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気になるあの子がVtuber!?  作者: 久我拓人
4/5

アナログ少年と次の日

「ほれ、そろそろ起きぃ」

「んが?」


 気づけば朝だった。

 あれ? いつの間に寝たっけ? というか夕飯とか食べた? あれ?


「朝?」


 窓の外は明るく、確実に朝だった。

 なるほど。

 本当に夜になって眠っていたらしい。

 あの生放送を見てから、考え事が頭の中をグルグルとまわっていて、あれから何をやったのかも覚えてない。そもそも僕はベッドに入っていたのか。

 それすらも曖昧だった。


「まだ寝とるのかい」

「おばあちゃん?」


 ベッドの横にいたのはおばあちゃんだった。


「お母さんに見えるかい?」

「ぜんぜん」


 おばあちゃんはケラケラと笑って時計を僕に見せた。

 どう考えても遅刻だ。

 今すぐ家を飛び出てホームルームにギリギリ間に合うレベル。

 つまり、手遅れの状態だった。

 というか、そもそもおばあちゃんが僕の部屋に入ってきてまで起こしに来るという緊急事態に気づくべき事だった!


「うわぁ!?」

「朝ごはんはしっかり食べやぁ」


 正直に言うと食べている時間はない。

 でも毎朝おばあちゃんが作ってくれるので、それを食べないで学校に行く、なんていう選択肢は存在しない。

 大急ぎで制服に着替えると味噌汁でごはんを流し込み、歯磨きもしないで家を飛び出した。


「いってきます!」

「はいはい、元気でなにより」


 笑顔で見送ってくれるおばあちゃんに適度に感謝しつつ、僕は学校へと急ぐ。

 どう考えても遅刻。しかし、頑張れば一時間目に間に合う。こんな事ならいっその事、一時間目の途中ぐらいで起こして欲しかった、

 そんな絶妙な遅刻具合の自分を呪いつつ(あくまでおばあちゃんは悪くない。悪いのは僕だ)、高校へとたどりついた。


「ひぃひぃ」


 運動は得意じゃない。得意だったら部活に所属している。マラソンとか得意な人間は、相当に恵まれている遺伝子を持っているに違いない。

 帰宅部バンザイ、と訳のわからないことを考えながら靴を履き替え、三階の教室まで駆け上がった。すでに太ももはパンパンになり、がくがくと震えそうになる。


「きつい……!」


 それでも何とか廊下を走り切り、最後の体力をそこで使い果たした。

 ヘロヘロになりつつも、なんとか教室に到着。


「遅れましたー!」


 スパーン、とドアを開いて、僕は教室に入った。

 みんなの視線と共に教師の視線が僕へと注目する。ウッとなっちゃう恐怖に、なんとか抗った。


「おいこら。遅刻したんならもう少し遠慮気味に入って来い」


 担任の容赦ないツッコミにクラスメイトがドッと沸く。


「す、スイマセン……」


 僕は苦笑しつつ自分の席に移動した。

 その際に、チラリと窓際を見る。

 そこには……みんなと同じようにこちらを見る夏樹さんの姿があった。相変わらず前髪は長くて、その表情はあまり見えないけれど、口元に手を当てて笑っている。

 そうだ、思い出した。

 いや、忘れてなんかいない。

 ずっと頭の中にあって、忘れているわけがなかった。

 雪ノ原月夜の正体。

 バーチャルユーチューバー、雪ノ原月夜。

 彼女の正体は……

 それは、夏樹ひなたじゃないのか?


