才女リンエイン
数多の龍の襲撃から少し経って、無事に竜宮城へと戻った俺たちは、東龍と南龍が祝杯にと薄屋へと向うことになった。けれども、その道中。一人の美しい女性に出会った。東龍にリンエインだと紹介されたその女性は、チャイナドレス姿の分厚いメガネを掛けた緑の長髪の人だった。
辺りはもう薄暗い。
夜を迎える提灯は軒並みにずらりと並び。仄かな明かりが足元を照らしている。まるで、行き交う人々の顔には、夜の祭りの帰りのような賑やかさが残っていた。
リンエインはその分厚いメガネで俺をじろじろと無遠慮に見てから、こう告げた。
「ちょっと、こっちへ来て」
「へ?」
「いいから! ねえ、ちょっとだけ!」
薄屋に行く道とは反対方向の路地裏にある一軒のボロ屋に俺は連れられた。リンエインは俺をボロ屋の中へ招き入れ、ここが自分の家だと言う。
「ねえ、あなたのさっきの技。心気で龍を斬るようよ。つまりは気持ちね」
「……?」
「また龍と戦うことがあれば、きっと、こう思えばいいんだわ。必ず何でも斬れるんだって」
リンエインは俺の鞘に収まっている雨の村雲の剣を見つめ。
「少し刀身を見てみたいんだけど……」
その時、東龍もこちらへ歩いて来た。
玄関先での俺とリンエインの前で、大笑いしている。
「ふふっ、武よ。ここでもモテモテだな。そいつの父親はここ竜宮城の城下町随一の天才軍師で、娘のリンエインも父親と同じく才覚を認められ、魚人を統べる軍師をしていた頃もあるのさ」




