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1話 プロローグ

俺の名前はアスト、しがないF級冒険者だ

そしてたった今先輩冒険者のグリス卜に喧嘩を売られている


「おいおいアスト、お前最近調子乗ってんじゃあねぇか?」

「そうか?」

「あん?俺様の言ったことが間違ってるとでも言いたいのか?」

「そうだな、あながち間違ってな─」


ボコッ


鍛え上げられた身体から繰り出される右ストレート、それが見事に顔面にクリーンヒットする


「ガハハハハ 、これに懲りたら俺様に口答えしない事だな」

「そうだそうだ!二度とグリスト様に逆らうな!」

「.........」


見事に決まった右ストレートに満足したのかグリストが取り巻きを連れて冒険者ギルドから出ていく


「ふぅ...とんだ災難だったな...なんとかギリギリで急所を外せたか」

「アストさん大丈夫ですか!今手当しますね」

「フェシーさん、大丈夫ですよ そこまで強く殴られてないので」

「すみません...ギルド職員でありながらグリストさんを止めることが出来なくて...」

「謝らないでください!グリストがいないとギルドが困るのは分かっていますし、下手に反抗しない方がいいでしょう...それにこういうの慣れてるので!グリストの相手は俺に任せておいてください」


冒険者ギルドの受付嬢フェシーが悔しさと申し訳なさを浮かべた表情でアストに謝る

ギルド内にいる他の冒険者も次々にアストを励ましたり出ていったグリストの陰口を言っている


そうここ冒険者ギルド アスベルト支部は《A級冒険者》双斧のグリストがいないと回らない、つまり最大の権力はギルド長ではなくグリストが持っているのだ


そして俺はそのグリストから何故か嫌われており、何かとイチャモンをつけてきては暴力をふるってくる

正直その気になればグリスト程度目を瞑っていても倒せるが別に暴力だけなら対して大きな危害は加えてこないし許容範囲内だ


「だが 冒険者ランクが上がらないのはまずいな、ゴブリン退治と薬草採取だけじゃ飯を食べるので精一杯だ」


そうグリストがギルド側に圧力をかけて俺の冒険者ランクの昇格を

全て無かったことにしている

それに気づいたのはつい昨日だ、俺より後に冒険者登録したパーティが《F級》から《E級》に昇級しているのを見て疑問に思いフェシーさんに聞いてみたところ、グリストが圧力をかけて俺の昇級取り消しをさせているということを教えてもらった


「もっと自由に活動が出来ると思って冒険者登録をしたんだけど

はぁ、許容範囲外だな...ギルドも他の冒険者もかなり困ってるみたいだし ─指導だな。」


俺の明日の予定が決まった、グリストの指導後冒険者をやめることにした

ここが田舎の支部なのもあると思うが正直グリスト程度すら制御出来ないようでは話にならない


「冒険者を辞めたらとりあえず王都にでも行ってみようかな、新しい職を見つけないといけないし王都なら探せば職の1つや2つすぐ見つかるだろう」


冒険者を辞めた後の計画を考えていると何故だか少し寂しいような気がした

ここの支部が会っていなかっただけで別に冒険者自体は好きだ

色々な場所を冒険したりパーティを作って強敵を倒したり...

王都で何も職が見つからなかった場合冒険者を続けるのも悪くないかもな、、、とアルトは思った


「まだ日が落ちるまで時間があるし最後のゴブリン狩りでも行くか!」


結局日が落ちるまでゴブリン狩りを続け50匹程度倒した

すっかり辺りが真っ暗になったことに気がつき足早にアスベルに戻った


「ふぅ...結構倒したかな、これだけあれば銀貨3枚にはなるかな?

今日は奮発して外食にしよう」

「あっ!アストさん!遅かったですね心配してたんですよ?」

「フェシーさんちょっと近い...」

「あっ!すみません私としたことが...」

さらさらした桃色ボブの髪から花のような優しい匂いがして思わずドキッとしてしまった


(平常心だ平常心!!)


