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2-1

 綺麗に弧を描いた刀の切っ先は、正面の海面にズン。と不気味な音と共に見事海水を水平線まで斬った。まるで、海を刀で斬る技のようだけど。

 海面は瞬時に膨張するかのように両側から海水が天へと断末魔のような噴出をしていく。俺は見事大海のど真ん中に巨大な穴を開けた。これが恐ろしい技。幻の剣。はて? 鬼姫さんから教わった龍尾返しってこんな技だったっけ? きっと、タケルが独自に俺に内緒で産み出したのだろう。


 ああ、そうだ。まだ未完成だったからか……。

 大きなな体長300メートルの海蛇やタコ。七色の美しい魚までもが天へと噴出する海水と共に登っていく。


 それと同時に瞬く間に水淼の大龍の姿が消えた。

 

 勿論、遥か遥か下方へと……。


 ここ地球とは違い水の惑星の海には底というものは考えない方がいいっていうし。


 奈落の底へと落ちた水淼の大龍はどうなったのかはわからない。恐らく底にはまだ並々ならぬ海水があるはずだし。そうだなまだ無傷で、脅威は完全には去っていない。


「おおー! これが新しい武の技か! 強くなったな。武よ」


 東龍は大穴の空いた大海をしばらく眺めている。天空には美しい七色の魚群が宙を泳いでいる。スカイブルーのクラゲ、金色のエビなどが舞っていた。すぐに豪雨のような元は海水だった雨が辺りに降り注いだ。


「はあ、疲れた……」

「武。お前強いな。一万年くらい生きていたがお前みたいな奴は見たこともない。お前のおかげで地球に住んでみたいと初めて思ったぜ! なあ、後で城下町の薄谷に行こうぜ。そこには酒と団子があって、かなり美味いんだ。そうだ南龍も誘おう。小さい身体だけど大食いだぞ。俺と同じくその店の常連でさ」


 本当に疲れた俺は東龍に連れられ、竜宮城の城下町へとたどたどしく歩きだした。なんでも薄谷って店に行くんだって。おおよそ3千年前からある老舗で、昔は乙姫もよく通っている有名な店なんだって。そこで、俺を休ませると同時にもてなしてくれる。


 武家屋敷や出店などが目立つ。未だ賑わう城下町を、夜を迎える準備の提灯が町の魚人たちによって所々に掛けられ、俺は幻想的な竜宮城の城下町の一面を覗いた。


「ああ……けど、俺は未成年だから……」

 疲れで肩で息をしながら俺は自分でも真面目過ぎだなと思った。

 ここでは年齢は関係ないようにも思うけど……。やっぱな……。

「未成年? なんだ? 酒が飲めない病気か?」

「いや、違うけど。まあ、団子とお茶を頂くよ」

 東龍は俺の肩を叩き。

「ならいい。ほら、行こうぜ!」

 俺は東龍に連れられ、竜宮城の城下町の一角へと案内された。この町では東龍には友人が多いんだって、店の前に立つと一人の女性が俺を迎えた。


 数多の提灯で幻想的な灯りに仄かに照らされた美しい女の人を、東龍が名前はミンリンだと紹介してくれた。


 なんでもミンリンは城下町随一の美しさを持つ薄屋の看板娘だという。見た目は19歳くらいの若い女性だったけど、実際には数千年も生きているんだって。青い色の長髪で淡い水色の中国衣装の漢服(別名ハンフーともいう)が印象的だった。


 東龍から数ある恋人候補の一人だとも教えてもらった。 

 空はもう真っ暗だった。光源は月が三つもあるけど数多の提灯が浮かんでいないと、足元もおぼつかない。それでも、行き交う人々が絶えない。大いに賑わう夜。俺は東龍とミンリンに連れられ薄屋の奥の席へと向かった。


 早速、東龍は薄屋の一角に座って豪快に注文すると、向かいの席の俺に酒を勧める。

「武よ。酒は美味いぞ! 騙されたと思って飲んでみろ」

「いや、俺は……」

 俺は困って、東龍の隣席の南龍を見た。 


 南龍はそんな俺にはまったく気付かないかのように、ただひたすら黙々と食べていた。豚の頭。饅頭。ワンタンと白身魚のスープ。坦坦麺。焼酎を二升。ビール。豚足とニラの炒め物など、一気に平らげてしまう。なんとも大食いな。

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