表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/20

プロローグ

「はぁ~...」


大きなため息をついたのはこの俺、桐島ナオキ

生まれてこの方大したイベントに恵まれず派手な人生を送ってきた訳でも無い、いわゆるイケてない高校生だ

小学も中学もパッとせずに高校生になった今もこの有り様

親友と言える立場の存在は居ないし、同性とも上手くやれてないんだから彼女なんて出来るわけもなくて当然


「...」チラッ

「今からカラオケ行こーぜ」「良いね、行こう行こう」


「...」チラッ

「ほらこれ、お前が欲しがってたペンダント」「やったぁ!ありがと~♥️」


「いいなぁ...ああいうの...」

あの手のものを見ると羨ましくてしょうがない、まぁろくに行動もしなかった自分のツケのせいでもあるんだが



「ただいま~、ん」

家に帰ってきたが鍵が掛かっていた

鍵を開け玄関を見たら靴がない


リビングに行くと、テーブルの上におにぎりと書き置きがあった

「今日はお父さんもお母さんも帰りが遅くなります、おにぎりを作って置いたのでそれを食べなさい」と

「またか、まぁ今に始まった事じゃないしな」

俺はおにぎりと冷蔵庫のお茶を持って自分の部屋に行き、椅子に腰掛けた

その後、自室でテレビを見たりゲームをしたりおにぎりを頬張りながらとりあえず勉強をしたりと時間を潰した


ふと時計を見る

「なんだ、まだ8時前か」

色々とやってたがさほど時間は経ってなかった

「どうすっかなぁ、もうこれと言ってやる事ねぇしなぁ」

そういって俺はベッドに倒れこむ

「はぁ~...」

仰向けのまま天井を見つめ、秒針を刻む時計の音を聴きながらため息をつき俺はつふやいた


「俺、ずっとこのままなのかな...」

朝起きて学校に行ってただ授業を受けて、友達と遊んだりもせずに家に帰ってゲームしたりしてただ退屈な毎日を過ごしてるだけの日々

大人になっても同じような事をしてるんだろうなと思う



「何でもいいから刺激的な事起きねぇかなぁ」

俺はそうつぶやき、うとうとしながら目を閉じてそのまま眠りについた





「...なさい」


「ん~...」


「目覚めなさい...」


「後で、今なんかだるい...」


「はよ起きんかい!」バシィッ

「おぁっ!?」


俺は頬に痛みを感じ飛び起きた


「な、なんだ!?」

「あらあら、やっと起きましたね」


慌てる俺の前にいる1人の女性がくすくすと笑う


「だ、誰だあんた!?」

「あら、人に名前を聞くときはまず自分から名乗るべきではなくて?」


「ま、まぁそうだな、俺はナオキ、桐島ナオキだ」


「私はイルク、女神イルクと申します」


「め、女神?」

「女神を見るのは初めてかしら?」

「えぇ、まぁ」


そりゃそうだ

女神なんて神話やアニメやゲームと言った空想の世界での想像図でしか見た事がない

実際今俺の目の前にはその想像図通りの典型的な女神がいる訳だが


「あー、えっと」

「あなたの言いたい事ならわかります、ここはどこで何故自分はここにいるのか、ですね?」

「その通りです」


「ここは異世界で、あなたは私が連れてきました」

「はぁ...は?え?はぁ!?」

「あらあら、期待通りの反応ですわね」


俺の反応が期待通りだったらしく、女神はまたくすくすと笑った


「異世界!?なんでまた!?俺が何したってんだ!?」

「死にました」

「は?」

「死にました」

「はぁ?」

「死・に・ま・し・た」

「はぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「あらあら、本当に期待通りの反応してくれますね」


そりゃそうだ、いつもの様に部屋のベッドで寝てたら突然の死に見舞われて、異世界に飛ばされるなんて驚いて当然だろう


「何で死んで異世界に飛ばされたの俺」

「あなたが不憫で無様...じゃなくて女神として放っておけない使命に駆られたからです」

「今なんか聞き捨てならない一言聞こえたんですけど」


要するに同情によるお情けって事か


「...因みに死因は?」

「聞きたいんですか?」

「...念のために」


「...本当に聞きたいんですか?」

「やっぱいいです」


この飄々とした女神が言い渋ってるという事は、相当ひどい死に方したんだな俺は


「俺はこれからどうすれば?」

「そうですね、とりあえず異世界に行って冒険するなり何なりとして平和に暮らすなり何なりとしてください」

「雑っ!?」


この人本当に女神か?