「あの〜アストさん?どうかしました?」

「あっ、いえ換金をお願いしたくて...」

「換金ですね!了解しました、えーとゴブリンの左耳が50個なので... 銀貨4枚ですね!」

「銀貨4枚?いいのか?3枚の間違いではないですか?」

「本当はそうなのですがアストさんには日頃お世話になっているのでおまけです♪」

「悪いな…」

「いえ、私にはこれくらいしか出来ないので」


フェシーさんのおかげで今日はかなり贅沢ができそうだ

この街最後の日だ、多少贅沢してもバチは当たらないだろう


「ありがとうございますフェシーさん」

「いえいえ!」

「そういえば聞きたいことがあったんだ」

「なんでしょうか??」

「王都に行ってみようと思っているんだが、どういう場所か─」

「えっ...アストさんこの街を出るのですか?」

「ん?ああ明日にはここを出ようと思っている」

「そうですか...そうですよね...」

「どうしたんだ?調子でも悪いのか?」

「いえ、お気になさらずに」


...俺はその後王都についての情報を聞いて、少し奮発してステーキを食べたあと泊まっているボロ宿...いやこれだと宿の人に失礼だな

...古風な宿に戻ってきた


「それにしてもフェシーさん大丈夫だろうか、元気がなさそうに見えたが...まあギルド職員も激務だ疲れが出たのだろう」


夜遅くに長話をしてしまったことに少し申し訳ない気持ちになった


「おっとそろそろ荷物をまとめないとな、王都まで馬で3日程かかるらしいから 朝にはこの街を出たいな」


アストは当然馬など飼っていないため徒歩か誰かの馬車に乗せてもらうしかない、顔も知らない奴を馬車に乗せてくれる人は少ないので十中八九徒歩だ


そんなことを考えながらアストは荷物をまとめていく

荷物と言っても特にないので10分程で全ての荷物をまとめることが出来た


「ふぅ 荷物もあらかた片付いたし今日は早めに寝て明日から始まる野宿に備えようかな」


─朝


「ふぁあ よく寝た〜 よし!行くか!」


まだ太陽の日が登りきっていない...いつもならまだ寝ている時間だ眠い目を擦りながら荷物を背負い 3ヶ月お世話になった宿のおばちゃんにお礼を言う

この宿も少し古風だが値段の割にかなり広く快適であった


「おばあちゃんありがとうございました」

「おや、もうこの街を出るのかい?」

「はい 短い間でしたがお世話になりました!」

深々とお辞儀をする

「はいよ、この街に戻ってきたらまたおいで」

「はい!是非」


正直この街に戻ってくることがあるのかは分からない

だがもし戻ってきたらまたここに泊まろう そう思った


「あっ!!!忘れてた!グリスト!」

そう、昨日立てた計画─グリストの指導

ステーキの感動と王都に着いてからのことを考えていたら完全に忘れていたのだ


「グリストいるかな〜?こんな朝早くにいるわけないか」

そんなことを呟いていると 冒険者ギルドの方からバカでかい騒ぎ声が聞こえてきた

すごく聞き覚えのある声だ...


「ガハハハハ、昨日のアストの顔見たかよ!今日は腹に1発入れてやるか!ガハハ」


どうやら昨日の夜からずっといるらしい、ギルドの人も酒場の人も困っている様子だ


「誰の腹に1発入れるって?」

「あ?」

「今日俺はこの街を出る」

「あん?俺が許すとでも?お前は一生俺様のサンドバックだ」


昨日と同じ単純で大振りな右ストレート

グリストは必ず最初に右ストレートを出す、A級冒険者とは思えない単純さだ


スカッ!!


「そんなの当たるわけないだろ」

「よ、避けただと!」

「分からないのか俺はこれまで攻撃をわざと受けてやってたんだよ」

「そっそんなはずあるか!俺様のパンチが当たらないなんてありえるはずがない!しかもこんな雑魚相手に!!!!」

「もういいか?早く出発しないと遅れちゃうんだ」


次々と放たれるパンチを軽々避けて欠伸をする


「ふぁ〜 グリスト俺はお前がこれまで俺にしてきたことを別に恨んでないしやり返したいとも思わない、これから俺がするのはお前のためを思ってすることだわかってくれるよな?」

「や、やめろ!やめてくれ!助けてくれ!謝るこの通りだすまなかった、だから─」


バタンッ


「やり返される覚悟はなかったか」

グリストは幸運なことにアストが指導する前に気絶してしまった


「うぉおおおおおお!!!!」

「グリストがやられたぞ!!!」

「これで開放される!」


ギルド内に次々と喜びの声が広がる 指導を見ていなかった人も声に気が付き様子を見に来る


「「「「「「アスト!アスト!アスト!アスト!」」」」」」


ギルド内全体にアストを称賛する声が広がる、アストの強さに驚く人や グリストから開放されて泣いている人もいる


「アストさん!」

「フェシーさん 、グリストは倒したので当分は大人しくしていると思いますよ」

「ありがとうございます!なんとお礼をしたら良いのか... ほんとに出ていっちゃうのですね」

「はい フェシーさんにもお世話になりました ありがとうございました」


早く出発しないと昨日の夜綿密に立てた計画が崩れてしまう

別に大した問題ではないが、この街でお世話になった人といえば宿のおばちゃんとフェシーさんくらいだ、お礼も言えたしこれで後悔なく王都に向かえる


「はい、アストさん王都でも頑張ってください!私応援していますね!本当にありがとうございました!またいつでも戻ってきてください!それに...それに ...」


俺は面倒事に巻き込まれる前に冒険者ギルドを出た

フェシーさんが最後言葉に詰まっていた気がするが ここで振り向いてしまうと俺は恐らく涙を堪えることが出来ないだろう、後悔はないしこれが最善だったと思う、だが別れはどうしても寂しい気持ちになってしまう


「よし、これからは心機一転王都で頑張るぞ」


決意の独り言を最後にアストはアスベルトの街を去った



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