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第9話:どうしよう... ナオキとパルフェ、こっからどうする?


宿場町マーレを船が出発して数日が経ち、船は次の目的地であった島ランゴにある港町、メリンに着いた


着いた早々にメリンの人々は、その船から降りてきた乗客達に驚いた


優雅な船旅をしてきた人間達とは思えないぐらいに疲労でやつれた冒険者達が続々と降りてきた

最後に降りてきたのは、ばつの悪そうな青い顔をした少年と少女であった



人々は乗客達に「何があったんだ?」

と聞く、その問いに乗客達は口を揃え

「クラーケンに襲われた、そのクラーケンを倒したのはそこの二人だ」と言う


その言葉に人々は

「そりゃ本当か?」

「この二人が?信じられない」

「若いのに大した奴らだな!」

と、驚きと称賛の声を上げる

その言葉に二人は

「それはどうも...」と、相変わらず青い顔で言う


この二人、決して船酔いして気分が悪いから青い顔をしているのではないのだ


何故なら、この二人こそが他の乗客達をやつれさせた張本人だからである


まずはこの少年ことナオキ、彼こそクラーケンを追っ払って船を守った存在、もとい船を沈め掛けた張本人その一

そしてその傍らにいる小柄な少女ことパルフェ、クラーケンに手痛い一撃を喰らわせた存在、もとい船を沈め掛け乗客達を危険に晒した張本人その二だ




自分達の事で盛り上がる人々に真実を伝えられない、伝えられる訳が無いのだ


何故ならクラーケンを追っ払った決め手が、自分の吐いた嘔吐物で溜まったタルだなんて、その後の惨劇を引き起こしたきっかけだと言う事なんて

クラーケンに尊厳を破壊され、周囲に醜態を晒され、怒りによって放たれた火球によって船を沈めかけた事による惨劇を起こした事なんて



この事実を知るのは戦犯である二人

そして、その二人と乗り合わせてしまった不運な他の乗客達だけである


二人が他の冒険者達を見やる

彼らはやつれた顔と生気のない目でこちらを見て苦笑いをしている


彼らは自分達を庇ってくれている

いや、それ以上に畏怖の存在としてこちらを見ているのだろう、無理もない



しばらく会話や話題が続いた後に二人は冒険者達と別れ、町の人との会話も終えた


その後、二人は広場の椅子に腰掛けて船での出来事を話していた

もとい、反省会を開いていた



「ありゃ流石にヤバかったな...」

「うん...」

「いくら何でもやり過ぎだぞお前」

「悪かったわよ...でも、元はと言えばあんたがあたしにあんな態度取ったからいけないのよ?」

「それは...まぁ、ホントに悪かったよ」

「それでよろしい」

「お前もだぞ?俺にだけならまだしも、他の皆にやるのはマズいって」

「ホントにごめん」


「...」

「...」


「はぁ...」


二人が同時にため息をつく、二人はとにかく落ち込んでいる

それもそうだ、他の乗客達への罪悪感があるのはもちろん、それ以上の問題が出来てしまったのだ


そう、二人にはお金がなくなってしまったのだ

船を沈めるまでにはいかなかったが、だいぶ損傷させた事による弁償だ


クラーケンを追っ払った事への感謝、他の冒険者達からの「俺達にも責任はあるから...」と言う畏怖と同情による援助、足りない分は数日分の労働により何とか弁償代は払えた