「なにやってる? はやく座れ。遅刻にするぞ」

「え、あ、はい。遅刻にはならないんですか?」

「してほしいのか?」

「スイマセンでしたー!」


 僕はそう叫ぶと一目散に席についた。

 また笑い声がクラスに起こる。そんな状態に、僕は自分でも笑いながら、ふは~、と息をはいた。

 なにせガクガクと足が震えている。本格的な運動不足だった。今日、体育の授業があったらなにもできないところだ。あぶないあぶない。


「朝のホームルームは終わるぞ。なにかある人はいるか? いないな。それじゃぁ今日も一日がんばるように」


 といって担任は教室から出て行った。一時間目までの軽い空白時間に、また教室は騒がしくなる。


「おまえは陽キャなのか陰キャか分からんな」

「うはは……はぁ、疲れた……」


 クラスメイトのツッコミを受けつつ、僕はちらりと夏樹さんの姿を窺った。

 彼女は、いつも通り……いや、僕は彼女のいつもなんて知らないんだった。

 正直、彼女は目立たない。

 発言もしないし、暗い雰囲気だし、いるのかいないのかも分からない。


「……」


 そんな夏樹さんは静かに教科書に目を落としていた。

 予習だろうか? それとも時間つぶしなだけだろうか? クラスメイトで、彼女に話しかけている人はいない。見たこともなかった。

 誰も、夏樹さんには関わっていない。

 それはつもり、『ぼっち』というやつだ……


「――っ」


 ズキリ、と心が痛んだ。

 この痛みは、知っている。良く、知っていた。忘れるはずもない、痛みだ。


「どうしたん、アナ君? 忘れ物?」


 隣に座っている青木さんが声をかけてきた。

 僕がぼ~っとしていると思ったんだろうか。それとも、顔をしかめてしまったのを、見られたのだろうか。


「いや、大丈夫! めっちゃ疲れただけ。起きてから一歩も歩いてなくてさ。ずーっと走ってたから太ももパンパンだよ、あははは」


 腕をふって走るジェスチャー。正直、足はもう動かない。


「あはは! そりゃ疲れるね。お腹すいてるん? なんか食べる?」

「いや、ちゃんと食べてきた。ごはんと味噌汁」

「食べてきたんかい!」


 周囲のクラスメイトたちがツッコミを入れてくれた。

 そして笑う。僕も笑う。そうしたら、心の痛みは消えていった。

 それでも、


「――」


 僕の頭の中には、相変わらず雪ノ原月夜のニューバージョンのアバターが、腕を広げてぶ~んと走り続けているのだった。

 昨日の放送で見た、彼女が元気に走り回る姿。

 小さな部屋の中を月夜さんはご機嫌に走り回っていた。

 それは……

 とてもじゃないけど、夏樹さんには……見えない。

 ログネェ先輩とも、ぜんぜん違う。


「……」


 そんなこんなで午前中の授業は半分ダラリと過ごし、休み時間もぐったりとしている状態だったが、お昼休みにはなんとか復活した。

 みんなで購買に行ってパンを買い、それでお昼ごはんを済ました。


「……ちょっと先輩ン所いってくる」


 相変わらずだなぁ、と友人たちに言われながら三年生の教室へと移動した。美人なログネェ先輩と話せる仲ということもあってか、羨ましいと言うヤツはいても……実際に付いて来るクラスメイトはいなかった。

 高校三年、となると一年生が紛れ込むのはちょっと勇気がいる。しかも、その相手が高校一の美人となると尚更だ。

 でも。

 しかし、臆することなく僕は進んだ。なにせもう慣れてしまったから。

 開いた窓からひょっこりと顔を出すと、相変わらずノートに鉛筆といったアナログスタイルの先輩がカロリーメイトを食べながら落書きをしていた。

 そろり、と近づくと先輩も気づいたらしく手を止める。ちょっと近くで先輩のファン倶楽部メンバーが目を光らせたけど、まぁ大丈夫。それも慣れっこだ。


「どうした、アナログ少年。いつも元気な君が、無言で来るなんて珍しい。なにか陰湿なイジメでも受けたかい? 相談なら私ではなく教師でもなく、警察をオススメするよ」

「いや、えっと……僕は普段から、そんなに元気ですか?」

「ん~……」


 先輩は天井を見て考える。そして、そうだな、と一言。僕のイメージは妙な方向で固まっているようだ。まぁ、いいけど。


「先輩、昨日の放送……見ました?」

「なんだい? 雪ノ原月夜嬢のことかい? 君は私を誰だと思ってるんだ、なんていう台詞は置いておくとして。残念ながら見ていないよ。君にも雪ノ原嬢にも申し訳ないが、昨日はちょっと用事があってね。生放送には間に合わなかった。アーカイブは上がっているかい?」


