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2-3

「あ、竜王はどんな姿をしているのか。ミンリンさんは聞いたことはありますか?」

 俺はあいつを守るには、最終目標が竜王を何とかしないといけないんだと考えていた。


 ミンリンも東龍、南龍、周りの魚人たちも皆、一斉に沈黙した。

「へ? 俺、何かマズイこと聞いた……? ミンリンさん? でいいんですよね?」

「武よ……。四海竜王も乙姫様も皆、竜王の姿を見たことは一度もないんだ……」

「なんだか……急に……俺、寒くなってきた。いや、竜王は想像を遥かに超えた強さの持ち主なのはわかるんだ……直観だけど……」

「ほんとだな……」

 東龍もゆっくりと頷いた。

 歴戦の勇者の東龍が言うのだから。みんな同じ気持ちなんだろう。

 再び沈黙が包み込んだ薄屋の店の奥から、店主が手を滑らせ徳利がコトリと倒れる音が響いた。


 薄屋でとても楽しんだ後。

 俺は竜宮城内にある客間「秋の間」を借りてひと眠りしようとした。客間も春夏秋冬とあって十畳くらいの広い部屋だった。水色の布団が中央にある。その周りには部屋の飾りは全て青色の珊瑚でできている。数枚の嵌めこみ窓には金魚が部屋を一周するかのように回遊していた。

 部屋全体は透明な水泡が床から天井まで昇って、天井は水藻が覆っている。


 綺麗な部屋だし、このまま住んでみるのもいいかもな。

 ふと、布団から薄目で扉の方を見ると、俺は乙姫がこちらを見ているのに気が付いた。


「姫様。竜王は今も竜宮城へと近づいているのでしょうか?」

 中空を見つめる乙姫が言った。

「ええ。そのようですね。時に、ここ竜宮城は地球にはいくらか近づけましたか? 敵は北へと行けば行くほど水淼の龍族がこちらへと来ているので。恐らくは水晶宮自体がここへと接近してきている証拠なのでしょう。おや? さっそく来ましたね。しばらく海の四方へ斥候をだしたままにしていてください。では、私は行ってきます」

 どこかからか、乙姫と同じ声が木霊した。

「御意。本星が地球に近づくには、さほど時間はかかりませんでしょう」

 俺は何を言っているのかはわかるが、誰に言っているのかはわからなかった。


 乙姫が俺を起こそうとする。


「武! 起きて下さいまし! 敵に囲まれています! 竜宮城の海域は広く。おおよそ十万平方メートルはありますが。ですが、敵はかなり近くまで来ていますね。それも大勢のようです! 四海竜王は竜宮城の竜王の間へと急いでいることでしょう。そこで、魚人の長老たちから戦略、戦術を授かるのです! さあ、あなたも!」


…………


 俺はそれを聞いて、すぐに一人で飛び出していた。ここから竜宮城の海域の西側へと向かっていた。

 目の前の大海は、腐り落ちそうなほどのおびただしい血の臭いが充満していた。


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