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1-1

 なんか……? 恐ろしい威圧感を後ろから感じる。きっと鬼姫さんだろう。焼きもちをやいているのかな? 怖いけど今は気にしないことにした。

 

 それから時間の感覚がなくなってきたけど、再会の後に俺は神社の外へすぐに向かった。麻生には悪いが朱色の間で待っててくれって言ってある。そういえば麻生はニッコリ笑って手を振っていたな。


 早くに水淼の大龍に打ち勝つ力が欲しいのも事実だった。

 理由はわかる。今でも四海竜王が戦っているのだから、俺には一分一秒でも早く水の惑星へと戻らないといけない焦燥感があった。


 俺たちは存在しないはずの神社から小舟を漕いで、少し離れた小島に来た。丁度、昼の15時頃だ。


 鬼姫さんと蓮姫さんは武装して、大海の前にいる。


「では、武様。しっかり見ていてくださいね」


 そういうと、鬼姫さんは数打ちの刀で、一度大海に背を向け、振り向きざまに大地を踏んで刀を振り下ろした。


「えい!」


 鬼姫さんの掛け声とともに、天と地を一周したかのような刀の軌道から発せられる気は、大気を震わせ大海のど真ん中に、ガコンとまるで空気の拳で殴ったかのような大穴を開けた。 


 海が悲鳴を上げる。

 大穴からは、両脇へと海水が物凄い勢いで噴出していく。

 なんと、大海は全て消え去り、断末魔と共に大地が見えてきた。


「これが……幻の剣。龍尾返し……」


 轟々と音のする大海の大穴からは、珊瑚やカニやウニまでがここから見えて、俺は震えを少しでも抑えるのがやっとだった……。

 額に浮き出た汗を拭って、鬼姫さんは俺を見つめてニッコリと微笑んでいた。


「すぐに覚えられそうですか? 武様?」

「武なら大丈夫だね」


 蓮姫さんが俺の肩をポンと叩いた。

 これには俺も震え上がった。身体中の筋肉が収縮してしまって止まらない。こんな奥技があるとは知らなかったんだ。これなら四海竜王にも楽に勝てたはずだ……。


「さあ、幻の剣は、まだまだあるんだよ。さっさと稽古を始めようか。武」

「……はい!」


…………


「でやぁ!」


 それから俺は腕が痛くなるほど何度か龍尾返しを練習した後、ここ離れ小島で、剣で背中から渾身の気を振りしぼって弧を描いた。そのまま刀の切っ先はガコンと大海のど真ん中を気で叩き割った。見事に鬼姫さんと同じような大穴を開けられたんだ。


 けれども、大海にできた大穴は鬼姫さんほどじゃない。ある程度の範囲の海水と魚が遥か空へと舞い上がるくらいだった。ウニや珊瑚までもが海面から天空の天辺に向かって宙を泳いでいる。けど、あまり規模は大きくはなかった。


「お見事です! よくできました! 武様!」

「お見事! 武!」


水のなくなった大海に、空から海水が元へ戻りだす。豪雨のように降り注いでは、辺りには濃霧が生じた。それでも、鬼姫さんと蓮姫さんが感心して頷いていた。


 まだまだだな……。

 俺はキッと目を細めて、刀の切っ先を見つめた。


「武様。早くも幻の剣の一つの龍尾返しの初歩を習得したようですね。ですが、幻の剣はまだまだあるのです。全て習得できるかは、これからの修行次第ですね」


 鬼姫さんが俺の傍で厳しい口調で言った。


「武。今日の稽古はこれくらいにしようか。後は麻生さんとデートかい? こんな時だからこそしっかりとデートするんだよ。辛いだろうけど、もう二度とできないと思いな……。あと、幻の剣の龍尾返しはまだまだなのだから、水の惑星でもしっかり稽古するんだよ」

 蓮姫さんの茶化す声に俺は顔を真っ赤にすると、鬼姫さんも顔が真っ赤になって即座にそっぽを向いた。ここからでは鬼姫さんの横顔しか見えないけれど……いや、見ない方がいいかもな……。


「……はい!」

 

 俺は額に浮き出た汗を拭ったけど、疲れが吹っ飛んだ元気な声を出していた。

 急いで一人。小島から船を漕いで存在しないはずの神社に意気揚々と向かった。それにしても、鬼姫さんの横顔は一体どんな顔だったんだろう?

 

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