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4-2

 そうだ! この龍を討とう!


 北龍と鬼姫さんの方は、まだ大丈夫だと思うから。俺は西龍と地姫さんの海より遥か西側へ行くことにした。

 逃げ惑う人々の合間を走り抜けていると、途中で、人にぶつかってしまった。

「痛ったいわねー! どこへ行こうとしているのよ! この一大事に! みんな避難しているのに! そっちは逆方向よ!」

 見ると、金色のチャイナドレスの美しい女性だった。

 長身で切れ長の目をした派手な衣装の女性だ。

「すいません! 俺、急いでいます!」

「え、そっちの方角は! あ、あなた武様でしょ!」

 女性の声を聞き流して、俺は西へと向かった。

 

 竜宮城の城下町の人々で、武装していない人は避難している人たちだ。

 徐々に人がいなくなり、付近のがらんとした出店の暖簾は寂しそうに揺らいでいた。


「ねえ、避雷針って知ってる?」

 さっきの女性はまだ俺についてくる。

 これだけ急いで走っている俺に追いつくなんて……。

「え! いや、ごめん! 俺、急いでるんだ!」

「あなた武様でしょ。これを持って行って!」


 女性から一本の何の変哲もない小枝を持たされた。


 北西の砂浜が見えてきた。

 竜宮城の城下町の空を腹で覆った数多の龍の頭が見える。

 それぞれ海水を飲んでいた。 

「じゃ、またね! 武様!」

 女性は避難のため竜宮城方面へと向かったようだ。


 あんな派手な人には似合わないこの小枝は? 一体なんだろう?

 俺はどうしても気になって、走りながら小枝をチラチラと見てしまう。その時また、人にぶつかってしまった。今度は短めの赤い髪のチャイナドレスの女性だ。


 城下町はもう過ぎて、砂浜の砂粒が所々に見え隠れする道を走っていた。逃げ惑う人々はもういない。


「うーん……。躱し損ねたわね」

 ぶつかった時にドンっという音がしたけど。

 妙な感覚だった。ぶつかったようで、ぶつかっていないような感じだ。

「うっ……」

 俺は女性に当たってしまった肩を摩った。

 少し痛くて腫れているみたいだ。

「私は姉と一緒にクンフーの道場を営んでいるから、ぶつかったことは気にしないでね。ごめんなさい寸でのところで当身をしたの」

 当身を瞬間的にしていたなんて、気がつかなかった。

 俺の師範の一人。麻生 弥生の父親みたいな人だった。

 相手がぶつかる時に、寸でで膝、肘を軽く当てて衝撃を抑えたんだ。

 この人は強い。

 俺の直観がそう告げている。

「あなた。山門 武でしょ。これを……? あら? もう持ってるの? それじゃあバイバイ! 頑張ってね!」

 赤色の髪の女性は竜宮城方面へと走った。



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