 アーカイブとは、生放送を録画した動画のことだ。コメントなども当時のままに再放送を見るように保存されている。もちろんアーカイブを残すのかどうかは任意ではあるが、著作権やその他もろもろの理由により運営から削除されることもある。

 というわけで、生配信はできるだけ見ておいた方が良い。

 また、Vチューバーによって形式は違うけれど、見やすいように編集したりカットしたりする人もいるので、やっぱり生配信は見ておいた方が良い。


「いえ、たぶん……あぁ、まだですね」


 僕はスマホで確認する。

 昨日の生放送のアーカイブは、まだ見れる状態にされていなかった。


「アナログと呼ばれた君も、スマホを持っているんだねぇ」

「いや、先輩も持ってるじゃないですか」

「便利だし」

「いや、あ、はい」


 時々先輩が分からないけれど、まぁ、そういう人なんだろう。

 それがまた魅力的でもあるのか、人気は高い。けど、誰も近寄らないのはファン倶楽部のせいなのか、はたまた。彼氏がいてもおかしくはないけれど、先輩の交友は主に女子生徒ばかり、らしい。


「それで、なにかあったのかい? 私に報告までするとなると……ふむ、分かったぞ。さては君のコメントが拾われたんだろう。やったじゃないか、少年。君はついに、あの世界と、雪ノ原嬢とつながったぞ」


 数千人がいっせいに話しかける中で、コメントが気づいてもらえるのは極一部。それこそ懸賞に応募して当たるかどうか、ぐらいの確率かもしれない。

 それは言いすぎか。

 でもまぁ、面白いコメントや彼女の気を引くコメントではないと、生放送でも気づいてもらえない。僕も動画に合わせたコメントを何度も送っているが……


「片思いだった君も、ついに認識されたのだな。おめでとう」

「いや……」


 そうじゃない。

 そうじゃなくって、


「先輩は――」


 雪ノ原月夜の正体を知っていますか?

