力を振り絞って振り下ろされた木の棒が、奴の頭を叩き潰す


頭から血を流すドラン

それと同時に、木の棒が砕けた






「ぐぁっ!!あがぁっ...!!」


奴が悲痛な叫びをあげ崩れ落ちる




勝った、勝ったんだ俺は


こいつに勝ったんだ





「ア、アニキィっ!?」


子分がドランに駆け寄り俺を睨む


「て、てめぇ!!よくもアニキをやりやがったな!」




その時、どこからともなく石が飛んできた


見ると、周囲の人々がこいつらに向かって石を投げつけている




「な、何しやがんだてめぇら!」




「ざまぁみろドラン!もうお前らなんざ怖かねぇ!」


「そうだ!今まで散々威張り散らしてたバチが当たったんだ!」



人々の溜まってた鬱憤が今晴らされている

思ってた以上に恨みを買ってたんだな




「ちくしょう!覚えてやがれよてめぇ!!」


子分がドランを抱え、ふて腐れた様にとぼとぼと去っていく





俺は勝った

勝利の余韻に浸り、気が緩んだと同時に俺は地面に倒れこんだ




あの丸薬は一時的にパワーアップするだけだったみたいだ

尽きる前に倒せてホント良かった




「あらら、だいぶ無茶しちまったな...」 


横たわる俺にパルフェが駆け寄ってきた




「ナオキ!!」


今すぐにでも泣き出しそうな顔で、俺を心配そうに見下ろすパルフェの姿がそこにある


「パルフェ...」



そう小さくつぶやいた俺に、パルフェは抱き付いてきた



「え?ちょっ?パルフェ!?」


「馬鹿っ!馬鹿馬鹿馬鹿ぁ!馬鹿ぁっ!!」




パルフェは俺に抱きついたまま泣きじゃくる



「な、なんだよ、勝った奴にそんな事言うなんて失礼だろ!」


「カッコつけておいてボロボロになってるような奴なんて大馬鹿よ!」


「ホント、大馬鹿!」




パルフェは更に泣く




「なんだよ、素直に褒めてくれたって良いじゃんか...」


しかしまぁ、やっぱりこうして見てると、可愛いらしい女の子なんだなって思う


そんな風に思っていると、俺に対して周囲の笑い声が聞こえてきた




「おいおい、あの兄ちゃんまたあの子泣かしてるぞ」

「やぁねえ、女泣かせかしら」



「...」



視線も耳も痛い




「でも見直しちゃったわ、あのドランをやっつけちゃうだなんて」

「ああ、良くやったぞあんた!」




次に聞こえてきたのは称賛の声だ


そうそう、こういうのが聞きたかったんだよ俺は




「いやぁ~...」

俺が照れていると、パルフェが俺の頬をつねる


「いっっっで!!何すんだよ!」

「調子に乗んな!」


その光景に、周囲の笑い声が響く



そうしてると


「お兄ちゃん」

あの少年が近寄ってきた


「君はさっきの」


「あんな怖い人をやっつけちゃうなんて、スゴくカッコよかったです!」


俺はそんな少年に語りかける


「何言ってるのさ、一番カッコ良かったのは君さ」

「え?」


「君が勇気を出して告発したから、アイツらがボロを出して周囲から責められた揚げ句、俺にぶっ飛ばされた」

「これも全部、勇気を出した君のおかげさ、君こそ一番のヒーローだよ」


「そ、そんな...」

照れる少年に対してパルフェが続ける


「そうそう、あんたが一番カッコ良かったわよ」

「どっかの馬鹿なんかよりずっとね」

「まだ言うか!」


再び笑い声が響く


「ったく...あってっ...!」


身体が痛む

あれだけ殴られたから当然だな

スライムの攻撃なんかよりずっと痛ぇからな


「大丈夫?」

パルフェが俺に聞く

「大丈夫...ではないかな、ちょっとヤバいかも」


「まってて、今治してあげる」


よく考えたら、こいつは自称とはいえ未来の大賢者を目指してるんだった

だったら回復魔法の1つや2つぐらい使えるだろう


「それじゃ、早速頼むわパルフェ...」


そう言う俺に、パルフェは何かを差し出してきた


「...え?」


その出してきた物に見覚えがある

いや、見覚えしかない


それは薬草だった

忘れもしない、あのくそまずい薬草だ

それも束になってるやつだ


「ま、まさか...」


俺はポケットを探る

無い

ポケットの中の薬草が無い


つまりパルフェが差し出してきたのは俺が持っていたもの

あの親子からもらった薬草で間違いない


「パ、パルフェさん...?何をするおつもりで...?」

俺の冷や汗が止まらない


「何って、あんたの傷を治すつもりだけど?」


「回復魔法...とかは?」

「こっちの方が手っ取り早いし、効果も多いからよ」


「あ、あのー、流石にそれはちょっと...何て言うかその、味がですね...」


そう言う俺に、パルフェが怪しく微笑んだ


「うん、だからよ」

パルフェの口角が上がり、不気味に笑っている


「...は?」

「忘れたとは言わせないわよ、あたしを泣かせて恥掻かせた事」

「傷の手当てと、それのお返しを今してあげる」


パルフェは俺の口に薬草を近付ける

無理矢理口に突っ込む気満々だ


「ほ~らナオキちゃん、お薬の時間でちゅよ~」

「いや待って!ホントに待って!パルフェ!いやパルフェさん!いえパルフェ様!」

「わたくしめにお慈悲の程を!!」


パルフェはにっこりと微笑んだ




「だ・~・め☆」



次の瞬間、俺の口の中

いや、全身が悲鳴をあげた


俺の身体中に、薬草のくそまずさが伝わる

たった1つでもくそまずい薬草が、束になって俺の体に染み渡る


凝縮された森、いやジャングルが

大自然という名の暴力が俺に襲いかかる

全身から汗が噴き出す

汗どころか色々出そうだ



「ンギョルバンドゴベペルザァァァァァァァァァ!!」


俺は言葉にならない叫びをあげた

自分でも何言ってるのかわからない



多分、「誰でも良いから助けて!」

だと思う




その光景に、人々は恐怖する

先ほどまで憎き存在を倒した英雄を称えた人々が、地獄を見せられている


ある者は顔が青ざめ

またある者は苦虫を噛み潰したような顔をし背け

あの少年は今すぐにでも気を失いそうな遠い目をしている


その日、宿場町マーレは

地獄の一丁目と化した




「も...もうダメだ...」


薄れ行く意識の中、俺は見た


満面の笑みを浮かべたパルフェの顔を


屈託の無い、天使の様な顔をした悪魔の顔を



そしてパルフェは俺に言った


「ざまぁ見なさい☆制裁受けて反省しろっ☆」




はい...

おっしゃる通りでございます...

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