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0-1

 微睡みから……。

 目を開けると……。

 柔らかい光が……。

 

 そして、優しい声が、伝わってくる……。

 

 きっと、麻生だ。

 今頃は、俺の家で階下へ行って父さんと母さんに挨拶している。


 いつもの食卓には、あいつの料理が半分載って、お替りをあまりしない俺に、少しは食べなさいと言って……。


「武……」

 ほら、きっと、階下からあいつが呼んでいるんだ。


「武さん……」

 ほら、きっと……?


「起きろ!」


「わ!」

 俺は飛び起きた。

 俺は温水と冷水の入り混じった川の流れの中にいた。いや、正確には川に浮きでた岩の上にいた。岩の上は所々、苔が生え微量な熱を帯びている。隣には東龍が俺の顔を覗いていた。


 天井を見上げると、くっきりと丸い穴の開いたガラス窓があり、遥か空が見える。そこにバルコニーのようなところがあって、美しく、しかも可愛らしい女性が立っていた。

 彼女は、こちらを見下ろしては、こちらへ焦りながら手招きをしていた。


「姫?!」

 東龍の声に、俺はあの女性が乙姫だったと思い出した。

 確か竜宮城の奥の間で、東龍と戦って、それから……?

 それから……。

 何だったっけ……?


「武よ! 起きろ! 先に行っているぜ!」

 隣の東龍が叫んでいる。

 俺には何が何だかわからなかった。

 東龍は先に川の中へと飛び込み。その勢いで水を掻き分けながら流れに逆って、泳いで行った。珊瑚の壁面にぶら下がる縄梯子へと泳いでいるようだ。


 俺は上半身を起き上がらせた。身体はどこも痛くなく。いつもの状態だ。 

 東龍は縄梯子を登りながら、こちらに振り向くと、

「武! これから奴と戦うんだ!」

「え?! なんだって?! 誰とだ?! 地球での決着はまだついていないわけか?! ……ここはどこだ! 湯築! 高取! 鬼姫さん! 光姫さん!」

 俺は辺りを見回しても、蓮姫さんも地姫さんも誰もいない。

 

「東龍よ! 早く! 水淼すいびょう大龍おおりゅうが! 来る!」

 乙姫の傍に、北龍が駆け寄って来た。

 均整のとれた北龍の顔がここから見えたが、その身体はボロボロで、満身創痍だった。


「武! 俺と一緒に来てくれ! 何故、この星の水が無くなったのか! その理由! 何故、地球へと侵略しないといけなかったのか! その理由! それを自分の目で確かめてくれ!」

 東龍はあっという間に縄梯子を登り切り、乙姫たちと消えた。いや、俺の視界から消えたんだ。


 俺は左手に、手紙が握られていることに気が付いた。

 開けてみると、高取からの手紙だった。


「武。ありがとうね。地球を救ってくれて……ここは竜宮城で、そこでこの手紙を書いているの。……でもね、地球の危機はまだまだあるの。私の悪い予感だけど……それは地球の水が全て無くなることよ。竜宮城が地球を侵略してきた理由を、乙姫から聞いたんだけど……竜宮城の住まう惑星にはこれ以上ないほどの脅威があるの。そう、地球の水も関連した……。武……死なないでね。絶対によ……。それと、惑星の龍には特に気を付けてね。………あと、麻生さんは元気のようよ。そう地姫さんから聞いた。死なずに元気に戻って来てね。麻生さんが必ず待っているから」


 俺はあいつの面影を瞬時に思い出した。


「そういうことなら……どうせなら……全部やっつけてやる!」

 縄梯子まで急いで泳ぎ、珊瑚の壁面の縄梯子を登っていると、想像したこともない大きな咆哮が聞こえて来た。まるで、月や星が震えだすかのような音量だった。そう……想像を絶する巨大な龍の咆哮だ。

 東龍によって、縄梯子から引き上げられると、


「武! こっちだ! 急げ!」


 急いで、四季彩る廊下を東龍と走り、幾本もの葉が舞う柱を通り過ぎていくと竜宮城の正門に辿り着いた。


 空を見上げてみると、七色の月がそれぞれ三つ宙に浮いていた。

 大気は常温くらいだ。


 寒くもなく。熱くもない。不思議なところだった。


 目の前には大きな水色の壁があった。心臓のようにドクドクと脈打ち、空を見上げると、雲のような髭のようなものに、虹が渡っていた。


「な!?」


 俺は驚いて口を開けた。

 超巨大な龍がこちらを遥か天空から覗いていた。

 東龍は平然と俺の肩を叩き。


「ようこそ。龍神の住まう惑星へ……」


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