本当は怪しいカルト団体なんじゃないだろうか?


「まぁ色々と話をしましたが、そろそろ異世界に出発としましょうか」

「いやまだどういう世界かとか聞いてないんですが」


「百聞は一見にしかずと言うでしょう?自分の目で見て触って確かめて下さいな」


要するに「自分で何とかしてね☆」って事かよ


「...はぁ、わかりましたよ、じゃあとりあえず」チラッ

「?」


「いやほら、アレですよアレ」

「アレ?...ま、まさか!?いけません!私達は出会ったばかりな上に人間と女神という立場!いくら私が可愛いからってそんなハレンチな事!!」


何言ってんだこいつ


「いやそうじゃなくて!異世界に旅立つなら、強い武器とか能力とかくれるもんじゃないのかって思って!」

「まぁ!生き返らせてもらい異世界に連れてきてもらって可愛い私とお喋りも出来たのに挙げ句の果てにまだ何か寄越せと!?なんて強欲なんでしょう!」


「誰も異世界に連れてきてくれなんて頼んだ覚えはない!」

「はいはいわかりました!じゃあ何かしらの能力をあげますよ!それで良いんでしょ!ぷんぷん!」


何がぷんぷんだよアホらし


そしてなんやかんやあり出発の時がやって来た

異世界への扉を女神が開く


「さぁほら、ここから異世界へと旅立てます!さっさと行きなさいな」

「はいはいわかりましたよ」

「はいは一回!」


どの口が言ってんだ


「じゃあもう行くんで、お世話になりました」

「お気を付けて、ご武運を祈ります」


「えっ」

さっきまでの飄々とした態度とは売って変わって、清楚で慎ましくまさしく女神といった雰囲気に驚いた


「先程まではごめんなさい、あなたの事を少しからかってしまいました」

「あ、いやその」

「別世界の人間の方と話すのはとても久方ぶりだから、つい嬉しくなって、気分を悪くしてしまいましたか?」

「いや、俺は別にそんな」



気分を悪くした?とんでもない

むしろこんな美しくて素晴らしくて全てを癒してくれる慈愛に満ちた女神様に失礼な態度をとった俺に気分を悪くしてしまってないか心配になるぐらいだ


「その様な事が有ろう筈がございません、むしろ俺に対して嫌な気持ちになっていないかと」

「気にしてなどいませんよ、むしろ女神である私に対して対等に物申してくる態度を評価しています」

「勿体無いお言葉です」


女神様は相も変わらず優しく微笑んでいる


「では行って参ります」

「お気を付けて、勇者ナオキ」

「勇者だなんて俺には勿体無さ過ぎます」

「あなたはきっと、いえ、必ず勇者となる存在であろうお方、私にはそう見えます」



女神様の勿体無い言葉に励まされ、俺は異世界への扉へと足を運びくぐった


「イルク様!」

「はい」

「俺、絶対にイルク様の期待に答えて見せます!」 

「期待しております」






元の世界じゃパッとしないまま突然ポックリ死んじまった俺が、女神様と出会ってそのまま異世界へと向かう事になってしまった

だけどこれから始まるのは、ドキドキハラハラの刺激的な大冒険!

「俺は今!モーレツに!ワクワクが止まらないぜ!」


イルク様

このナオキ、必ずやあなたに相応しい勇者となって見せます








「ナオキ...」


「...」

「...ふふっ」


「ふふふ」

「言って見るものですわね」



ナオキがこの事実を知るのは、もう少し後になってからの話である


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