 という質問を、僕は飲み込んだ。

 それはご法度だ。

 調べても誰も幸せになれないことであり、知ったとしても誰も幸せになれない。むしろ調べる行為こそが不幸の始まりでもある。

 言ってしまえば、中の人、正体が気になった時点で不適合者なのだ。

 V界隈では。

 聞いてはいけない。聞いちゃいけない。

 それは分かっている。

 でも。

 でも……気になる。

 だから僕は、質問を変えた。


「先輩は、あのアクセサリーをどうやって考えたんですか?」


 髪を結う星。

 ツインテールである月夜さんの空色の髪は、新しく星で彩られた。


「ん? それはデザインの話かい?」


 ログネェ先輩の瞳が――輝いた。

 もしかしたら、聞いてくれるのを待っていたのかもしれない。

 もしくは、自分の絵のオリジナルポイントを僕が気になったのが嬉しかったのかもしれない。


「はい、デザインの話です」


 先輩は揚々と口を開いた。


「考えてもみたまえ、アナログ少年。雪ノ原月夜の名前を」

「名前?」


 そうだ、とログネェ先輩はうなづく。


「雪と月と夜。彼女の名前には、その三種類の要素がある。まぁ、原は置いておくとして、その三要素が彼女のビジュアルにあったかい?」

「あっ」


 言われてみれば、無い。

 雪ノ原月夜。

 その名前を記号として表しているデザインが、彼女にはどこにも無かった。

 雪も。

 月も。

 夜という暗さも。

 月夜さんには、ひとつも無かった。


「デザインをした雪ノ原嬢は、あえて外したのかもしれない。それは私には分からないけどね。それでも、せめてワンポイント欲しいと思ったのさ少年。どこかに彼女を表す記号が欲しかった。アクセサリーとして、雪の結晶か三日月かで迷ったんだが……それこそ、あえて星にしてみた。月夜に星は見えないからこそ、星のデザインを追加してみたんだ。まぁ、そこが私の創作者として捻くれている部分かもしれない。もっとストレートに雪の結晶にした方が読者に伝わるのは重々承知しているのだが……いやいや、私もまだまだ青い」


 あえて星にした、というログネェ先輩の話。

 僕にはそれが、納得のできるデザインコンセプトのようにも思えた。


「なるほど……で、先輩は青いんですか?」

「ブルーだね、まったく」


 そう言って先輩は肩をすくめた。

 星のアクセサリー。

 星にした意味は、あくまで『あえて』ということか。しかし、それは先輩の考えだ。先輩の考えと月夜さんの考えは『違う』かもしれない。

 雪ノ原月夜の正体が、ログネェ先輩じゃなければ。という話だけど。


「難しい表情をしているな少年。本当に何かあったのかい?」

「……いえ」


 口を開く僕だったが、出てきたのは否定の言葉だった。

 どうしても、聞くのが怖い。


「う~む。まぁいいけどな。しかし、ほどほどにしておきたまえよ、少年」

「なにがですか?」

「Vチューバーだよ。君は少々入れ込みすぎている。アレは二次元のアニメキャラよりも近く、三次元のアイドルよりも近い。でもね」


 でもね、とログネェ先輩は僕を見た。


「彼女はクラスメイトよりも遠いんだ。学校の生徒よりも遠い。雪ノ原月夜は、アナログ少年の隣にいる人間よりも遠い場所にいる。さっき私が世界とつながったと表現したが、それぐらいに離れていることは確かだ。分かるかい?」

「……はい」


 それは、分かっている。

 どんなに好きでも、僕は見ているだけだ。決して会話をしているわけではない。

 僕たちは――

 僕は――

 Vチューバーの独り言を聞いているに過ぎない。


「僕はガチ恋勢と違いますからね」

「なんだい、それ?」

「Vチューバーにガチで恋をしちゃってる人たちのことです。ガチ恋勢」


 なるほど、とログネェ先輩はケラケラと笑った。


「二次元に惚れるのとアイドルに本気になるのと同じなわけか。なまじ近いから勘違いをしやすいのかもしれないね。あははははは、それは果たしてどっちに恋をしてるんだろうか」

「どっち?」

「見た目を好きになっているのか、中の人を好きになっているのか。これは興味深いぞ、少年。第一印象は二次元だが、その性格は三次元だ。もちろん演技の可能性もあるがな。見た目で好きになっているのか、はたまた性格が好きになっているのか。未来的だな」


 SFだSF、と先輩は笑う。


「少年。君はアンドロイドと恋ができるかい?」

「アンドロイド……」


 僕は思わずスマホを見てしまうが、もちろんこれではない。

 アンドロイド……つまり、AIを搭載した人間みたいなロボットという意味だろう。


「……分かりません。ログネェ先輩はどうですか?」

「うむ、分からん。しかし、いい人だったら好きになってしまうかもしれないな」


 とログネェ先輩が言った。

 途端にザワつく周囲。

 どうやら僕たちの会話に聞き耳を立てていた先輩ガチ恋勢、つまりファン倶楽部の面々に衝撃が走ったようだ。

 ちょっと面白いので、刺激してみよう。


「へ~、先輩も恋するんですね。どんな人が好きなんですか?」


 教室の男子生徒が全員沈黙した。

 一言も聞き逃すまい、と聞き耳をかつてない程に立てる。そんな緊張感が伝わったのか、女子生徒も黙ってしまった。

 すごいぞ先輩。

 影響力抜群じゃないか。


「予定が無いな」

「はい?」


 僕は思わず疑問を声にしてしまった。先輩はそれっきり満足したように作業に戻ろうとするが、周囲の視線が僕に集まる。

 つまるところ、もっと聞き出せ、と。

 なので僕はうなづいた。

 分かりました、とうなづいた。いや、うなづくしかないでしょ、こんな状況!?