しかし、金は尽きた

パルフェが両親から貰った軍資金が尽きた、まだ数日はそれで何とかなるくらいにはあった金が


金が無ければ働くしかない

しかし、二人は既に労働した後だ


正確にはナオキが労働をし、パルフェはほぼ何もしていない

ナオキが「お前も働けよ!」と言えば、「この船の乗船代は誰が払ったの?」とパルフェに言い負かされたのは言うまでもない

「船を沈めかけて、こうして働かなきゃいけないきっかけ作ったのはお前だろ!」

に対して「あんたがあたしの事笑わずに、マーレの時みたいにカッコいい所見せてくれれば良かった事でしょ?」

と更に言い負かされたのも言うまでもない


パルフェのした事と言えば、労働を終えたナオキに対して行った、クラーケン襲撃前に彼にやった不気味な踊り、もとい酔いざまし件労いのご褒美ぐらいである

「うっふ~ん♥️」「あっは~ん♥️」

と、パルフェは相も変わらすちんちくりんな身体をくねらせ踊った


しかしその度にナオキはトドメを差され吐いた、その度にパルフェに制裁された

ナオキは疲れている、肉体的にも精神的にも、だからしばらくは労働はしたくないと思っている

だが金はない

とにかく金を手に入れなければいけない


どうすりゃいいんだ

ナオキがそう思った時、一人の男が話し掛けてきた

見れば、自分達が迷惑を掛けてしまったあの冒険者の内の一人だった


「兄ちゃん達、困り事か?」

「ええまあ...」

「ちょっとね...」

「そうか、相談なら乗ってやるぜ?」


あれだけの迷惑を掛けてしまった俺達にこんな事を言ってくれるとかこの人は聖人か?と、ナオキは心の底から思った



「ていう感じでして...」

「そうか、金が無いってのは確かに大変だな」

「あの、弁償代の事なんですが...」


「あーあれか?良いって良いって、クラーケン追っ払ってくれた礼だよ」

「でも」

「...それに、嬢ちゃんの事笑った事に対しての謝罪料でもあるしな...」

「...」

「...」

二人は何も言えなかった


「そうだ兄ちゃん、金の事なら良い話があるぜ」

「え?」


彼は話を続けた

「さっき貼り紙で見たんだけどよ、町を外れて離れた所に洞窟かあるらしくてな、そこには宝があるだのなんだの書いてあったんだよ」

「宝が?」

「ああ、何でも盗賊が隠した財宝だのなんだのだってよ、金がいるなら狙ってみたらどうだい?」


「確かに、それなら行ってみるべきかな」

ナオキがそう言うと、パルフェが袖を引く


「なんだよ?」

「あんた本気?そんなの眉唾物じゃない」

「確かにな、嬢ちゃんの言う通りだ」

「平然と宝があるなんて貼り紙に書かれてるなんて不自然だ、誰かのイタズラって可能性も高い」

「それに、町からそこまで離れすぎた場所って訳でもない、既に誰かが宝を持ち去った後ってのも大いにある」

「それは確かに...」

三人が各々意見を出した



「まぁとにかく、金に困ってるなら一攫千金のチャンスに賭けてみるのも悪くないだろうよ、んじゃ俺はこれで...」


彼が立ち去ろうとした時、ナオキが聞いた


「あの、最後に一つ良いですか?」

「なんだ?」



「何でこの情報俺達に教えてくれたんですか?冒険者からしたら、こういうのって競争相手が少ない方が有利なんじゃ」


「まぁなんだ、先輩としての余裕、ってのは建前で、兄ちゃん達が困ってたから放って置けなかっただけさ、じゃあな」

そう言って彼は去っていった

この人はマジで聖人か?と、ナオキは再度思った




「盗賊の財宝ねぇ...どう思うよパルフェ」

「さっきも言ったでしょ、眉唾物だって、でも今のあたし達はそれに賭けるしかない」

「だな」


「そうと決まれば、早速行くぞパルフェ!」

「あらナオキちゃん、ママの為にやる気出してくれたの~?頑張ってね~☆」

「お前もな」

「はいはい」


二人はそう言い、町を出て出発した

これからの自分達の生活の為に、二人は歩み出した

せめて今日明日分の食事代宿代ぐらいは見付けたい、と




一方その頃

二人に嬢を教えてくれた冒険者とその仲間はと言うと


「おい、良かったのか?」

「何が?」


「さっきの話だよ、あの貼り紙の事、あの兄ちゃんと嬢ちゃんに教えたんだって?ありゃだいぶ眉唾物だったろ」

「まぁそうだが、あの二人だいぶ金に困ってたからな、眉唾物でも金になりそうな話なら教えてやった方が良かったろ」

「だけどよ、もしヤバいモンスターでも居て襲われたとしたら...」

「なぁに、あの兄ちゃんはクラーケン追っ払ったぐらいの奴だ、そう簡単にはやられねぇだろ」

「まぁな」

「それに...」

「それに?」


「...あの二人、ちょっとぐらい怪我してもバチは当たらないだろ...」

「...まぁな」


彼らは忘れていない

あの二人はクラーケンを退治したが、そのすぐ後に船を沈めかけて、自分達を命の危機に晒した英雄件大戦犯だという事を



「兄ちゃん、嬢ちゃん、そう言う訳だから、何かあっても怨まんでくれよ...」

彼はそう呟いた、無理もない



そうとは知らず、ナオキとパルフェは洞窟へと向かう

財宝を手に入れ、道具や何やらの為、そして食糧や寝床の為に、彼らは進む


洞窟で二人を待ち受ける物とは、ヤバいモンスターは本当に居るのか、それはまだわからない


そして、ナオキはこの時まだ知らなかった

今から行く洞窟で、まさかあんな事が起きるだなんて

まさかそんな事実を知ってしまうたなんて






「...何かスゲー嫌な予感してきた...」

「あら、死ぬの?」

「アホ」

「や~ん☆」

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