「あ、あの……せ、先輩。予定が無いってどういう意味っすか?」

「そのままの意味だよ、少年。人を好きになる予定はない」


 彼女は僕を見ることなく、絵を描きながら適当に返事をした。

 本当に興味がない、という話題なんだろうなぁ。


「え~……もったいない。ログネェ先輩だったら、いつだって彼氏を作れるんじゃないですか?」


 いいぞ、少年! と、応援してくれる先輩方の波動を僕は受け取った。

 頑張ります、名も知らぬ先輩方!


「彼氏だと? まったく……言ってはなんだが、デートとか遊んでる時間がもったいないんだ。私は一刻でも一秒でも漫画にたずさわっていたいのだ。デートは確かに感情の起伏があり、良い経験となる。しかし、やはり時間の無駄にしか思えないのだよ私は。貴重な放課後や休日がつぶれてしまうのは、どうにも浪費には思えないのだよ。あ、いや、君を否定しているわけではないから安心したまえ。日々の会話は重要だ。いつどこでアイデアが生まれるか分からんからな」

「そ、それだったら尚更じゃないですか。彼氏と付き合っている瞬間に凄いアイデアが浮かぶかも。少女マンガみたいな」

「もっともな意見だ。それは私も重々と承知している。だが、しかし、う~む……」


 先輩は唇を尖らせて腕を組んだ。絵を描いていた手が止まるなんて先輩からすれば相当な話であり、クラスメイトの女子の方々もログネェ先輩の答えに耳をすましていた。

 押せ、押せ! 畳み掛けろ! という先輩方とファン倶楽部の皆様からの心のウェーブを受け取り、僕は攻め続ける。


「お試しに誰かと遊んでみてはどうですか? あ、僕は月夜さんを応援しなきゃいけないので遠慮しますけど」


 我ながら素晴らしい予防線だ。

 見事なり少年よ、という先輩の声が僕を祝福してくれる。

 ありがとう! ありがとう先輩方!


「でもな~、う~む」


 先輩は悩んだ末に、ちょっとだけ鼻で笑った。そういう男女の仲をバカにしたのかな、とも思ったが、どうやら違ったらしい。

 鼻で笑ったのではなく、ちょっぴり息が漏れただけ。それは、想像の中で恥ずかしかったのだろうか、ログネェ先輩の頬が赤色に染まっていた。


「やっぱり恥ずかしいから、やめておくよ」


 な、なななな。

 なんだこの美人!?

 えぇ!?

 マジでこんな人いるの!?

 完璧か!?

 これが学校一の実力ってやつですか!?

 高嶺の花とか美人は冷たいとか、そんなの通り越してログネェ先輩は可愛さまで兼ね備えていたのだ!

 そんな感動を覚えると同時に、近くにいたファン倶楽部メンバーが泣き出した。

 レア過ぎる光景を見て、感情の歯止めがぶっ壊れてしまったらしい。その他にも、教室から出て行く先輩や、机を仕切りに叩いている人まで。

 多種多様の壊れ方をしている。

 気持ちは分かる。

 推しの尊い姿は、なんというか、こう、凄いんだ。

 うん。


「なので、私にはちょっと恋愛は無理そうだな」


 あっはっは、と先輩が笑う中で、次々と死んでいく男子高校生。

 そこでチャイムが昼休みの終了を告げたのでその後、彼らがどうなったのかは知る由もなかった。

 ただ一言。


「ログネェ先輩すげぇ」


 すげぇ。

 笑顔で人を殺した。

 すげぇ……

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